基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

僕たちの終末/機本伸司

あらすじ
地球はもうだめだった。ならば宇宙に脱出するしかない。国家単位で作ろうとしても、政治的な面や、国際協力などしがらみが多い。ならば民間で作るしかない!

感想 ネタバレ無

今度は宇宙船が作れるのか?という疑問に挑戦する。この人の場合、小説というよりも、メモ帳という感じがする。小松左京氏の書いていた事だが、まず最初に疑問ありきで、キャラクターを登場させ、それに議論をさせて自分の中でも考えをまとめていく。というか、自分の考えをまとめていく過程を書いている、といったほうがいいか。

面白い事を思いついたら、とりあえずやってみて、出来たら万々歳だし、出来なかったとしても得るものは大きい、というのがびしびしと伝わってくる作品である。

文章量としては、結構多いなぁと思ったが、すんなり読み終わってしまった。読みやすいのだろうか、このへんもいいのう。

詳細な時代設定がいつだったかわからないが(書いてあったかもしれないけど見てない)2100年未満かなぁ?という感じはする。人口知能ともいえる存在がいる時点で、今よりは50年は未来じゃないか。

いろいろな地球の終末が書かれた作品を読んできたけれども、こんなにも生きはつらつと、ダメでもともと!などといって終末に向かう作品はこれが初めて。

もちろん、科学的な検証なんてわからないので、いつも通り雰囲気を察するしかないのだが、途中なんやかんやをすっとばして、そして5年の月日が流れた── (こんな事書いてないけど)みたいに突然場面が飛んでしまったのは、少し悲しいかな。いろいろあった無理難題は、この時間が飛ぶのと一緒に、どっかに飛んで行ってしまったらしい。

しかしこの作品であらたなSFの読み方を見いだした。今まで、そんなバカな!という設定をどれだけ、真面目に受け取らせるかが作家の力量の見せどころだと思っていたが、そんなバカな!と思わせることは承知のうえで、それを差し引いても面白さを感じさせるテーマという武器か。

それが宇宙船を作ることだった、というわけで。上の時間が飛んでしまったというところは確かに自分にとってはマイナス要素だったけれども、でも、それでも宇宙船を作るっていうテーマが面白いからそれも全然あり!という事になってしまった。

キャラクターだけれども、微妙に陳腐といったらあれだけれども、シンプルなキャラクターが多かった。正直いってハリウッド映画みたいに、無理に恋愛させたり、無理にキャラを立てようとしなくてもいいのではないか。

ことハードSFにおいてはよくそう思う。

と思ったが、よく考えたらこの本のテーマの中に、世の中理屈じゃわりきれねー!というところがあったな。そういうのを書くためには、やはり人間というものを書く必要があったか。

ネタバレ有


人口知能みたいなのが普通に存在しているこの世界ならば、宇宙船ぐらい普通に作れそうな気がする。人口知能てのが、どれぐらいの科学力を必要としてるか知らないからこんなことがいえるのかもしれんが・・・・。

人口知能も最後には、自我みたいなのが芽生えてきて、愛みたいなものまで生まれているし、人口知能に魂は宿るのか──みたいな超重いテーマまで最後にちょこっとおまけみたいに付けくわえられてるしなー。どうせやるなら、次はこのテーマを深くやってもらいたいものだ。

人間とは何か、人間が存在する意味とは、とずっと言い続けているが、結局人間て何なんでしょう。答えを出してくれるのかと思いきや、その答えも答えといえないような、あえていうならば、答えの見つけ方みたいなものでしかない。

とにかく全力で作動すること。たとえば虹を追いかけても、その向こうへは行けない。そんなことは分かっている。しかし走って追いかければ、理詰めで考えた無意味さ以上の何かが得られるはずだ。そうやって能動的に自分を極限まで追いつめれば、見えてくる答えもあるのではないか。

「エネルギーをすべて出し切ってしまえば、無になることなど何だというんだ。消滅する運命は変わらないとしても、ここに存在した意味は得られるはずだ。今をフルに作動していれば、何も残る必要はない」


答えになってねえええええ。とりあえず頭に浮かんだ事は、片っぱしからやってみて、生きてりゃお前なりの答えが見つかるだろてことですかぁー。

展開的に、えぇっそこもう意見をひるがえしちゃうの!?とびっくりするところがあった。
岡本率いる武庫に、協力のお願いにいったものの、無理な点を片っぱしからあげられて、読んでる方も、そりゃ無理だぁと思ってたところを、急に前言撤回した岡本が協力しましょう、と願い出てくる。

まるで原作付きの小説を、色々ハショってハリウッドで映画化しました。テヘッみたいなショートカットだと感じた。本来もっと時間をかけて、文字数をかけてやるべきだった場所を色々はぶいてしまっているのが、もう2回目だが、本当に惜しいと感じる。

しかし最後の10人の少年少女の宇宙船による漂流というのは、15少年漂流記を彷彿とさせて、あらたな冒険のにおいがする。続編とか書かないのかなぁ。