基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

敵は海賊・海賊課の一日/神林長平

ネコは明日を見ない

なべて世は事もなし

ネコは明日を見ない、っていうのはそのまんまなんだよねー。未来を感じる脳みそがないから、ネコには今と前あった出来事のぼんやりとした記憶しかない。
あらすじ
海賊課は海賊を超法規的権限を与えられて狩る組織である。そんな海賊課の、主力1人と1匹と1艦の物語。
今日はアプロの666歳の誕生日。アプロは上機嫌。ラテルは不機嫌。ラジェンドラは整備されて上機嫌。さて、何が起こる?

感想 ネタバレ無

今回は海賊王の出番すくなめ。前回アプロの出番が少なかったせいか、今回はアプロ主役の話か。アプロの謎も、今までよりもっと深まった。前回は現実と虚構が入り乱れる話だったが、今回は未来と現在と過去が入り乱れる物語。

またアプロの歳666っていうのは悪魔の印といわれる。これだけ見ても、今回の誕生日が無事に終わらないことが予測出来る。 というかアプロが666歳というのも驚き、最もこの世界では太陽暦での年齢と他の場所での時間の数え方が違うみたいだからよくわからないが。

注目なのは、今までほとんど出てこなかったアプロの母星の話がすこしだが、出てきたところか。恐ろしい星だろうという想像は出来ても、具体的な恐ろしさがわからないものの、今回読んでみてやはり恐ろしいところなんだ・・・という感じ。

それからラテルの過去話も出てたな。やはり今回は未来と現在と過去が入り乱れていただけあって、過去話が出てくるのは必然といえるか。最もモーナ?だったか、の話が出てこなかったのは残念だが、いつか出てくるのかなぁ。

というか、敵は海賊シリーズって一貫して何かが入り乱れるようになっているな、敵は海賊海賊版では平行世界のようなところが入り乱れていたし、猫たちの饗宴も現実と幻 海賊たちの憂鬱は・・・なんか入り乱れてたっけ・・・ 化け物とか出てきてたし(苦しい)不敵な休暇は現実と虚構だ。

今回は3人の絡みが多くて良かったな、海賊王主観の話も嫌いじゃないが、ジュビリーと海賊王だけだと暗すぎる。(1人と1匹と1艦って書くのがめんどくさいから不本意だが3人としてしまおう) ラストのエンディングは今まで読んだ中で一番好きだ。大団円というか、グランドフィナーレというか。

ネタバレ有

好きなセリフ1

あすは、あすの自分が意識するのだ。ラテルは胴上げされているアプロを見ながら思った。生きていくとは、時間を封じ込めることなどではなく、時間を開きつつ意識のレベルがあがっていくことなのだ、それを、きょう実感したではないか。


時間を封じ込めることなどではなく〜というのは、今のところ感覚では理解出来るのだが、文章にしようとするとどうにもうまくいかない。感覚を文章にするのは難しい。

特にここに関して言えば、最初この本の中でラテルは 生きているということは、時空を体内に封じ込めることなのだ、歴史という時空であり、それは体外の、誕生日が条件によってどうにでもなる時間などよりもよほど確かなものだ、ヒトは、結局はこの確かな時空を生きているのだ。 と感じているが、それが今回の事件を通して時間というのは自分の中にためていくものではなくて、開いていくものなのだ、という事を学習したんだなぁーと、考えるとしみじみしてしまうものがある。

あすは、あすの自分が意識するというのは、一日たったらその日の自分はいったん死ぬという考え方に近いのだと思う。一日が終わるごとに自分はしんで、次の日に新しい自分が生まれる。こんな考え方をどっかで聞いた 見た 読んだ ような気がする。心構えとして聞いたんだったかな?毎日リフレッシュに生きろよ、みたいな感じで、よくわからないが。

好きなセリフ2

「護るべきものをたくさん持っていると苦労するよな」
「それが豊かさというものだ、ラテル。それが人間を豊かにする」
「そうかな」


これも永遠のテーマだよなぁと思う。護るべきものがあるから強くなれるんだ!というのは昔のジャンプ的なテーマの一つだったような。 子を持つ母は強いとかね。

子を持つ母といえば、過去に現在のラテルの意識が飛んでいるシーン。輸送船を運転していたラテル達の家族が乗った宇宙キャラバンが海賊に攻撃されてどうしようかみんなが慌てふためいているとき。
「戦うしかない」祖母のミリアが言った。

結果的に、ラテル以外全員死んでしまったものの、このときミリアが戦うという選択肢をとらなかったら、ラテルも確実に死んでいたというあたり、強さを感じる。また上のシーンのほんの数ページ後のところもいいセリフが・・・

兄と二人で救命ポッドに逃げていたラテルだったが、兄は海賊に撃たれたが、かろうじて扉をしめる。そしてラテルに先に行けという場面でのセリフ

「お兄ちゃんといっしょじゃなきゃいやだ」
「早く。あとから行くから」
「いやだ」
「ラテル、じゃあ、俺の名をやる」
「お兄ちゃんの?」
「そうだ。それで、おまえといつもいっしょだよ。おまえはラウル・ラテル・サトルだ。忘れるな」


仲間を助けるために自分を犠牲にして、先にいけぇ!というのは展開としてはかなり有名だけれども、いいもんはいいのだ。ペンダントとかだとさらにありがちだが、名前をやるとは・・・。泣ける・・・


最後のアプロの誕生パーティーのところは、長かった物語の終わりにふさわしい感じ。ぶっちゃけこのまま敵は海賊が最終回です といわれても納得できてしまうような終わり方だった。

というか、このシーンは説明できないけれど、いいなぁ・・・。雰囲気が・・・。