基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

パニッシュメント

いやはや。

表紙にはかわいい女の子が二人いて、一人の男の子がその真ん中にいる、まあよくある三角関係物かと思いきや。どす黒い。逃げ場のなくなった人間が、制御不能でがんじがらめになってもうどうすればえーねん、っていう感じの、なんかどうしようもないようなジレンマ。主人公の父親は新興宗教の教祖であり、幼馴染の時話の母親はその宗教に傾倒し家庭に影を落とすまでにのめり込んでいる。そのことを主人公は話せずにいる。

うげえ、詰んでる、といいたくなる。お父さんが新興宗教の教祖って、嫌すぎでしょ。と言いたい。同じぐらい嫌なお父さんの職業を考えてみよう。うーむ。何があるだろうね。ヤクザとかかね……。この嫌さというのは基本的に、「周りに知られたくない」系統の嫌さである。もっとも主人公の場合はすでに離婚していて、表向きは関係ない風を装っているけれど。

そして、どんどんややこしくなっていく人間関係。僕は、クラス内の力関係みたいな話が本当に嫌いで、良くできたこの手の話を読んでいると大抵お腹が痛くなってくるんだけど……。しかしなぜそんなに嫌なのかな。好きな人もあまりいないと思うけれど。悪化した人間関係というのは、修復が難しいという点と、狭いクラスに押し込められた結果生じるヒエラルキーのようなものは、回避不能だっていう点がつらいと思う。

友達なんか作らずに、ほとんど一人で行動するっていうのは、大学以前だと結構難しいんですよね。周りからはイジメだーとか言われるし、そうでなくても「大勢で何かをやらなければならない」場面が多すぎる。自然、一人でいる人間は浮きまくってしまうわけで、これが嫌ならばみんな何かしら無理をして強制的に振り分けられたクラス内で人間関係を構築しなければならない。

その辺の書き方はとってもうまかったです。なんというかあれなんだよね。積極的に誰かを苛めたい、極端な悪い奴がいるのでもなく、狭いクラス内で問題が起こってしまうのが「どうしようもないことなんだ」っていう書き方が、僕的にしっくりくるだけなのかもしれないけど、そういう風に思える時点でやっぱりうまい気がする。みんな普通に一生懸命生活しているだけなのに──って。そう、みんな普通に一生懸命にやっているだけなのに、理不尽な不幸が身に降りかかってきたときに、宗教や物語を必要とするわけで。

最後のタメの解放はひどいな、というかあんまり好きではないけれど、一つの結論でしょう。宗教というと特別な物に感じられるけれど、要するに何かを信じているっていうだけですからね。科学を信じているのだって宗教ですし、物語に影響を受けるのもやっぱり一つの宗教でしかありません。この小説もまた、一つの聖書であり、作家は一人の教祖であると言えます。

パニッシュメント (ガガガ文庫)

パニッシュメント (ガガガ文庫)