基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

零崎曲識の人間人間 西尾維新

零崎を始めるのも悪くない。

あらすじ

戯言シリーズではあまり語られることのなかった零崎一族の主要人物について語られる零崎一族シリーズ。今回は3巻目、零崎曲識の話である。

感想 ネタバレ無

西尾維新の本領発揮というところか。刀語を通して何か引っ張られるんじゃないかという危惧があったが、そんなの全く気にせずに完成させてくれたと、書くべきだろう。

やはり、自分の中に確固たる考えがある人だな、という事を感じる。自分で考えられる人なんだなという事だが。何の考えも無しに、人気があるからという理由で小説を動かすような、そんな人ではないだろう。まぁ、最近のライトノベルに対する批判か。

伏線の妙や、セオリーを知りながら、それを読む人間の考えまで逆手にとって物語を構築していくやり方は、どこか伊坂幸太郎に通じるものがあると思う。

しかしこの人間人間というタイトルの意味がわからんな。人間試験は意味がわかったし、人間ノックもまぁ、わからんでもないけれど・・・。人間人間??

本編では、今までほとんど話にかかわってこなかった零崎曲識がいったいどんな人間だったのか、どうやって生きたのかが語られるわけだが(当たり前)まぁしかし、徹底して脇役だな。

最後の方は読み終わるのが嫌になるぐらいには気に入った。死で終わる事が決定づけられている話ほど悲しいものはないな、と思う。読み進めたら死んでしまうのだから、読み進めたくなくなるのが人情っていうもんだろうが。おかげで最後の方は読まずにちょっととっておいたぐらいだ。

こういうのはやはり、結末を知っているからこその症状だろう。最後が死で終わるとあらかじめ知っている話はだから嫌いなんだ。最近だとFate/zeroも途中で読みたくなくなってしまった。

どうでもいいが、おまけのカードは全くもっていらないんだが・・・。何でこんなカードがついてるんだ・・・。

しかしまあ、凄く面白かったよ、という事です。

ネタバレ有


由比ヶ浜ぷに子の絵が刀語に出てきたロボの絵にしか見えない。日和号だったか。しかし、あれだな、こいつも無意味にメイドの格好をしているな。メイド好きだな西尾維新・・・。

だが、確か戯言シリーズのほうだったと思うが、メイド服を着ていなくてもそのメイドという魂がいいのだという考えには全くもって同意できないな。メイドという魂をもってなおかつメイド服を着てこそ完全なる全体、メイドになりうるのだ!とそこだけは譲れないところだな。メイド服だけでもメイドじゃないしメイド魂だけでもメイドではないのだ・・・!

まったく本筋に関係がないぜ。

人間人間のタイトルの意味だが、人間試験が、人間の試験で人間ノックが人間をノックする事だと考えると曲識の場合は人間を操るから人間人間なのだろう。人間を人間するとでも書けばわけがわからないだろうがわかった気にはなれるのじゃないだろうか。

ようするに武器に由来するわけかな。

しかし人識の出番多かったなぁ。伊織とのセットが多かったが・・・。伊織もかわいすぎるキャラだぜ・・・・。こいつ死ぬんだったっかなぁ、忘れてしまった・・・いや、結末は書かれてなかったかな。ということは零崎一族シリーズ最後の一巻で語られるんだろうか。こっから先は未知の領域だぜい。終わるのは悲しいシリーズだが・・・。零崎一族シリーズだけの終りではなくて、戯言シリーズの世界の完結でもあるのだからな、この先まだ何か起こる事も否定できないが・・・。

しかし逃げの曲識、いったいどういったキャラなのかと思ったら、なかなか熱いキャラじゃないか。臆病キャラかと思いきや以外だ。格好いい。

「──しかし、『逃げの曲識』くんらしくないと言えば、らしくないですね」
「僕らしさというのは、家族が皆殺しにされてもまるで動じず、暢気にピアノを弾き続けていることだろうか?」
 曲識はそっと──トランクの中のマラカスに手を伸ばした。
「だったら、そんな僕らしさはいらない。らしくないことを、してやるまでさ」


予想に反して、熱いキャラだぜ。曲識・・・。意外や意外。零崎一族の中で一番気に入ったキャラになってしまったな。それはもう、かわいいのは抜きにして伊織よりも人識よりも一族史上もっとも長生きした男零崎軋識よりも。

武器が楽器というところもいいしな。必然、戦いが精神との、自己との戦いになってくる。そういう所が好みだとも、言えよう。

名シーンがたくさんあるんだよなー。こんなに短い話なのに。不思議だ。少女しか殺さなくなった動機の場面とか、初めて自分に合った武器を手にした場面とか、強さについて語り合う人識と出夢や、曲識の最後とか。いやはや、まったく満足ですよ。

しかし、重要な場面にことごとく現れる哀川潤はまるで森博嗣の四季のようだなぁ・・・と。おいしいところにタイミングよく現れるところが、もって生まれた才能であり天才というところか。

曲識にとってのキーワードが哀川潤だったように、橙にとってのキーワードが戯言だったように、狐さんのキーワードが加速だったように、誰にだって譲れない絶対に譲れないキーワードがあるんだろうな、とそんな事を考えさせられる。

曲識にとってのキーワードは。
考えるまでもなく──哀川潤だったのだ。

零崎一族、『少女趣味』、零崎曲識。
死の間際にして──彼の望みは叶った。
せめて人間らしく──笑って死んだ。
輝ける最後の瞬間、彼は本懐を遂げたのだ。
それは確かに、彼が主役であれた瞬間だった。
彼が最後に演奏した曲の作品Noは唯一の欠番──
十年前、赤い少女に出会った直後に作詞作曲した、入魂の一策
タイトルは『ままごと』。
けれどそれは誰の目にも明らかな、初恋だった。


主人公の死で終わる作品は悪くない。いつだってそれは何か考えさせてくれるから。