基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

鴨川ホルモー/万城目学

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

 偉い普通の作品である。別に褒め言葉でも、けなしているわけでもなくどこまでも普通である。つっかかるところといえばホルモーが意味するところの少し不思議な感じの設定だけであって、お話の運びがすべてはお約束に支配されている。キャラクターも特にこれといってトガっているものがない。伊坂幸太郎の砂漠に出てきた奴らの個性を水か何かで極力薄めたような普通の人たちである。せっかくサークルという場所を用意して、二十人もの人間がいるのだが名前が出てきて実際に物語に関わってくる人間となると半分ぐらいになってしまう。ホルモーの秘密をもう少しひっぱってもらいたかったがまあどうしようもない。そう、別につまらなくはなかったというのが一番の問題点であろう。予定調和だろうが、キャラクターが特に光っていなかろうが文章がそれなりに光っていて誰もが納得する王道展開を展開されたらつまらないという評価は決して下せない。

 途中までは面白く読んでいたけれども、最終的に予定調和の極致というか、伏線の回収みたいな場面に入っていくと読むのがきつかったなあ。もうとっくにわかっていることを長々と解説されることほど退屈なものはない。たとえば主人公に敵意をむき出し(だと主人公は思っている)なメガネの女の子が出てきて、それでいてぷりぷりしながらも何かと世話をやいてくれているのだったら、これはもう物語をたくさん読んだり観ている人でなくてもすぐに気がつく。そんでもって主人公がいや〜全然あいつが俺のこと好きだなんて気がつかなかったよ〜・・・俺はなんてだめなやつなんだー・・・とかうだうだしても何ら感じるものがないし、しかもメガネを外したら意外と美人だった──。までいってしまうとおいおい・・・と突っ込みたくもなるのである。

 逆に面白かった所といえば、やっぱりホルモーの戦闘の設定は面白かったし(わざわざ十人も人数を集めないといけない設定は正直いらないと思うけれど)京都という舞台を生かした豆知識やら、京都の神社やらの話も知っていると楽しめる。何回生というのも京都方面特有の言い方で、いたるところに京都っぽさがにじみ出ている。十人も人数を集めないといけない設定も、存在感のあるキャラクターをかけるのならば充分に面白そうなのだけれどもここに出てきたキャラクター、〜〜兄弟とか名前も覚えられない程存在感のない奴らがいっぱいいて、書けないなら最初から五人競技とかにすればよかったのに・・・と思ってしまう。