基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ザ・ウォーカーを見たよ

いやいや、何にも期待せずにいったら思いがけず面白かったです。核戦争か何かで、「空がぴかっと光って」から30年後の世界を、一人の「とある一冊の本」を持った男、イーリイがひたすら西へ西へと歩き続けるお話です。道中、崩壊した世界の後の大変さ、水の摂取、食べ物の取得、安全な家の確保、そういった数々の難事に加え、本の力を狙う男達との戦いが、繰り広げられます。荒廃した世界、廃墟がめちゃくちゃ魅力的で、お話よりも「もっとこの世界を見せろ!!」と思ってしまったぐらいでした。でももちろん物語の方もとってもよかったです。

最初にみてみようか、と思ったのは「本」がキイになっているところにひかれたわけです。しかし「闘い」があるということで、「本とかどうでもよくてただただ男達が戦う暑苦しい映画なのではないか」と思っていたのですが、全然そんな事なかったです。お話は「本を西に運び、その道中敵が襲ってきたりする」というシンプルでありながらトリック、伏線が最後まで効いていてたぶんこれはほとんどの人はわからないのではないかと思います。もちろんわかるようなヒントは各所にあるんですけどね。

最近知ったのですが、世界崩壊後の退廃的な世界を撮った映画は「ディザスター映画」あるいは「ディストピア映画」というそうです。そういう、「ディザスター/ディストピア」への美学といったものが感じられるのが、この『ザ・ウォーカー』という映画でした。個人的に一番気に入ったのはまさにこの点です。ぼろぼろの服を着て、人を平気で殺したりレイプするような悪人が大量に出てきて、さらに文明なんか何一つ残っていない、荒廃した大地しかこの映画には出てこないにも関わらず、たまらなくそれが「美しい」のです。映像として。

また作中で印象的なセリフが、「世界が崩壊する前はどんな感じだったの?(うろ覚え)」と問う、女の人に対して、主人公のイーリイが「物がたくさん溢れていた。しかし大切な物が見えなくなっていた。今では争い合って手に入れるものを、捨てるように使っていた(適当)」というものです。世界崩壊後を描く作品、日常が災害によって崩壊してしまう作品というのは、そういう「現代人が忘れている大切さ」というのを、再確認させてくれるものなのだな今更ながらに思いました。