基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

惑星のさみだれ9巻

本日惑星のさみだれ9巻が発売されました。いやーやっぱり面白いです。次の10巻で完結ということで、物語はもう終盤も終盤、地球を砕こうとするアニムスと、地球を砕こうとするアニムスを倒して自分で地球を砕こうとする夕日とさみだれのコンビという、なんだかねじくれたスタートを切ったこの物語も、ついにアニムスとの最終決戦が始まりました。サブタイトルも最後の戦い、ですしね。今まで積み重ねてきた一つ一つの要素が、一気に展開するのです。これで盛り上がらなかったら嘘と言うものでしょう。

内容としては、前半部でなぜアニムスが地球をぶっ壊そうと思ったのか、そしてアニマがそれに対して制限をかすような、ゲームのルールを作ったのかの理由が明かされます。あとはさみだれと夕日の過去編、なぜ願いを一つだけかなえることが出来るのに、自分の病気を治すことにその願いを使わなかったのか。その理由。そして最後に最終決戦です。いやー燃える、っていうか展開が速いなぁー。地球の上でハンマーとヒヨコのおもちゃみたいなのが殴り合っている場面とか、もう爽快すぎて笑っちゃいます。以下ネタバレ。今手元に既刊がないので、細かいところにまで記憶が行き届いていないかもしれないです。

どうやって地球を破壊するんだろう?

 これが地味〜に気になっていたんですよね。なにしろさみだれは超怪力の能力を持っていると言っても、それはまあ自由の女神をパンチで一発で壊せる、とか地面が40メートルぐらいえぐれる、とかそういうレベルだったわけですよ。そんなわけで地道に能力アップを積み重ねていったとしても地球を破壊する為に何十年修行しなきゃいけないんだよ、と思っていたのですが9巻の展開で納得がいった。『待っとったで 超兵器のどちらかが砕けるこの瞬間を!!』。天元突破グレンラガンではじーさんが相手の力を全部吸収して、自分と混ぜ合わせることによって打ち返してましたけどあんな感じか。アニマが頑張って建造してきた力を、そのまんま吸収、再編成したんでしょうね。たしかにこれなら地球を破壊できる。ずっと計画してきたのかと思うと、アホの子丸出しのさみだれ、凄く頭良いなお前……とびっくりしてしまいました。

幼い時の夕日

物語がスタートした時は、世の中に絶望しきったクソ青年だった夕日ですが、「雨宮夕日と朝日奈さみだれ」で語られる少年夕日はとってもかっこいいです。外に出て犬に噛まれそうになっているさみだれを庇ってやり、父親を尊敬し、人を助ける為に自分の身体がどろどろになっても気にしません。『警察は怖くないぞ? 皆を守る正義の味方なんだ ぼくも父さんみたいな刑事になりたいんだ』青年夕日とは似ても似つかない! これを見るとわかるのは、今の夕日が成長した姿なのはもちろんなのですが、元々としてその素質、正義の味方になろうとする性質を持っていたんだなーと。途中の道でちょっとねじくれてしまっただけで、芯はずっとかっちょいい、正義の味方を志す純な男だったのです。それは多分父親から受け継いだものなのでしょう。水上悟志さんの作品では、伝承、のちの世代に伝えていくという表現が多いですから。

願いごとなど何もないというさみだれ

幼少時のさみだれ、病気でろくに外も出歩くことが出来ず、友だちもいない。そんな状況で「願いごと」を何でも一つかなえてやろうと言われたら、100人中100人が「病気を治してくれ!!」と言いそうなものですがさみだれ「なにも」と答える。その後も病気を治せと願え、と迫るアニマに対してさらにこう答えるのです。『病気やけど 悪い子やけど あたし今生きとる』苦しいのも生きることのうちだと、そういうことなのでしょうが幼い子供がそんな事を言うのは正直信じられません。そこはまあ「魂」が歳を経ているからだ、というようにアニマは納得していますが、やっぱりここでも魂の「継承」です。この世界は、何から何まで、人から人へと受け継がれていく物語なのです。アニマもさみだれの姉と親と通りすがった時に「こんにちは ご先祖様」と呟いています。アニマも未来のさみだれの一族なのです。

それにしても願いごとなど何もない、病気を治すことすら望まなかったさみだれが望んだのは「夕日とまた会うこと」そして「地球が欲しい」ということです。夕日と会いたい、と願う事はわかります。初めてできた友だちなのかもしれないし、正直幼少時の夕日はかっこよかったです。しかし「地球が欲しい」とは? 病気になって、この先自分は生きていけないから、ついでにみんな道連れにしてやるというのだったらわかるのだけれども、「病気も生きることのうちだ」という境地にまで達しているさみだれがそんな事を願うのは、正直いってよくわからない。「星を砕くこと」よりも、星を砕く力を持つことによって、夕日に対抗させること、が目的なのではないかとすら思ってしまいます。今のところ夕日はまださみだれと一緒に地球を砕く気満々ですが、う〜ん、たぶん最後の最後になったらそういうこともなくなると思うのですよ。だって根が正義の味方だから。人の役に立とうとする根っこがあるわけですから。

まあでも9巻だけ見ているとどうもシンプルに欲しいだけ、と言う気もするんですよね。そんなことはないでしょうが。それからなぜさみだれなのかということも気になります。今までずっと受け継がれてきて、今まで何度も地球は破壊されてしまってきたわけです。その中で今回、何がイレギュラーとなって闘いに終止符が打たれようとしているのかと言えば、「さみだれ」なのです。何がこんなに彼女を突き動かすのか、なぜそこまでして地球を自分の物にしたがるのか、よくわからない。

今までかたくなに主人を載せることを拒んできた馬がいました……。馬といえば走るのが速い、たまに肉になって出てくる、競馬場で走っている、と色々ありますが、やっぱり「人間を載せてこそ」馬なんだというイメージが強い。しかしこの惑星のさみだれに出てくる馬は全力でそれを否定します。

『ダンス 最終決戦への満ちくらい背に乗せてくれんのか 』
『南雲お前は良き友だ だが全力で断る』
『最後までガンコな奴め』
『お互い様だ』

人間が歩いている隣に馬がいるのに乗せないで、ずっと並列して歩いている姿には違和感があります。しかしうまにも自由意思がある以上、いやだというのならいやなのでしょう。僕も馬になったら美少女と美女以外は乗せたくないです(おい)。

しかしこのうまが、ついに人間を乗せるときがやってくるのです。今まで初登場時からずーーーっと引っ張ってきた、乗せない設定が、ついにここにきてひっくり返されたのです。しかも最高にかっこいい場面で!! 『最初で最後だ 南雲』『充分だ ありがとうダンス』この無駄のない会話が惑星のさみだれの真骨頂なのです! 二人の信頼感が、天元突破なのです!! 胸が熱くなるな……。

他にも色々、風巻さんの最期の能力が相棒の猫だったり、限界を超えてはなった召還した名前が「未来」だったり、ずっと裏切ってきた茜が最後の最後に自分の願いを「拒否」することに使ったり、ひたすら熱いの。惑星のさみだれは今最も熱い漫画なのです。

惑星のさみだれ 9 (ヤングキングコミックス)

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