基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

コズミック 流/清涼院流水

コズミック流 (講談社文庫)

コズミック流 (講談社文庫)

 げげっなんじゃこりゃ! 面白すぎるぞ! どこの感想を見ても確かに凄いけどバカバカしい凄さとだけ書かれているが文句なしに面白いな。いきなり曹操の詩から始まりその次に犯罪予告状が書かれている。いわく今年中に1200個の密室で1200人が殺される。もう正直ここだけで笑いが止まらないのだが、そのあとから何事もなかったかのように平然と密室が1つ目から描写されていくのには参った。何しろ1200個も密室殺人が行われるんだから、一個一個描写していったらキリがないではないか。事実一巻まるまる使ってようやく十九個の密室をさばいただけだ。このままのペースで1200個の密室を書ききろうとしたら全部で60巻を超える長大な小説になってしまう。ギネスを狙うならそれでいいかもしれないがこの本は結局二冊に分割されているので、どう考えても次の巻で大どんでん返しが起こらない限り1200個密室殺人は完結しない。大体推理なんて放棄せざるを得ないようなバカバカしい密室ばかりでいったいどうしろというのか。衆人環視の中突然首が落ちて背中に密室と番号が書かれているとかそれを出来るのは光学迷彩を手に入れたスネークか、超能力者か神か幽霊しかいないだろう。だいたい各地でおこっているのだから光学迷彩説は否定されるから(複数人でやれば別だが)残りは超能力者か、神か幽霊だ。まず間違いなく犯人はこの中のどれかだ。

 笑いが止まらないことの一つとして、一体この19個の密室にどんな意味があったのかさっぱりわからないところだ。そりゃ中には重要な手がかりも残されている。たとえば密室卿の使者が殺される密室十八だったり、手がかりをつかんだ人間が二人いるけれど、二人とも殺されてしまったりである。いやしかしこれは全部無駄なんだろうなあと思いながらなんだかんだいって全部読んでしまったのだから普通に面白い。いずれ殺される人の描写なんか読んだってしょうがないような・・と思いながら読んでいると、殺される人とほとんど関係のない人間の描写が続いて突然やってきたピザ配達人が殺されたりするので油断がならない。

 いやいやいやしかし舞城王太郎九十九十九を読んでずっと待っていただけに、JDCのメンバーに話が移り変わった時は全く狂喜乱舞したものだ。しかも出てきたのは絶対に推理を外す能力を持つ迷探偵ピラミッド水野という強烈な個性を放つ探偵である。何故ピラミッドなのかさっぱりわからないのだが、殺されてしまったので多分永遠に謎は解決されないのだろう。というか絶対に推理を外す能力を持つなんてすばらしく面白い能力を持っているのに、こんな10ページぐらいしかない短編で使い潰されてしまってショックなどというレベルではなかった。ピラミッド水野が殺された時に本気でちょっっちょっと声に出していたのは自分だけではないだろう、きっと。そうであってほしい。しかも十九人も殺しておきながら、事件はまだ本当には始まっていないというではないか。いったいどういうことなのか今からわくわくが止まらない。