基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

レッドサン ブラッククロス〈2〉迫撃の鉄十字/佐藤大輔

 「まったく、何て面倒な変わり方だったのかしら。大きくなったり小さくなったり、この先どうなるかなんて、まるで見当なんかつかなかったものね」
                 ──ルイス・キャロル不思議の国のアリス

「まさかってな思ってるだろ?まさかこの「オレ様」がなって 「妙なタイミングが重なって重なればオレ様も意外と弱いなー」って思いながら死ね」
            ──柴田ヨクサルエアマスター

ついに第三次世界大戦、開幕。
てっきり核による被害状況を次々と報告していく場面から始まるのかと思いきや、藤田の描写からはじまった。この藤田が成長していくさまは戦争心理学的な面から見ても面白いものかもしれない。なんにしろ藤田は、普通の物語でいうまっとうな成長とは程遠い成長をしていく。実戦の経験を得て、銃を棍棒変わりに敵陣へ白兵戦を仕掛けに行く場面などは、皇国の守護者の新城を彷彿とさせる。

合衆国のどこに核を打ち込んだのかと思えば、首脳陣が集まる中核に打ち込んでいたとは・・・。ワシントンだったか? それにより、合衆国の頭脳が消滅したといっていい。アメリカが日本に打ち込んだ時にそういった場所が選ばれなかったのは観測できないからという理由で正しいのだろうか? 

現在世界最強を誇るアメリカ合衆国が、崩壊したというのが痛快ではないか。崩壊したのが日本であったら何とも言えない気分になっただろうし、ドイツやイギリスが壊滅してもそれ程のインパクトは与えられないが、合衆国が崩壊したのである。今や合衆国が崩壊するところなぞ想像もできないが、妙なタイミングが重なって重なれば合衆国も意外と弱いなーっと思いながら崩壊した。

絶対的な強者が打倒される展開に燃える。日本に核を落としやがった腹いせをアメリカに核を落とすことで晴らしているという見方も出来るが。とにかく核は合衆国に投下され、政府要人はすべて死滅した。まるでアクメツのような展開ではないか。この惨状をアクメツが望んでいたのだとしたらなんともアホな話である。果てが無いほど無能ではない限り、指揮官はいた方がいいというのは本当らしい。政治家がいくらゴミのようだからといって皆殺しにしてしまったらそれこそ、国は崩壊するだろう。トップがいなくなった場合どのようにして指揮系統が確立されるのかを楽しみに読んでいたのだが、直接的な描写は無い。

電話をかけてそれが途切れることによって核を観測するというアイデアはオリジナルのものなのだろうか、思わず感心(感動?)してしまった。核が落ちてくるのをホワイトハウスとの連絡によって観測する場面は・・・。

核が落ちた後の展開だが、ひたすら闘争である。楊令伝を読んだ後に、このレッドサンブラッククロスを読むといかに戦争のあり方が変わったかがわかるな。一人二人の勇将が活躍するような時代では、もはやなくなってしまった。

戦艦同士の戦いなど、何が起こっているのか描写をじっくりと読んでもわからん。水平板の強度の話とか、わけわからなくても面白いのだから不思議なものだ。艦隊戦は、はじめの一歩でたとえれば、宮田vs宮田みたいな状況だなぁという感じ。お互いに低ダメージのジャブを打ちまくりながらポイントを稼いでいるみたいな。

合衆国軍にもヒトラーという名前の男がいて、読んでいて何故ヒトラーが直接指揮しているのだろう・・・とはてなマークが大量に出たが、すぐに別人気づいた。というか、かなり読み飛ばしていることにその時気づいた。読み飛ばしてたのがいけないとはいえ、紛らわしいんじゃぁ!他に気になった人物といえば、ルーデルという人物がやたらと非難されている場面があった。気になったので調べてみると、Wikipediaではまるでドイツの英雄のような書かれ方をしているではないか。乃木大将みたいなものだろうか? 英雄のように書かれているが実際は──という。もっとも乃木大将が実際どうだったかなんて知らないのだが、司馬遼太郎の本を読んだだけだし。
ルーデル殿、本書ではひたすら兵站を気にせず戦いに赴く大馬鹿ものとして嘲笑されている。兵站の補給は首脳部がなさねばならない最低限の配慮だ、それが出来ない奴はどんな立場の人間であろうと無能だ、と皇国の守護者でも言いきっていた。ここでもそのスタンスは変わっていない。

さて、ついに合衆国が退場し、残った役者は日本、ドイツ、イギリスの三か国。イタリアもいたような気がするが、やはり本書でも馬鹿にされていた。

単純な疑問として、日本にこの先、戦い抜いていく体力があるのだろうか。なにしろ第四次世界大戦まで予言されてしまっている、いったいどこから、自国で資源を補給出来ない日本が、戦い抜くためのありとあらゆるものが湧いてくるというのか。

アインシュタインは、第三次世界大戦は何で行われるかわからないが第四次世界大戦は棍棒で行われるだろうと核を皮肉っていたが、本書ではまだ、そこまで核の威力が大きくない。だが第四次世界大戦の時代には(1980年ぐらいだったか?)核の威力は世界を破滅させるに足るものになっているだろう。さて、どうなるか。続きが気になる。