基本読書

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浪花少年探偵団/東野圭吾

浪花少年探偵団 (講談社文庫)

浪花少年探偵団 (講談社文庫)

 少年探偵団っていうと真っ先にコナンが思い浮かぶが、あちら程には少年たちは捜査に協力しない。先生の手足となって調査などをするだけである。あれ、これコナンと一緒だ・・・。じゃあコナンと一緒ということで。でもコナン程少年達は目立っていないんだよな。しのぶ先生は先生という権力を振り回して生徒達を捜査に協力させる。生徒達からしてみれば、いい迷惑であるのだがこういう暴虐無人系の人間は他人に命令されるのを常に待っているような貧弱な日本人では珍しいので小学生達からはとても慕われている。表紙のしのぶ先生の顔はひどいもんだが、一応美人という設定らしい。あと当然大阪での話なので、どいつもこいつも関西弁でしゃべり倒す。別に音声として関西弁が聞こえてくる分には何の問題もないのだが、文字として関西弁を読むと妙に胡散臭いんだよなあ。密室・殺人ではまあ関西弁もいいかな、ぐらいだったのだけれど、この本みたいに誰もかれもが関西弁で喋ってるとやっぱりとてつもなく胡散臭い。というよりも、なんだかイメージが固定化されてしまうんだよなあ。しのぶ先生がイメージ的には大阪のおばはんそのままになって払拭されない。

 五編の短編によって成り立っている。一つにつき一人、殺人事件が起きてミステリー要素としては密室やらダイイングメッセージやらがより取り見取りである。いろいろな謎が見れるのがミステリ短編の醍醐味でもあるのだが、一冊につき五人も死ぬわけだからなんとなく違和感は拭えない。一つの短編がいうならばコナンのアニメ1話なのでコナンを5話連続して見た時のくどさといったら伝わるだろうか。いや、面白かったんだけどね。トリックも凄く素朴で思いつきそうなものなんだけれども、どれ一つとしてわからなかった。こういうのも本格推理小説というのだろうか。定義がよくわからん。うん、キャラクターも面白いはずなのだが大阪弁が思うようになじまず、その点は残念だった(作品が、じゃなくて自分が)。本書はどちらかというとトリックを基調にして読ませるというよりも人間関係の面白さを書くような作品なのでキャラクタを楽しめないのは致命的なような気がするのだがそれでも面白かったのは何故なんだろう。義理と人情に生きている大阪(偏見)そのものを読んだような気がするからだろうか。動機ひとつとっても何か違うな、というのを感じ取ることができる大阪の特殊性とでもいうべきか。何の気はなしに読み始めたので作者が東野圭吾だということに読み終わった後に気がついた。他の作品とまるで雰囲気が違うあたり、東野圭吾の芸の細かさを感じる事が出来る。