基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ/虚淵玄


あらすじ

なんか忍者出た。

感想 ネタバレ無

最初の20ページぐらい、微妙な違和感を覚えていたがそれ以降は、ちゃんとしたブラックラグーンとして読む事が出来た。

多分最初の20ページで違和感に感じたのは単純に、媒体が変わったことによるズレの修正にかかったページ数というだけだろう。

とりあえず何が言いたいかというと忍者が出てきた忍者が。しかも滅茶苦茶おいしいキャラだった。ただひとつ残念な事があるとすれば、ひょっとしたら小説版で忍者を出してしまったばっかりに、広江さんが本編で忍者を出せなくなってしまうのではないかという事だけだ。あるいは小説版のキャラを登場させるという選択肢もあるかもしれないが、広江さんが自分で考えだした忍者をブラックラグーンの世界に登場させてほしかった。

何しろ自分、小さい頃は忍者が好きで好きで将来は忍者になろうとおもっていたぐらいだ。戦隊物の忍者のやつをみたせいでもあるし、ピザを食う亀にはまったからでもあるのだけれども。

NARUTOも始まった当初は興奮したものだが最近は何だかよくわからなくなってしまった。

忍者が出てきたというその一事だけでこの小説の評価は自分の中で2階級特進である。しかもカマセではない。ネタバレだが。
それから単純に話は面白かった。小説版、ブラックラグーンの体裁を完全にまっとうしている。シーンの格好良さだけじゃなく、微妙な人間ドラマまで魅せてもらえるとはおもわなんだ。

それから信じられないネタキャラが忍者のほかにもう一人いた。笑わせてもらったな。こうして考え直してみれば笑って、漢泣きして、およそ自分がライトノベルに求めているものを完璧に満たしてくれたような気がする。ほめすぎだろうか。

ただ色々やってみせたせいか、全体的にあっさり感が漂っているのは仕方のないことなのだろうか。どれもこれも中途半端とはもちろん言わないが、どこか一点に絞って書いてみてもよかったのではないかと勝手な事を書いてみる。いろんな展開がいちいちあっさりなのだ。

ネタバレ有

スタニスラフの最期


 「なら、故郷から北風だ・・・・・アカマツの・・・・匂いが、する・・・」


風を読むことで生きてきた男の最期が、滅茶苦茶格好いい。思えば昔から人の最期は自分の故郷を思い出すというパターンが多い。このラストシーンは映画、ブラッドダイヤモンドを連想させた。死ぬ時に思い出す故郷がない人間は、悲しいだろうか。でもよく考えたら故郷というのは、何も土地だけじゃないものな。母親だって恋人だって自分が一日しか滞在してない土地だって、自分が故郷だと思えば故郷か。

それにしてもスタニスラフは本当にいいキャラだったなぁ。面白いだけなら忍者にアルティメットクールさんがいるからいいとして。最初のあのへろへろのひでぇ状態から、あそこまで株を持ち直すとは思わなかった。


 「こんな私が柄にもなく、あの素晴らしい夕陽をもう少し眺めていようと思ったのさ。それほどに嬉しかった。心に祝杯を掲げたよ。何せ彼は来なかったのだから」

 「彼は屈服による安寧よりも、闘争の継続を選んだ。地獄の底の袋小路で、なおも不屈という在り方を貫いた。彼は紛れもなく我が同胞だ。今なお我々と同じ魂で、血染めの夢を見続けている。・・・・
 ああ、今ようやく私は再会の喜びを噛み締めているんだよ。彼とはしばし道を違えて、互いの立場に齟齬が出た。ただそれだけのことでしかない。我々は今また同じ夢を見て、同じ道に殉じようとしている」

 「だから、譲らん。彼の望みも、彼の渇きも、私が満たす。私が彼を祝福し、彼の夢を埋葬する。──なあ張、最低の腐肉と貴様はいうがな。我らにとってはこれが極上の晩餐だ。私も、今ここに理想を遂げんとしている。戦い抜いて果てるという意地を」

格好よすぎるだろ・・・。村上春樹羊をめぐる冒険のねずみのセリフを思い出した。僕は僕の弱さが好きなんだ、誰にも渡すつもりはない、みたいなセリフだったんだが・・・。

それがこの、中身の良さとかは関係無しにただ格好いいというスタイルが完全にブラックラグーンだな、と感じる。それからバラライカが我が遊撃隊にはたった一人の裏切り者も絶対にあり得ないと断言して、だからお前が犯人だと突き付けるシーンは漫画にしてもアニメにしても最高に格好いいだろうなと思った。もちろん小説でも。

それにしても忍者だ。忍者の容姿が、日本人っぽいスラっとした細身で俊敏な動きが可能そうな忍者を予想していたのだが、イラストは滅茶苦茶ごついわ顔も異常にごついわでなんだか無性に悲しくなってしまった。それにしても忍者、おいしすぎるのである。神出鬼没だわ強いわ生き残るわ。

これはもう再登場を期待するしかないのである。漫画か、あるいはノベライズ第二弾か・・・。しかしノベライズを虚淵玄に任せたのは全く最高の判断だったと、読み終わる前から思っていたし、読み終わった後もその気持ちにみじんの揺らぎもない。Fate/zeroといいブラックラグーンといい、ノベライズしか出していないのが気になるが、それ故にノベライズ特有のやり方、空気というのもわかっているのが虚淵玄なのであろう。

全くいい作品であった。

2008/7/20