基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

天国にそっくりな星/神林長平

「天使にはなれない」


あらすじ

地球は太陽光が原因の奇病・日陰症によって昼間は活動出来ない人間が大量発生していた。 そんな時 惑星ヴァルボスは発見された。惑星ヴァルボスは影が出来ない不思議な惑星。 私立探偵の坂北天界と玲美はそこへ移住してゆく・・・。


感想 ネタバレ無


神林長平の中でも軽い。ライト神林とヘビー神林が居るとしたら(白乙一と黒乙一みたいに)ライト神林か。敵は海賊のノリ。

だけど内容はいつだってハード。軽いノリの会話でも言ってることが割と重い、でもノリが軽いから簡単にスルーしてしまう。

え?今軽く読んだけど深いな・・・というのが何回かあった・・・・ような気がする。 読んだのが一か月前だから記憶も曖昧。元々再読をしない。それは時間の無駄だし、再読をする人は読むたびに新しい発見があるというけれど、それは恐らくもとから再読前提で読んでいるんだろうから、最初で全部発見しまうという気概が無いんじゃないだろうかな。

しかし、一回読んで完全に記憶出来るならまだしも、俺なんかは記憶出来ないから、こうしてブログに記録しているわけであって、それを一か月後とかに書いているようじゃ駄目なわけで。

これからはこまめに書くようにしよう。

天国にそっくりな星について書こう。 主人公の前向きさがいい・・・。前読んだ、アメリカの児童書でヘブンアイズというのがあったけれど、いつだって天国を見つめている目という意味か、それを彷彿とさせる主人公とヒロインだった。

こういうキャラクター的な小説を書けるのがイイなぁと思うわけですが。世界設定は悪く言えばありがち? でもないか、自分が生きている世界の他にもう一つ別の世界があるっていう考え方は哲学の勉強でも、一番初めの入門のようなところでやる話だからな。代表的なのだと、マトリックスか。ラノベだと上遠野耕平のぼくらは虚空に空を見る。

そういえば、2007年9月1日に行われた、WorldCon岡ノ谷一夫さんの発表で、言語発生の触媒仮説からドレイク方程式、フェルミパラドックスをふまえ、言語を持った文明の短命さ、その打開策が話されたが、その中の一つに

この世界が高次知性によるシミュレーションである確率は30% なんていう事を言ったりしていたようだから、あながちこういうのもあてずっぽうの話でもないかなーと思う。

ネタバレ有



一番笑ったのは、玲美の飼っている猫をいつもシュラキンと呼んでいたのに、本名は酒乱童子金太郎号だった時か・・・。一体どこからそんなわけのわからん名前が出てくるんだ。

内容的には、この世に絶対的な物など無いというのが話の大筋か。理想、無限、永遠、天国、地獄、そんなものは無いのだ。ということだ。だからタイトルも天国に「そっくり」な星なのかなーと思わんでもない。冒頭文(扉文?)も天使にはなれない だしなあ。


しかし小さい子にお願いされて一緒に行動してたら、誘拐犯にされるとか、最近似たような事件が日本にあったようなぁと思わんでもない。なんたる符合。そんなのドラマや小説だけの世界じゃないんですねー。


しかしここに出てくる信者達まるで創○みたい・・・とは言っちゃいけんな・・・ とくに創○について知ってるわけじゃないのに語れん・・・。

ラスト1Pの文を少し抜擢

ないはずのものに影を与えて、あるかのように見せかける。理想、無限、永遠。そんなものはないのだ。 おれも玲美も永遠ではない。哀しい。でもわるくはない。


ないはずのものに影を与えるってのは詐欺師の手口だよなぁ、というか、基本的に人に人をだます時の手口というべきか。

神林作品の中でも地味に地味に好きな作品になりました。