基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

象られた力 飛浩隆

あらすじ
中編が4つが入ったこの一冊。

デュオ
天才ピアニストの双子には秘密がある。

呪界のほとり
いわゆる魔法が使えるファンタジー世界を舞台にしたお話

夜と泥の
一年に一回現れる少女の幽霊の秘密とは

象られた力
見えない図形とはなんなのか、世界認識を軸に展開するストーリー展開

感想 ネタバレ有

飛浩隆の本を読むのはこれが初めてだが、感じるのはひたすら計算されつくした世界だ。筆に動かされて、とかキャラが勝手に動き出した、などという漫画家や小説家がいるが、それとは全く別の力を感じる。

最初っから最後まで完璧なお話として成立させようとする意思を感じる。

そしてそれだから面白い。キャラが動くままに任せた勢いのある作品も嫌いではないけれど、完全に作者の力でまとめあげられた一個の作品の方が好きだ。

一番好きな話は「デュオ」だったが呪界の話も捨てがたい。特に呪界の話は読み終えたときに長編を一本読み終えたときぐらいの感覚が残った。あとがきではもともと長編用のプロットとして作ったと書いてあるので、そのせいかもしれない。

夜と泥のと象られた力は残念ながら、どんな内容だったか思い出せない。これだから読んだ後にすぐ感想を書かないとだめなんだ。残念ながら読み終わってからすでに一週間程経過してしまっている。年末の忙しさにかまけて更新を怠った自分の失態である。気をつけよう。

デュオ

だが双子の天才ピアニストの話、なんだが、その双子がくっついてるというところでまずびっくり。そして描写が凄く想像しやすい。まるで漫画でも読んでいるみたいだった。時間をかけて練られた文章という印象を受ける。展開もぽんぽんと新しい事実が出てきてまるで飽きない。しかし突然テレパスとかの方向に話が転がるとは思わなかった。どういう作家だとかの前知識もなしに読んだからだが。というか、何しろ一つひとつの表現が凄い。するすると頭に入ってくる表現を使われると本当にかなわないという気持ちにさせられる・・・。
最後の入れ替わりトリックにはびびった。

呪界のほとり
おもしんれー。マジで漫画化を願う一つの作品になった。飛浩隆の作品はどれも漫画化したら成功すると思うんだ・・・・。

まず世間一般でいう魔法の概念だけれども、基本的にファンタジーに出てくる魔法は単機能である。呪文を唱えたら、一つの結果が導き出される。それが王道というものになっているが、実際は進化という過程を見ると、長い年月と共に魔法も発展するべきなのだ。つまり科学と同じように、まるで万能ナイフのように一つの行動に対する結果の選択肢が増えていく。

多機能ベッド、などなど、進化にしたがって多機能になっていくのが普通だ。それをさも当然のようにこの話の中ではいわゆる進化した魔法が出てきている。あまりにも自然すぎて、まるで魔法ではないかのように感じるぐらいだ。

アーサーCクラークは「充分進歩した科学は魔法と区別がつかない」と言っているが、実際はもう使い古された魔法よりは、科学の方がずっと役に立つはずだ。火をつけたいならライターを使えばいいだけだし、水も簡単に出せるようになった。

そんな中で、魔法の進化というのは、これからのファンタジーに重要な事のように思える。今の使い古された魔法では、凄味が足りないからだ。


話としては、ドラゴンが出てきたりと、まんま剣と魔法の世界なんだが、まぁ剣は出てこないからただの不思議な世界である。ぜひとも長編として作りなおしてもらいたい出来であった。

象られた力と夜と泥の、についてはもう何も思い出せないからスルーで・・・。