基本読書

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紅―ギロチン/片山憲太郎

紅―ギロチン (集英社スーパーダッシュ文庫)

紅―ギロチン (集英社スーパーダッシュ文庫)

 表紙のマフラーの人の名前は切彦という。扉絵にもそう書いてある。一巻を読んでなんという女だらけの世界だ! と驚愕した自分であるが、二巻でようやく男で、ちゃんとしたイラストがついたキャラクターが出てきたのか、と胸をなでおろした。だが蓋を開けてみればどうだろうか、こやつまでも女ではないか。いったいどうしたというのかこの世界は。そんなに男が嫌いなのだろうか。世界にはしかし、男と女とオカマしかいないわけであって、キャラクターを出せる数も決まっていて、それならば女キャラクターを出した方が良いに決まっている。資源は有限なのだ。男なんて書いている暇があったら女を書いた方が良い。しかしここまで行くとうすら寒いものがあるのもまた事実である。全く関係ないが髪の色のバリエーションも酷く少ない。黒髪が主人公+女キャラクター6人で、茶髪が切彦と紅香の二人。二種類しかないのである。しかしキャラクターの見分けはすぐにつくあたりイラストレーターの底力といっていいかもしれない。ついでにいえば一巻の扉絵イラストではあまりパっとしなかった銀子だが、二巻では凄く可愛くなっているのが印象的。メガネかけた空の境界の式にしか見えないが…。まあ髪型がかぶっている以上似てしまうのは仕方がない。それから主人公に対してロリコン、と罵倒するのが素晴らしい、グッド。日本語の中でも屈指の罵倒語だよなあ、ロリコンって。

 内容に関して言えば相変わらずベタな展開で非常に面白い。特に主人公の真九郎が辿り着いた現在の結論に至るまでの過程は秀逸で読んでいて凄く面白かった。

 死んだ者がいくところ。
 向こうの世界に、家族はいる。父と母と姉がいる。
 でも紫は、この子は、ここにしかいない。
 だからまだ、自分は向こうへはいけないのかもしれない。
 真九郎は、そう思った。

 グッド! 真九郎は真苦労と名前を改名するといいぐらいに苦労人なのだがこうして地に足付けてくれると非常に安心して読める。成長というのはまったく素晴らしいものである。このあたりのテーマ性は一巻と比べてより発展していっているといっていいだろう。

反面一巻と比べて納得いかねーなーという部分もある。何より痛いのがどんなに緊迫感のあるバトルになっても、ベタ展開すぎてはいはい覚醒覚醒、はいはいパワーアップパワーアップとしか思えないところ。勝つのがわかりきっているだけならまだいいんだが、演出で冷めてしまう。この辺は燃えるという感想も多いので完全に個人的なものなのだろうが。リンなんとかとかいう二刀流の女の人もあっさり腕落とされて、死んでしもうたし。びっくりだわさ。演出で冷めてしまうというのも、色々な出来事が唐突だからである。依頼主の女の子と長々と死について語り合っていたりと、そりゃ勝手だがその間ギロチンが棒立ちしているのだが…。それからギロチンがプロとは思えないような虐殺をしでかしたりと。真苦労が電話でパワーアップするのはプロとして未熟だからという理由で納得した。野球選手が病気の子供と約束してホームランを打つような話が大嫌いなのだ。