基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界/西尾維新

人生に再販があるとすれば、私はどういう風に誤植を直すだろうか。
                        ジョン・クレア

何を誤植とするかは人によるだろう。一時の不幸は未来の幸福につながっていることが多い。たとえばフラれたから不幸かというと、長い目で見ればその後もっと素敵な人と出会えてあの時フラれたのは幸運だったと思えるようになるかもしれない。何事もやってみなければわからないところがある。最後まで人生を全うしえた人間ならば、誤植を直そうなどとしない可能性もあるだろう。勿論ホームレスで一生を終えて、こなくそー!という人生なら別だが。誤植を直したからそれで万事うまくいくかというとそういうものでもないだろう。そもそも作品というものが、いつどこで完成するかという定義がひどくあいまいなものだ。作者が完成!と言った後も、直そうと思えば直すことができるのだから。

ていうかタイトルながっ。なになに、書店でこの本を検索してほしかったら、「あの・・すいません検索お願いしてもいいでyしょうか」「はい、タイトルわかりますか?」「ぶきみでそぼくなかこわれたきみとぼくのこわれたせかいです」「・・・・・すいませんもう一度いってください」眼に浮かぶようだ。長すぎて背表紙がせませまだし。

前3作の内容を忘れてしまって、どないしよほんまに・・と途方にくれていたのだがこんなときのためにこのブログを書いていたのをすっかり忘れていた。そうだ、こういったときにブログを活用しないで何のためのブログなのか。幸い過去三作は全てここに書いていた。いそいそと読み返してみたものの、何かストーリーをほんのりと思いだしただけで何の役にもたたなかった。今こうして書いている文章も、このシリーズの次の巻が出た時にもう一度読み返すハメになると思う。未来の自分のためにストーリーを詳しく解説してやるべきなのかどうか。おーい 未来の自分見ているかー。 はっはっは、わざわざお前のためにストーリーを解説なんてしてやるかよ。ばかめ。

まるで自分で自分に語りかける痛い人である。いや、本当にそのまま痛い人なのだから弁解のしようもない。たまにこうやって未来の自分へ語りかけたくなることがある。30分後の自分にメッセージを送ろう、みたいな。タイム・カプセルとか超好きだし。超とかつけると超安っぽくなるな。

相変わらず章ごとの2ページ漫画が壮絶なネタバレでキレそうになりながらも読み進める。だいご問とか中身を読まなくてもイラストだけで何が起こるのかわかってしまう。今回に限って言えば、イラストもトリックにかなりの部分関わっていたわけだ。イラストがなければここまできれいにダマされなかっただろう。これって読み返したらヒントが随所にちりばめられているのだろうか。いやいやいやていうかいつもネタバレなんて誰にも配慮しないで書いているのだがこればっかりはさすがにネタバレ注意を高々と掲げた方がいいような気がしてきたていうかそうするべきだうん間違いない間違いない。

ネタバレ有

ていうかこんなイラストを脳みそに刷り込まれ続けたら騙される。うむ、間違いない。こんなあからさまに女っていうか男が女装して先生やってるなんて1ミリも想像しない。確かに胸はぺったんこだが。なんで女装してんねん! もともと病院坂一族、どいつもこいつも男っぽいからいつかこのネタが来ることを予測していてもよかったのかもしれないが。まさか女装していて、それもあっさりと殺されてしまうとは思わなかった。確かに一度も独白で私は女だから殺されるはずはないとはいっていない。他にイラストの話をすると、27歳になった串中君がまるで27歳に見えない事だろうか。そういえば彼の息子の黒士だっけか。こいつも一本筋が通ったいい名前だ。串中黒士。

つくづく病院坂一族は殺されるのに適していると思わざるを得ない。殺しても殺しても出てくるので便利だ。

これをミステリとしてみた場合、犯人は特に問題ではないしトリックもない、ってことは純粋に解かれるための謎としては次の犠牲者は誰か、というところに収束していくのだろう。なんともあやふやなまま物語は進み、何の脈絡もなく先生方は殺されていき最終的に犯人の思惑は達成させられてしまうと。前回姉を状況を動かすことによって殺してしまった串中君はまたしても、予期していたのか予期していなかったのかは彼の語りだけでは当然わからないのだけれど、7人もの犠牲者を生み出してしまったわけだ。病院坂一族はまるで彼の遊び道具として殺されるために存在しているかのようだ。そのうえスペックが低いやらなにやらかんやらひどい言われようである。まぁ探偵役になるには頭が足りなすぎるし、ワトソン役になるには少々無関心でありすぎた。なんとも中途半端なまま死んで行ってしまった。割とまともで面白みのないキャラクタだったのに最期ひっくり返して言ってくれたが。