基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

魂の駆動体 神林長平

7月28日読了。

あらすじ

第一部 過去編と 第二部 未来編 そして第三部 現在編 とわかれている。


過去編ではおじいさん2人組が真剣にリンゴをパクろうと計画したり、車が全自動のみになってしまい運転する楽しみが奪われてしまった現在(エスカレーターやエレベーターのように各所に自動で動く車が設置されている)を憂いて自分たちでオリジナルの車を作ろうしたりする話。

未来編では、人間は絶滅し、おそらく人間の進化形態である翼人が生活するところを書く。

現在編はエピローグにあたる。


感想:ネタバレ無

過去編は非常に退屈だった。ところどころに出てくる時代背景を思わせる設定描写も出てきたがあまり真新しいものとは思えないし、第一やってることがリンゴ泥棒と車の設計図を描くことじゃ読んでるこっちもあまり燃えない。

気づいたら未来編に入っていたという印象。未来編も最初はよくわからなくて大分退屈だったが、途中 過去編と未来編が交差しはじめるところから急激に面白さが増す。

たとえるなら、過去編はメイプルシロップで 未来編の途中まではただのホットケーキで、未来編の途中からメイプルシロップとホットケーキが合わさった、といった感じ。よくわからない。

そっからはもう面白くて今まで退屈してたのが嘘のように一気に読んでしまった。 前半部を読むのにかかった時間の半分ぐらいで最後までいってしまった。神林作品の中でもトップ5に入ると思う。 

今回は車を創る話と思っても問題がない。 テーマは 創造 魂 あたりだろう。

車について熱く語っている。 ハードSFとかの科学描写なら、最初からわからなくて当然という心構えで読んでいるからわけのわからない単語が出てきてもスルーして読めるが、車の機械描写だとなまじ知識が中途半端にあって少し理解できてしまうだけにもどかしさがつのった。


4サイクルエンジンだとか 自動車学校で習った程度の知識でもなんとなく理解できてしまう。 もっとも理解しようとつとめただけで、ほとんど理解出来なかったが。前半部を読むのが遅かったのは車の設計描写を理解しようとするのに無意識に時間を使っていたからかもしれない。 

また車の設計描写だけじゃなく、途中で自転車の設計描写も出てくるのだが、その描写が細かすぎて自転車なんて単純な構造だと思っていたが設計描写が車と同じぐらいわけがわからなくて愕然とした。 ひょっとしてわざと難しい単語を選んで使っているんじゃないかと疑ったぐらい。 車好きには本を普段読まない人間にもお勧めできそう。 

設計描写の話おしまい。


読んでると車に初めて乗ったときの感覚を思い出す。

確か自分は初めて車に乗ったときは怖くて仕方なかったと思う。 簡単に人を殺せる力を持っているのが身を持って実感したからかもしれない。

そういう懐かしい感覚を思い出させてくれた。


ネタバレ有



好きなシーンが多かった。魂とか好きだし・・・・!魂の燃焼だよ・・・

好きなシーン1 
何故人は空を飛びたがるのか、という問いに反論するシーン

「魂は拘束を嫌うんだ」「重力からも解放されたいんだ。きっとそうだ。空が大気という薄皮一枚の領域であってもだよ」


SFでよくなぜ宇宙にひかれるのか、という問いがあるが、そのほとんどはそこに宇宙があるから、的な答え方しかしていない。 が、魂は拘束を嫌う 重力からも解放されたいから 宇宙に飛び立つ そういう考えも面白いな、と思った。


あとはやはりアンドロギアに魂が宿るシーンだろうな、あそこから加速度的に面白くなった。

そしてラストシーン アンクが魂の命じるままに車をあやつるシーンはまさに圧巻・・ 魂を自覚したアンクが最高すぎる。 というか 魂っていう感じがまずかっこよすぎる。うへへ魂最高・・・

神林長平作品に共通して出てくる「フムン・・・」というセリフがいまだによくわからない。

常に「フムン・・・」というのならこっちも混乱しないが、たまに「フム・・・」と普通の言い方になってたりしてどうしても意味が違うんじゃないかと深く読み取ろうとしてしまうんだがひょっとして意味なんかないのかもしれない。

最初は相手の言うことにひとつの意見として受け止めはするが全面的に支持するわけではないという半分了承みたいな意味あいで使ってるのかとも思ったがどうも違うらしい。あまり気にしない方がよさそう。


あとは、翼人というのが最初出てきたとき、形の描写が無かったから物理法則とか無視して人間に羽が生えたような生物なのかな?と思っていたがどうも形的にもちゃんと飛べるような形らしい。烏天狗のようというので大体イメージがわかった。 人間にそのまま羽をつけて飛べるようにするには上半身をきもいぐらいに鍛えて下半身を骨みたいに細くしないといけないんだが、そんなのを想像しながら読んでたら思わず笑ってしまった。


おしまい。