基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

造花の蜜/連城三紀彦

造花の蜜

造花の蜜

 これはいい誘拐劇。これを読んだおかげでかなりの誘拐分がたまったわい。もうあと一年は誘拐物を読まなくてもいいレベル。あまりにも世の中に大どんでん返し! どんでん返し! と書いてあり帯にまでどんでん返し! どんだけお前らどんでん返しやねんと身構えながら読んでいたがやっぱりとんでもないどんでん返し! これ、最初のどんでん返しまでは仕組みを思いついたとして、そこで満足しちゃいそうだけどもうひとひねり加えてくるところが計り知れない。だからこそ驚くのだが。出てくる人間はどいつもこいつも火サスか! とでもいいたくなるようなドロドロした人間関係で、正直最初はそれだけで読むのが苦痛になったのだが謎が開示され終わった後は人間関係が気になる事もなく無事に楽しむ事が出来た。このドロドロの関係はいかんよなあー。昔、毎日のように朝やってる人々のどろどろした問題を解決する番組や、みのさんの思いっきり生電話を観ていたせいでドロドロした人間関係に拒否反応が・・・。そもそもこんなものを読んでいて楽しい人間がいるのだろうか。疑問だ。しかしつい最近
他人の不幸 科学的にも蜜の味だった
こんな話もあることだし、実は楽しいのかもしれない。蜜の味ってところがタイトルとも関連していてぴったりといったところだ。疑問は、なんでそんな機能がついてるんだろう? ってこと。そしてこういう風にお前の感じている感情は全部脳の中で仕組まれたことなんだぞ、と一つ一つ解き明かされていくのは、なんともいやらしい。どうせ全部脳の中の出来事だとは知っていてもなんとなく嫌悪感を覚えてしまう。うん、何はともあれ謎だらけの登場人物に謎だらけの展開に火サスもびっくりの人間関係にごった煮。あまりにも謎すぎてだからなんなんやねんとページをめくる手がとまらん。傑作である。
 最後の章があるのは正直蛇足である。いや、内容自体はとてもよろしいのだがいかんせん自分はあまりにも大どんでん返しを主張されてから読み始めたために、最後のどんでん返しのあともページ数からいってまだまだどんでん返しがあるはず! とわくてかして読み進めたら全く別の話が始まりましたとなんとも不完全燃焼。驚いたけれどね。最初に誘拐分がたまったといったのも当然だろう。一冊で実は三回もの誘拐が起こっているというのが明かされるのだから、これを読んだ人はしばらくもう誘拐はいいやと思うはずである。最後のも合わせれば四回か。普通誘拐物っていったら一回なのに、それが四回! 四冊読んだのと同じぐらいの密度である。それゆえ読むのにも結構時間がかかった。探偵役が存在しておらず、警察が組織力で捜査するのかと思いきや右往左往するだけで本当に無能だなあ警察は。こんなの読んだら悲しくなってくるよ。警察がまったく事態を進展させられないので事件の謎も全部犯人側に明かされるまで待たなくてはいけない。そういえば罪と罰が出てきた。たんなるダジャレだけど。ミツバチ。犯罪者は罪と罰を読んでいなければならないという縛りでもあるのだろうか。しかしこれだけ密度の濃い誘拐物はそうそうないんじゃないかなー。それぐらいの密度の濃さを誇っている。面白かった。