基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

アッチェレランド

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)

本書解説より

 『アッチェレランド』というのは、実に本書に相応しいタイトルです。「だんだん加速していく」というのがその意味ですが、何が加速していくかといえば、まさにこの「空創度」、SF度なのです。

 そうなのです。チャールズ・ストロス『アッチェレランド』は三部構成で一冊の本となっているのですが、第一部では超金未来、2010年代が書かれ、第二部で宇宙へと舞台を移し(というかもう色々大変なことに)第三部で宇宙が拡散して(もうわけがわからない)・・・物語の中で文明はまさにタイトルの通りに加速していき、そして最後は見事な大団円を迎えます(たぶん、読んだけどよくわかんない)

 読み終わった今でも面白かったのかつまらなかったのか、凄かったのか凄くなかったのかすらよくわかりません。他の人の評価でいえば日本のSF作家である円城塔氏は読書メーターのコメントで『あー。負けだ負け。2005年の時点で。』と書いていますし、解説を書いている小飼弾氏も解説の依頼を受ける前に絶賛の書評を書いています。ただ二人とも一般人とはかけ離れた存在であるといえますし、これを読んだ普通のSFファンがどう思うのかは非常に謎です。ほとんど感想もネットで見られません。とりあえず理解できなかった人間がわかる範囲でいろいろ感想を書いておこうかと。

 第一部はまだほとんど現実と同じ時間なので理解はしやすいでしょう。主人公であるマンフレッド・マックスはアドバイスを求めている企業などにオリジナルのアイデアを『タダ』で提供し、成功を授けていく恵与経済の実践者です。ここでいう『恵与経済』とは要するに、現在資本主義経済の価値は希少性で決まるのだから、その希少性を無くしてしまおうという考えです。誰もが今の裕福なアメリカ人並にエネルギーを自由に使える社会。そんなのを目指してアイデアを無償で提供して回っているんでしょう。たぶん。本書ではお金をとらないことによってキャッシュの横暴に対する仮想的免疫力ができる、と言っていますが何なのかよくわからぬ。そう、このよくわからないところからが第二部ですね。物語は複雑さを増していきます。

 超重要なのが『シンギュラリティ』日本語では特異点と訳される単語です。作者が用いている特異点の定義は、コンピュータの演算能力が人間全てを合わせた演算能力を上回った時、だそうです。正確にはそこを発火点としてコンピュータの知能が爆発的に上昇していき、知能的にも人間を上回り、人間が今まで克服できなかったことを全て克服させるだろうと、そこまでいくのがシンギュラリティを信じる人たちの考え方だそうです。まあもっともこれは色々意見がわかれているそうなので詳しい事はこちら→コンピューターが人間を超える日。シンギュラリティーは起こるのか

 で、この世界ではシンギュラリティが起こって何もかもが一変してしまいます。資本主義は崩壊し、エネルギーは無尽蔵になり寿命はほぼなくなり『決定論的資源再配分アルゴリズム』が人類にあまねく資源を配分し人は宇宙へと拡散していきます。このあたりから人間がなんなのかもよくわからなくなって、意識のコピーも簡単に行われ、同じ人間が何人も、いろんな状態で出てきます。寿命なんてないどころか死んだ人間も復活したりします。アッチェレランドは主人公であるマンフレッド・マックスの家族についての物語でもあるので、ここを読んでいて百年の孤独を思い出しました。この把握の難しさという点においてです。宇宙を簡単に行き来できるようになり、ワームホールにおける移動も実用化され、時間の概念もあやふやになっていきます。そのあたりの法律も結構綿密に描かれていて非常に面白い。未来SF法律、経済学といってもいいかもしれません。ただまあ僕が面白さを認識できたのはその部分だけで、他は何が何やらまったくわからなかったです。