基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

人類皆殺し/トーマス・M・ディッシュ

あらすじ
突如あらわれた植物は、人間の世界にズカズカと土足で踏み込んでくる!! 地球は、緑のたくましい植物によって征服されてしまった。人間がほぼ絶滅した世界を描く。


感想 ネタバレ無


凄いタイトルだなぁー。これは確か神林長平の選ぶベスト5SFの中で選ばれていたものだった。えらく入手するのに苦労した一冊。

内容は可も無く不可も無く?破滅系のSFとしてはいたって標準な設定ではないだろうか、知らないけれど。しかしまったく救いのない話だった。

もともとハッピーエンドで終わるテンプレ化した作品に対する反逆みたいなところがあったという解説だからしょうがないかもしれないな。

そして途中完全に酔っぱらないながら読んだので内容がよくわかっていない件。

しかしまあ読み返す暇はないので感想を書こう。

登場人物が何を考えているか、それを考えているだけじゃなくてどこまで実行にうつして、どこまでは想像で済ますかの区別がとてもよく出来ていたと思う。

破滅系っていったら基本的に、追い詰められた状況でいかに人間は行動するのか、といったところが基本的な流れになると思うが、よく書けていると思う、というか、特定のタイプの人格の心理を書くのが異常に優れているように感じた。

ネタバレ有


やはり破滅系ということで、思考もネガティブな方にいきがちである。
破滅系といっても、破滅に立ち向かう系もあるはずだが、これに関しては、これから先どうするかというよりも、今ある問題をどうにかしなくてはいけないという受け身な姿勢が多い。

そして俺が普段骨身に染みて書きたくなるような名言とは、逆境の中でもあきらめずに希望にすがるその言葉が好きなわけで。ティンっとくるようなセリフは残念ながら見受けられなかった。

それでも作品の質が悪いという事は決してなくて、特にオーヴィルの復讐に至る精神描写はよく理解する事が出来たし、ニールというある意味可哀そうなヤツの考えている事もよく書かれていた。

まあよくわからない部分もあるが。たとえば突然オーヴィルがジャッキーへの愛を捨ててブロッサムに転ぶのも唐突すぎる気がする。


しかし一番最初の扉文?

収穫の時は過ぎ、夏もはや畢りぬ
されど我らはいまだ救はれず
  ──エレミヤ記第八章二〇


この最初の文が最後の状況を表しているとは思わなかったな〜。されど我らはいまだ救はれずっていう事はやはり救われてないんですね・・・。しかしこのエレミヤ記っていうのが、こいつらが生き残った後のその後の子孫が残した書物だと思ってたら、聖書にエレミヤ記というのがあるんですね・・・。自分の無知を恥じる。

しかし文庫の解説にも書かれていたけれど、最後の絵画的なエピローグはなんというか美しい。やはりこれだけのものを書ける人なんだなぁと思う。ここの印象が何よりも強い。どんな絵かまじまじと頭に想像できるほどのまざまざしさであった。 最後に書かれていた人たちが誰が誰なのか、一回読んだだけじゃ全員分は把握できなかった・・後ろに戻ればわかっただろうけれど、めんどくさかったのでこれで終了。

<<自然>>は浪費家である。百本の苗のうち、生き延びるのは一本か二本。百もの種のうち、生き残るのはひとつかふたつ。だがそれは、いずれにしても人類ではない。