傑作やねーん。傑作傑作。
あらすじ
惑星ソラリスには生命体が一種類のみ存在していた。思考する──海。人類と未知のものとの遭遇をえがく。
感想 ネタバレ無
最初の方はまるで文系の人間が突然量子力学について語られているように理解不能な事ばかりだが、次第に内容が理解出来てくる。SFかと思ったら意外と純愛・・・といえるかどうかはよくわからないが、純愛のようなそうじゃないような物も入っている。
また非常に哲学的である。設定は非常に練りこまれていると思ったが面白いのは設定ではなく、なんていうんだろうな。単純に会話が面白かったし。
世界も凄く好きだ。どこがどう好きかを考えてみる。まず人間が全部で3人しか出てこない。(厳密にいえばもっと増えるが)そういう閉鎖的な話がまず好きな点ひとつめ。
二つ目は・・・主人公の精神的苦悩が面白いって言ったらあれだが、興味深い。読んでる最中にひぐらしがなく頃にを思い出した。出てくる3人のキャラがまるでみんなL5(幻覚その他の精神的圧迫を催す症状の事)の末期症状のように狂い続ける。未知のものとの出会いがテーマになっているが、本書の場合未知の現象と言った方が正しいだろうな。
別に宇宙人が出てくるわけじゃない。出てくるのは、ただ知性を持っているらしい海だ。
ちなみに地球など身近な単語も出てくるが、太陽が赤い太陽と青い太陽二つあったりと太陽系の話ではないことがわかる。
ネタバレ有
幽霊が出てくるからなあ。幽霊を登場人物にいれたら登場キャラが5人・・・いや、最初にミサイルに入れて飛ばされた幽霊を入れたら6人か。
それにしてもミサイルに入れて飛ばした幽霊が生きているか死んでいるかわからないっていうのはシュレディンガーの猫を彷彿とさせるな・・・。
もし生きていたら、一体そいつは自分の事をだましてミサイルに入れたやつに対して何を言うんだ?
印象に残ったセリフはこれ
私は気が違ってはいなかった。最後の希望の灯は消えた。
もし自分が病気なら、それなら治る可能性があるっていう発想にいきつくのが凄い。もっとも病気ではないから治らないんだけれども。
またもし仮に気が違っていたとしてもそれをどうやって自分で確かめればいいんだ? 本の中では独立した機械に軌道計算をやらせて、自分でも軌道計算をやって独立した機械と照らし合わせて自分の現実を確かめていたがそんな複雑なプロセスを辿らないと自分の見ている現実が正しいものかどうか判別できないのだろうかな。
もし自分の気がくるっていたらどんなことをしても望みの結果になってしまって自分がどうなっているかなんてわからなくなってしまいそうなものだが。
あともう一つ印象に残ったのは
人間は自分の潜在意識に対して責任をもつことができるのだろうか?
だな。 勿論責任なんて持つことは出来ないだろうな。そうすると誰が責任を持つのかという話になってくるが、誰の責任でもないか・・・とすると潜在意識は何のために存在しているんだ。誰も責任を持たないとしたらその辺に落ちてる石ころと同じじゃないか。人が意識できるのは脳みその2%程度だというけれど、あとの98%は全く自分とは関係ない、責任がないで通せるのだろうかな。
また作者は、本来こういった思考を限定するようなまえがきを書くべきではないということを述べたうえでこういっている。 (まえがきを書くべきではないというのは、どの映画監督、小説家、漫画家すべてが言っていることである)未知なるものに遭遇した人間は、かならずや、それを理解することに全力を傾けるであろう。
今回は未知なるものというよりも、未知なる現象だったがそれを理解しようとする人の動きは凄く生き生きとしていて、本当にこんな事があったらこういう風に人間は動くだろうなと感じさせるようなリアリティがあったように思う。