基本読書

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麗しのオルタンス/ジャック ルーボー

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

以下は本書のヒロインであるオルタンスについての記述である。

 年の頃はほぼ二十二歳と半年であった。身長は平均よりやや高く、目は大きく、びっくりしたようなまなざし、膝は無邪気で、頬はやわらかい。着ているものは決まって、この決まってを特に強調しておくが、露出度のきわめて高い、しかも高価で色鮮やかな超ミニのワンピース、そして歩行にはまったく不向きだが、エウセビオスの目的にはうってつけの靴を履いていた。というのも急いで歩道を進もうとすると、布地と身体のあいだに意図せざる不意の隙間が生じるからである。
 彼女が急いでいる理由は、そのワンピースの下にパンティをはいていないことが(比較的稀にだが)あるのと同じく、出遅れたからであった。

パンツ履いてナイデェース! 超ミニのワンピースを着ておきながらパンツはいてないデェース! オッケーイ! いや何がオッケーイなのかわからん。どう考えても変態であるのは言うまでもない事実なのだがそれがまあ美しい女子大生というのだから世の男性どもは狂喜乱舞し顔を地面にこすりつけながらズリズリと歩行するであろう。(なんだと)しかしこの本に出てくる女と男を見ていると、どこかにもあったが男はすべからく卑怯者であり、女は全てアバズレであるという意見には控え目ながらも同意せざるを得ない! 

ヒロインがパンツはいていないということだけがこの作品の魅力…というわけではもちろんなくて、他にも見所はたくさんある。例えば突っ込み待ちとしか思えない著者の変態視点だったり(著者がしょっちゅう本文中で補足説明を入れる)。こことか。

ヒロインの描写に関しては、伝統的な手法にのっとり、上から下へと移動していくことにしよう。まずその髪であるが、金糸よりもなお輝いていたとでも言おうか。もっと正確に言うなら、明るい栗色を帯びた、ふさふさと量の多い柔らかいセミロングの金髪であった。それぞれの脇の下に生えている髪とほぼ同質の素材からなる茂みは(彼女は剃らないのだ、ありがたし!)

ありがたし! 剃ってないデェース! ありがたし! ってまるで変態やないか! 

一応ミステリィ小説という売り出し方をされている。しかし注意してほしいのだが、ほとんどミステリィ小説ではない。確かにこの本の中には<金物屋の恐怖>事件と呼ばれるしょーもない事件が起きる。そして二人の刑事がそれを調査したりもする。オルタンスがラブロマンスをする相手はいわくありげな謎の人物だし、散らばっているピースは非常に、ミステリィ的である。だがジャガイモとカレー粉とニンジンとお肉が机の上にならんでいたからその日の晩御飯がカレーとは限らないのと同じように(十中八九カレーだろうが)これもミステリィ小説と同じ具材で作っただけでまた全く別のものである。事件と何の関係があるのか全くわからない街の住人の生活が語られ。御客に本を渡すのを渋る図書館の話が語られ、町はこれでもかと綿密に描写され。事件と同じぐらい一生懸命に各部が描写されている。読者が読みたいと思うであろう方向へ舵を切っていくし(オルタンスとモルガンのラブシーンに至る過程は物凄く綿密であった)解決編なんてほとんどオマケ程度に語られる。だが確かに読者の側からしてみれば、長々とした解決編なんていらねぇ! ラブシーンをもっとかけ! といいたくなる部分もあるのである。謎の構成や、他色々一体どういった意味でこんなことをしているんだろう? と疑問に思って、そのまま解決されなかったことも多い。187ページの教授とオルタンスの会話が一体どういう意味なのかさっぱりわからないし。誰かボケステ。