基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

サンドキングス ジョージ・R・R・マーティン


あらすじ

6編の短編が入っている。

龍と十字架の道

宗教とは、信じるとは、真実とは何か、という短編のくせに割とディープ。
ビターブルーム
なんかよくわからん世界観の中で童話的な話が繰り広げられる。説明不能<蛆の館>にて
なんかよくわからんが地下に住んでるやつらがよくわからん化け物と闘ったり冒険したりするよくわからん話。 よくわからん
ファスト・フレンド
変なものと合体して光速を超える人間以外のものになった存在を愛している男の話。おもっきしネタバレだな。
ストーン・シティ
ストーン・シティという星にたどりついたものの出られなくなってしまった人類の話
スターレディ
どこかの惑星で、権力争いのようなものに巻き込まれた女の話。
サンドキングス
やべー生物を飼った男の話。


感想 ネタバレ無

毎回短編集だとあらすじを自分でいったん書かないと内容を忘れてしまうから困る。短編集読むの疲れるんだよなー。特にこの人の作品は・・・。

短編ごとにガラっと雰囲気が変わるうえに、まるでこれから長大な物語が始まるかのごとく大量の新ワードが出てきてやっと把握できるようになったら物語が終わるという。

大体そんな感じだったけれども、割とすんなりのみこめたのはスターレディとサンドキングスだろうか。特にサンドキングスは難しい設定などもなくて、一番わかりやすい話で、そして一番面白い話でもあった。しかしそれ以外の短編はどうだろうなぁ。設定の多ささえなければ普通に読めるのだが・・・。SFというよりもファンタジーの側面が強い。エルフとか普通に出てくるし。

こういうのはせめてよくある一つの世界観を元にした短編のように、少なくとも固有名詞みたいなものだけは共通させてほしかった・・・。

しかし作品ごとにこんなにもガラっと作風を変えられることのできる広さというのは本当に凄いだろう。一人で童話からファンタジーSFまで何でもござれという感じだ。

それから、終わり方が理解不能だったのが多い。読解力の不徳の致すところである。弁解すると、正直サンドキングスとスターレディ以外はそんなに真剣に読んでいなかったという事もある。でもサンドキングスのラストも少しわからないところがあるんだよなぁ。こういうのは気持ち悪い。解説してくれるサイトとかあるのかなぁ。

どうでもいいことだがサドンキングスだとずっと思っていたがここに打ち込んでいるときに間違いに気づいた。サンドキングスであった。レイ・ブラッドベリのいう通り、人間の認識など意外と貧弱なものだ。


ネタバレ有

龍と十字架の道
歴史なんて何が正しいのかわかんねーんだよ!って昔からそんな事当然と言われてるような事を言っている狂人がいて少し笑ってしまった。世界の人類の三割はキリスト教徒だというが、信じる、というのは思いのほか生きるのに大切な要素であるのに違いない。
全ては終わるのだ、というような破滅しそうな考えをいった神父に対して
「信心というものは、そうした虚無主義に耐えて維持されるのだ。信心は絶望から身を守る盾なのだ」

結構大切なものだ。しかし大半の日本人は絶望をそのまま盾なしで直撃しているわけか。うぅ、おそろしやおそろしや。

しかし神父の語る新教団、<嘘つき>というシンプルなネーミングセンスはに十世紀少年の<友達>を彷彿とさせるな。市民を洗脳せんとする悪の教団役にはシンプルな名前をつけたほうがいいとかいうテンプレが出回ってるのか?

って例が二つしかないけどな!

