基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ヴィンランド・サガ7巻

ヴィンランド・サガ(7) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(7) (アフタヌーンKC)

 六巻で覚醒したクヌート王子本領発揮である。正直いって滅茶苦茶面白い。アシェラッドの過去が明かされたり、ビョルンとアシェラッドの友情が書かれたり、クヌート王子の変貌っぷりが書かれたり、それからなんといってもレイフとトルフィンの再会だろうか。これが非常に興味深いというか、物語に新たな展開。これはトルフィン成長フラグか。アシェラッドもクヌートもトルケルも「自分」をしっかり持って生きているだけに、復讐だけを目的にしているトルフィンが凄く子供っぽく見える(実際子供だが)トールズが辿り着いた本当の戦士には程遠い。この物語の最後が、トルフィンが本当の戦士になることによって終わるのかどうかはわからないが、それがこの物語の一つの到着点であることは確かだ。「本当の戦士とは何か」について考えているだけ、アシェラッドやトルケルの方が本当の戦士に近い位置にいる。本当の戦士とは何かわかったんだ、と六巻でトールズが言ったあとのコマが赤ちゃんだったので、本当の戦士の意味もなんとなくわかるがそれでパワーアップするっていうのが意味不なんだよなー。この物語のゴールは「本当の戦士」とは何かを見つけ出すことなのだろうか。と思ったが、サガと題名についているだけあって、ヴァイキングの時代が終了するまで続くんだろうなー。そうすると最後、たぶんクヌートは王になりトルフィンはどっかで家庭でも作って本当の戦士とかに目覚めて家族に囲まれて生きていくんだろう。物語がここまできてヒロインが出てきてないっていうのはおかしいから家庭を持つっていうよりもいったん家にかえって母親とか姉を大切にするのかもしれない。トルフィンの復讐がちゃんとした形で果たされるにしろ、アシェラッド死亡によって終わってしまうにしろ、その時トルフィンどうなっちゃうんだろ。今のところアシェラッドもトルケルも死ぬ場面が想像できないが。この二人が死ぬとしたらなんだ? 案外病気とか? 何故ヴァイキングなんだろうなと疑問だった。愛を語りたいなら別にヴァイキングじゃなくてもいいし、本当の戦士を語りたいとしてもやっぱりヴァイキングじゃなくてもいい気がする。ヴァイキングを選んだ理由みたいなのをどっかのインタビューで答えていたような気がするが失念。うーむ。一番後ろの言葉を読むにヴァイキングのプライドが書きたいのかなーとも想像できる。何にしろ戦闘の場面が今のところどの漫画より面白い。ばんばん戦ってほしいものだ。それにしてもすごいのは絵だよ、絵。特に目な。目について言及していることがやたらと多い。悟った眼とか、本当の戦士の目とか、疲れきった眼とかいっぱい出てくる。その目だけど今回ビョルンの目がトールズとかと同じ、本当の戦士の目になっていたのが興味深い。ひょっとしたらただの勘ちがいかもしれないが。死を前にしたビョルンが本当の戦士の目になってても何の不思議もないけどなー。ついでにいえば覚醒クヌートの目はいつも中身が多い。さすが覚醒。

トルケルとトルフィンとアシェラッドの関係は三すくみに似ているなあ。いや実際にはトルフィンが一番弱いのは確かなんだが、すばしっこいトルフィンは大ぶりのトルケルとは相性が良いみたいだし、トルケルはアシェラッドに強いし、アシェラッドはトルフィンに強い。割と無敵だ。アシェラッドの冷静な戦いぶりを支えているのはある意味他人を突き放してひたすらすべてに対して中立、公正な目であろうとするその立場だ。友達もいない。このあとトルフィンをかばってアシェラッドが死ぬ展開があったりしたら非常に最高なんだけどなー。トルフィンをかばったことによってアシェラッドもまた本当の戦士になれたのであるみたいな。ないか。ないかな。しかしアシェラッドが死ぬパターンしかこの先思いつかない。トルケルの役割もよくわからんし。そういやトルケルがやられたのはあしぇらっどが今回トルフィンに使った戦法とまったく同じだったのだろうか。この二人似ているかも知れぬ。

ふとバガボンドの29巻を読み返していたら、ものすごく話の運びが似ていることに気がついた。というよりも、ほとんどすべての話はこの主題に通じているのだろう。一番根っこの問題が本当の戦士、愛、生と死、これらにつながっている。トルフィンに帰るという選択肢が生まれたのはちょうどバガボンドの29巻で示された道と同じだ。バガボンドで武蔵は70人との斬りあいに勝利し、おつうと幸せに暮らす道が見えた。どちらも悩んでいる。武蔵も悩んでいるし、トルフィンも多分悩んでいるだろう。本当の戦士に剣はいらないというのも、バガボンドと同じだ。いかに鞘から抜かずにおくか。どちらの物語も、それを知っていた人はすでに死んでしまった。いったいこの二つの話はどこにいくんだろなあ。ちょうど同じ場所にいるようなきもするけれど。

 人間の何たるか 人はなぜ生まれ 如何に生きるべきか 救いはあるのか 分からなくて 混沌の闇の中で
 苦しみ のたうち 間違いを犯し 
 あんたがかい? 
 そうさ
 わしの中にも我執── それはあって それが頭をもたげる時わしの歩んできた道は無意味に思え
 アホらしく見えて───
 省略
 それによると お前の これまでも これから先も 天によって完璧に決まっていて それが故に──
 完全に自由だ

 剣に人生の大半を捧げてきました その日々はこの出会いの── この立合いのためにあった
 よかった 我が人生の時の時 誰にもそんな時が訪れるとして
 どれだけの者がその時 それとわかる? 大抵の者は老いて振り返って気づくもの・・・・・・・
 よかった 今がその時とわかる