基本読書

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ロケットが飛んで、おもしろくないはずないだろうが!──ほうかごのロケッティア

『ぼくらの』のノベライズや『勇者と探偵のゲーム』を書いていた大樹先生の、ガガガ文庫では初めてのオリジナル作品。高校生がスクールカーストの中であがきながら、恋をしたりロケットを宇宙まで打ち上げようと頑張ってひゃっほーいい!! というお話。舞台が田中ロミオの『CROSS†CHANNEL』に同じく田中ロミオの『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』にさらにロケット制作を足した感じで、全体的に消化不良感があったけどロケットが空に高く打ち上げられていくのはそんなものを吹き飛ばすぐらい面白いのである。

全国から問題を起こした生徒たちが集まる学園で、主人公は生徒たちを操作する。放っておけばすぐに問題を起こしてしまうので、人間関係を操作して何事もない学園生活を送るのが彼の目標だ。しかしそこに、わたしの携帯を宇宙へと送ってくれ、という美少女転校生がやってきて──主人公はスクールカーストの中でなんとか操作を続けながら、携帯を宇宙へと送るためにチームを組んでロケット製作を開始する。その過程でスクールカーストの操作というただのゲームよりも、ロケット製作という物作りの快感に目覚めていく。

自分の作ったロケットが、ドドドドと音を立てて宇宙へ飛んで行って、そのまま帰ってこない状況を想像してもらいたい。それはたぶん、すごく興奮する。というか大多数の人は、自分の作ったロケットでなくてもただロケットが普通に宇宙へと飛んで行っただけで興奮すると思う。自分が行かなくても、人には「想像力」というものがあるから、ロケットが宇宙へと飛んでくのを想像して、わたし達は宇宙へと想像を飛ばす。宇宙にはまったくの謎、人類のごく少人数しか行ったことがない場所で、わたし達は未開の地があることに、安心するのかもしれない。まあ何にしろ、わたし達は宇宙へ惹かれるのだ。それが地理的な意味では、現在もっとも大きな謎だから。そして入口としてのロケットにも惹かれるのだ。

ただ手放しに絶賛もできないんだなー。どろどろとした学内政治の部分はどうしたって『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』と比べてしまうし(しかしこれと比べたら大抵は色あせてしまう。ぐったり。)ロケット製作の部分が噛み砕かれているかといえばそうは感じなかったし。あと大変めんどうくさい制作上の障害(必要で、でも普通は手に入らないようなパーツ)がご都合主義的に身の回りに集まってきたり。そうやって細かいところでつっかかることがあったけれども、全体としては微妙に感じたスクールカースト部分も「どろどろとした地上」と「夢としての宇宙」の対比として、気持ちのいい構成になっていたかなと。まあやっぱり最終的にいうことはひとつで、「ロケットが飛んで、おもしろくないはずがないだろうが!」に集約される!

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)