真実。
わたしは真実を信じていた。真実に傷つけられようとも、わたしは真実を信じていた。

この結論に至るまでの過程が見ものなのだが、引用するには少し長い。何人かのキリスト教信者(信者というと嫌なイメージしか湧いてこないが、他にどう書けばいいんだろう?)と話た事があるが、面白い話が聞けることが多い。それはつまり信じるという行為の根拠になっている実体験みたいなものだ。
考えて考えて考え抜いた果てにキリスト教の教えが不意に頭の中に去来するというような話だったり、からっぽになったと思ったら最後に出てきたのはイエスその人であった、というような話だ。
宗教もおもしろそうである。無宗教な自分がうらめしい。

ビターブルーム
死にそうなところだったのを助けてもらっておきながら、寂しがってるおばば一人残して逃げ出して、いざ自分がヤバくなったらまたおばばのところに戻るという最低女を見たような気がしたんだがキノセイだったかもしれない。しかしだいたいこんな話だったことは間違いない。<蛆の館>にて
これが一番設定の把握に戸惑った。そして最後が全く理解不能。というか結局白蛆とか蛆とかいう設定がなんだったのかさっぱりわからなかった・・・。しかし地下を進んでいったり、壁にある妙にあまったるい食べ物など、人類皆殺しをほうふつとさせるような話であった。むずかしー

ファスト・フレンド
彼女と一緒に死亡率四分の三の超分が悪い賭けに挑戦しようとして、彼女だけ成功したものの自分は怖くなって逃げ出した最低男の話。しかもそのあとまで愛してると言い続けお前がまた人間になってくれといいだす世にも最低な男だ!こんなに最低な男はそうそういないぞ
結局最後までろくなやつではなかったな。しかしこんなにも長い間一人の女の事を思い続けるとはなかなか骨のあるやつでもあると思いなおした。

ストーン・シティ
これもよくわからんなぁ。いや大体は理解出来るんだけどなんでそーなっちゃうわけ・・・?というような疑惑のはてなが。あんなに星から出たい出たい言ってたのに最後には店番殺して地下にもぐったら故郷に戻れる幻惑装置だかほんとにいけるワープゾーンだかしらないがそんなものを発見してそれで夢の中をアハハアハハと駆けずり回るなんていうオチみとめねえぞおおおお
地図作ってたやつが気になるなぁ。地図作ってたやつのことをもっと応援してやれよ!そっちのほうが何か起こりそうじゃないか。

スターレディ
これもまたガラっと雰囲気が変わった作品。いきなりギャング物に大変身。
クロウニーとかよろよろ猫とか<侯爵>とかネーミングセンスもなんかあれだよね。説明出来ないけどあれっぽいな。なんだったかなあれってまあいいや。

しかしまた文体もずいぶんと変わったものだ。軽妙な感じに、ハルの一人称にふさわしい感じに変わっている。

この話のオチはまたしっかりオチてくれていてまた想定外という意味でびっくりした。当然普通のギャング物なら男がヘタれて、女がはっぱをかけて、女が戦いにでて、女のピンチを復活した男が救った!というのならそのあとはあなたにメロメロドキューンでベッドに一直線だろうがそんな事にはさらさら興味がないといった感じで終わったな。

日本のアニメだったらこのシーンにはからっかぜが吹いて木の葉がひらひらと舞っていくに違いない。

「だって」とハル。「だって、スターレディ。ハルは──おれは、愛してんだよ、おまえさんを。おれはどうなる?」
「あなたがどうなって?」スターレディは言った。
そして、彼女はよろよろ猫と去った。ゴールデン・ボーイを見つけるため。

その後、登場人物の一部は死んだ。残りは、いまも生き延びている。


サンドキングス
やはり一番面白かった。描写が今までの短編と比べ物にならないほど頭によく入ってくるし、展開に引き込まれるのも早い。

最初にサンドキングスという生物の特性が説明されたときに、大きさに適応して大きくなるという説明があった。たぶんこの時点で大多数の読者には、きっとオチはこの生物が外に出てしまって、超巨大な生物になってヤバいことになるというオチだという大変愉快な想像が出来てしまっただろう。

そのオチを期待してわくわくしながら読み進むというのがいい。
ホラー小説と書かれていたが、そんな事は全く思わなかった。オチがわかっているからこそ楽しめる話というのもあるだろう。

最後さんざん残虐なことをしてきたクレスが食われるというのも最高に楽しいところの一つだが、それがクレスもすっかりわすれていたオレンジのサンドキングスだったというのがまた面白い。ただひとつ理解できないのは、オレンジのサンドキングスの子供の顔がクレスの顔になっていたというのだが、何でだろう・・・?