基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ [DVD]

スカイ・クロラ [DVD]

 初めから、自分なんてものが幻想なのだ。すべては常に変化している。それが自然だ。昨日の自分と、今日の自分は、違う生き物であることが自然だ。以前と違うことの方が当たり前であって、変化し続けること、蓄積しないこと、築かないことが、摂理なのだ。植物は冬に枯れて、春になれば新しい芽を出す。同じ事を繰り返すけれど、まったく同じではない。いつもいつも新しくなっている。     ──スカイ・イクリプス/森博嗣

 「映画」を見たと感じることができる久々の傑作。アニメとか、実写とかを通り越して圧倒的なまでの「映画」。「パプリカ」や「鉄コン筋クリート」などのアニメーション映画はそれはそれで面白いと思うが、あくまでもアニメ映画だ。それが悪い事だとは思わないし、どちらも面白かった(鉄コン筋クリートはさっぱりわからなかったが)だが上を目指すなら、スカイ・クロラを真似するにせよしないにせよ、ジャンルの境界を踏み越える試みをしていかないとダメだなとこれを観て思った。個人的に見た中じゃ2008年ナンバーワン作品であるスカイ・クロラがようやくDVDで発売された。映画館にも二度足を運んで、思ったのだが一番重要なのは音だ。音の表現という意味でDVDでスカイ・クロラを見るとどうしても劣ったものになってしまうのは仕方のない。サントラも買って音楽も結構聞いていたのだが何か物足りない。今回見直して何が足りなかったのか分かった。それはプロペラの音だったり、エンジンの音だったり、要するに飛行機の音が足りない! ぜんっぜん足りない! 必要なのはプロペラだったのだ。ドップラー効果で戦闘機が飛んでいく感じだったり、着陸態勢に入ってプロペラが次第に停止していく音だったり、すべてが合わさってスカイ・クロラだったのだ! 

 ストーリーに関して言えば、久しぶりにわかりやすい押井守作品だと感じた。イノセンスの時のどんよりとした映像も凄かったがこの空の表現には遠く及ばないし、テーマはより普遍的だ。作品にいかに重厚なテーマが書かれていようが、傑作だろうが観てもらわないと意味がない。原作を全て読んでから観たので正確なところはわからないけれど、凄く分かりやすいと思う。多くの人に見て、わかってもらうことを今回目標に掲げているのは、わざわざ押井守が宣伝広報会議に出席(普通監督は出席しないらしい)にしてることからも明らかだ。キャラデザがNARUTOの人だったり脚本が今人気の人だったり、全てがより良い方向に機能していたのではないだろうか。面白い。
 劇場に二回見に行ったが、二回ともオープニングで泣いた。別に感動的な場面でもなんでもないのに、空があまりにも綺麗なのと映像と音が圧倒的で泣いた。凄く泣いた。だがやはりDVDだと難しいようだ。やっぱり圧倒されて、鳥肌が立つような場面がいくつもあるのだけれども涙まで流れてこない。夕日の場面とか、集団戦闘の場面とか、最後ティーチャとカンナミが交差する一瞬とか壮絶に鳥肌が立つ。戦闘場面だけつなぎあわせて延々と観ていたいぐらい。ティーチャが誰にも負けないのは、やっぱり全員ノクセを把握しているからなんだろうなー。だからこそカンナミが放った必殺のターンが完璧にティーチャにタイミングを合わせられてしまったんだろうなー。違うのかもしれないけど。しっかし最後にテーマ、核心を主人公に独白させるっていうのはどうなんだろう。あれが無くてもわりと伝わってる気がしなくもないが、とてもわかりやすい。あとやっぱり間がいいな。何も起こらない数秒とか、停止ボタンを押したように止まってる場面とかに色々なものが凄く伝わってくる気がする。間をうまく使える人はあまりいないのではなかろうか。というよりも、間を使う人があんまりいないのかもしれない。全部ヨカッター。