基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

秘曲 笑傲江湖 第六巻 妖人東方不敗/金庸

ついにその姿を現した東方不敗。そしてその正体はまさかのオカマちゃんであった──


・・・・!?あまりにもオカマイメージが強すぎて、いかんせん全然強そうな印象を受けなかったものの、いざ闘い始めたらこれがまた鬼のように強い。まぁその鬼のような強さの代償としてキンタマを失っているのだから仕方ないともいえる。往々にしてこういうものは、代償に応じてその威力を発揮するのである。等価交換である。


そう考えると令狐冲がここまで払ってきた犠牲は驚くほど少ない。あっさりと風先生に独孤九剣を教えてもらってあっさりと強くなっている。え、それひどくね? 冲虚道人とか少林寺の総帥だって血のにじむような修練のはてに強くなったのに・・・令狐冲・・・確かに努力はしていただろうがそれにしても強くなるのが速すぎる。岳不群にハメられまくったことや、岳霊珊にすげなくフラれたのは確かに代償といえなくもないかもしれないが、やはりいえない(どっちだよ)しかし令狐冲は許される。なぜなら強いからである。吸星大法はそれにふさわしいペナルティがあったが、実際この吸星大法が役に立った場面はあまりない。それどころか最終的にこの吸星大法のペナルティもなくなってしまうし。


そう、全ては強ければ、勝てばよかろうなのだぁー! がまかりとおるのがこの武侠の世界である。何故ならばこの令狐冲一味、スネークばりに敵地に侵入しただけじゃ飽き足らず、東方不敗に四人がかりでかかり、それでも勝てないとわかれば相手の愛人(男だが)をいためつけて、助けにきたところをぶっ殺すという外道極まりない方法で東方不敗を殺したのだ。もはや血も涙も義も仁もない。おいおい、後ろから攻撃するのは武門じゃ一生の恥っていってなかったか? 背中にブスっとさしてるじゃないか・・・。それどころか四人がかりですだと? 令狐冲の義はいったいどこへいってしまったんだ? さらにひどいのはせめて愛人だけは助けてやってくれという東方不敗に対して、ギャハハと笑いながら指一本一本そぎ落とし、百日かけて殺してやるという令狐冲一派である。これはひどい。どっちが悪役かわからん。っていうか完全に令狐冲一派が悪役じゃないか。


うーむしかしこの展開はRPGを連想させるな。というかみんなで協力して敵のボスを倒すって結構普通の展開のようなきもするが、何故かこの小説でやられると微妙な気分になってしまう。ドラクエだって1以外は基本的にたこなぐりだしあのドラゴンボールだって全員一斉にかかることの方が多いようなきもする。


岳霊珊がなんだか小賢しいマネをしていろんな流派の人間を打ち下していったが、どうにもイライラする。岳霊珊。何故だろうか。雑魚のくせにでしゃばるんじゃねぇ、というところだろうか。作品の強さ基準が、令狐冲に合わせて加速度的にあがっていっているだけに、今さら岳霊珊が出てきて敵と戦って勝とうがなにしようがイライラがつのるばかりである。何しろ盲目的に林平之と結婚してしまいなかなかの酷い女である。ドラゴンボールにたとえれば、魔人ブゥ編までいったのにヤムチャとサイバイマンが闘っているのを見せられているような気分である。お前ら別にどっちが勝とうがどうでもいいから、と突っ込みをいれたくなる。
ただ、岳霊珊と令狐冲が昔二人で編み出した剣法をやりあう場面は思わず手に汗握った。それすなわちひょっとしてこの岳霊珊、厚顔無恥にも令狐冲の元へ馳せ参じるのではないかと思ったからである。林平之との不仲描写は何回かされていたし、ひょっとしてこのままかつてのよりを戻しまた元鞘におさまるのでは・・・!? と危惧した。もしそんな展開になったら、令狐冲なら一人も二人も三人も一緒だー とかなんとかいって儀琳も任盈盈も一緒に嫁にして、令狐冲ハーレムを築き上げるに違いないとそこまで想像が飛躍した。


そしてまた令狐冲の死ぬ死ぬ詐欺である。今度はわざと攻撃を喰らった。もはや最強クラスとなった令狐冲は、わざと攻撃を食らうでもないと重傷を負えないのである。マゾもこうなってくるとなかなか大変だなぁ。そうまでして令狐冲に重傷を負わせたいのか。それにしても、実力差が相当あるのに、というか上から降ってくる剣なのに、もうちょっと重傷にならない位置に刺すことはできなかったのだろうか?なにも胸に突き刺さるようにわざわざ受けなくてもよかろう、と思うのだが。ひょっとして死にかけるたびに強くなるサイヤ人の生まれじゃないよな? まあいい。


さらにさらに岳不群はどんどん外道の極みに落ちて行く。左に毒針を打つなど、まあ行為としては令狐冲一派がしたこととさほど大差はないような気がするのだがまぁ外道ということにしておこう。ふむ、君子君子といわれ続けてきたから、実は外道だった! と聞かされるとその落差が激しいなぁ。最初っから外道行為丸出しだった任我行が東方不敗を暗殺しようがなんともおもわんが岳不群がやるだけでとたんにこのド外道がぁ! と叫びだしたくなる。 そうか、今までの悪事も岳不群だったからこれほど外道に感じられたのか。


ただ林平之の外道っぷりは君子とか関係なしにひどい。しかし今まで特に林平之は描写されていなかったので元々そういう部分のある人間だったということで納得できる。辟邪剣譜が人を狂わせたか・・・。 強大な力が悪いのではなく、その使い手が善悪を決めるってのはその通りだな。林平之、近年まれに見る外道である。というか単純に読んでいて怒りを喚起させるようなやつである。見ていていらいらするシンジみたいな。そういえば読んでいてイライラさせられる、ということを最近あまりされなかったなぁ。どれもこれも読んでいて気持ちよくさせることばかりに重点がおかれていて、イライラさせるというところに注目していない作品が多すぎるのではないか、と笑傲江湖を読んでいて思った。岳不群の偽君子っぷりに怒り、岳霊珊の強情さに舌を打ち、林平之の突然の豹変にびっくりしながらも罵り、令狐冲の活躍に喝采を叫び、そういった喜怒哀楽に満ちているから笑傲江湖は面白いのであろう。


またしても岳霊珊のピンチを救った令狐冲。というか、常に岳霊珊の危機にウルトラマン仮面ライダーのように表れる令狐冲を、もう少し岳霊珊は疑った方がいいのでは? 主に令狐冲ストーカー疑惑で。


そしてまた岳霊珊の話を盗み聞きする任盈盈。お前ら夫婦は極寒のアラスカにでも潜入しろバカ野郎。というところでこの巻は終わる。