基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択

実践 行動経済学 / リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン - 誰が得するんだよこの書評でオススメされていたので読んだ。行動経済学という単語はよく耳にしていたけれど、何一つ知らなかったので入門編として。どうも、合理性によって生み出される結果ではなくて、人間の認知的な欠陥が与える結果を基準とした経済学のことを行動経済学というようです。

それにしても本書を読んだ感じでは、これは経済学ではなくてシステム構築論のようなものにしか見えないなぁ、と思った。第一部では、人間がいかに認知的な不備を抱えているかが執拗に書かれる。たとえばほとんどの人は自分は平均より能力が上だと思っているし、楽観主義的だ。また現状維持バイアスのような、全般的に現在の状況に固執する傾向を示したりもする。

他にも、社会心理学者ソロモン・アッシュが行った実験によると、簡単な視覚認知テスト(白いカードに描かれた線と同じ長さのものを、スクリーンに映しだされた三本の線の中から一つ選ぶというような)を個人で選ばせた場合にはほとんど間違えないが、同時にそのテストをやっている他のメンバーがみんな誤った解答をすると被験者は三回に一回以上の割合で誤った答えをしたと言う。

我々は容易に他人に影響される。多数派が常に正しいとは限らない(むしろ間違っていることも多い)のはこういった理由もあるんだろうなあと思った。要するにここまでで言っているのは、「人は思ったよりも合理的ではない」という単純な事実である。

本書が提案するのはそういった人間の認知不備に対してナッジ(注意や合図のために人の横腹を特にひじでやさしく押したり軽く突いたりすること)をかけることだそうだ。たとえばGmailで「添付」という単語を使っているのに送信した際に何もファイルが添付されていなかった場合「添付されてないが、大丈夫か?」と訊いてくる、そのようなシステムのことですね。

ちょっとしたナッジで、様々な効果が得ることが出来る。もちろん企業はこれを利益の追求に使う。手に取りやすいところに売りたい商品を置くのはもちろんだし、無料でお客をつっておきながら無料期間が終わったら自動的に課金に移行させたりする(これも言ってみればナッジだ)。グーグルの検索が行われる際のページランク、ページの並び順も読み手にとって有益性の高い順に並べられているが、これもナッジされた結果だ。

世界はナッジで満ちていて、この事を知らないと容易に騙されかねない。有効活用もできない。設計をする側としては、「どのようにして相手の認知不備を補助するか」を勉強する一冊として、設計されたものを受け取る側としては、「ナッジに騙されない為」の一冊として、行動経済学初心者には具体例が豊富な入門書として、面白い本だなと思いました

すげーどうでもいいですけど、表紙に書いてある顔がすげーうざかったです。なにこれー。行動経済学の本はもう少し読んでみるつもり。

実践 行動経済学

実践 行動経済学