基本読書

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単純な脳、複雑な「私」

タイトルが結構気になる感じ。「え、脳って複雑じゃないの?」と。

脳……というよりかはより身近な「自分」に対しての驚きの一冊。「手を動かそう」と思う0.5秒〜1秒前くらいには脳は手を「動かそう」と準備を始めているといった事を観測した実験がある。この実験は「自由意思はあるのか?」「身体の電気的な信号に意識が沿うように後付けされているのではないか?」と自由意思の有無を問いかける問題としてあっという間に広まった。

本書はこの問題のその先に教えてくれた。なんというか、非常に納得できる回答が与えられたと思った。この点に関しては是非読んでもらいたいものだが、そのほかの部分に関しても豊富な脳についての実験事例と共に紹介されていて、とてもアメリカのノンフィクション的なスタイルだと思う。高校での講義を元に本書が作られているが、本書に出てくる高校生の質問を読んでいると明らかに僕より頭が良い(笑)

読めばわかるが、脳というのは非常にシンプルなルールを組み合わせた、単純な作りになっているようだ。しかしそのようなシンプルなルールを組み合わせたものが、複雑な「私」を表現する。わかりやすいモデルに、アリが挙げられる。アリがどのようにして一匹では運びきれないエサを運ぶのかご存知だろうか?

当然仲間を動員するわけだけど、エサを見つけたありは巣に帰る際にフェロモンを出しながら帰る。そうするとそのフェロモンを追って次のアリが出ていく。エサがある限りフェロモンが出続け、強くなるので、自然と「適切なアリの動員量」が決定される。

アリの中には適切にフェロモンを追えないちょっとしたおバカさんもいて、迷子になってしまうのだが結果的にそれが近道になる可能性がある。実験ではエサの居場所を完全に間違えることなく終えるアリだけで構成された集団よりも、間違えてしまうお馬鹿なアリがいる集団の方が「エサに効率よく」アクセスすることができろそうです。

「エサを見つけたらフェロモンを出しながら巣に戻る」「フェロモンが出てたらそれをおっかけてく」「たまに間違えるやつがいる」究極的にはこの3つのシンプルなルールに従ってアリはエサの伝達を効率よく行っているのです。

アリの説明になってしまったが人間の脳に関してもこれが起こっている。「単純なルール」「効率化を促すノイズ」アリと同じように人間の「私」を生み出しているのも究極的にはこの二つだけだ。脳は全体の臓器の中で20%ものエネルギーを喰らう多飯ぐらいだが、カロリーに換算すると一日に使用するのはたったの400キロカロリー、その驚異的な効率を生み出しているのが今書いた二つなのだ。

人間の脳が400キロカロリーで動いてるってめちゃくちゃ凄くないですか? なんで400キロカロリーで動かせるの!? って考えてくと、脳ってめちゃくちゃ面白いのだ。それはもう、単純だからこそ面白いといえる。人間にとって最後に研究すべき、RP的にいえばラスボス的存在は宇宙と、そして人間の脳なのだと僕は本書を読んでいて思った。

鳥がいなかったら人間は空を飛ぼうと考えただろうか? 空を飛べるなんて考えもしなかったかもしれない。人間は昆虫や動物の身体の機構から非常に多くのことを学んだ。人間は自分自身の「脳」からも学んでいる。自分自身から自分が学んでいるのだ。これも凄いことだ。人間にしか出来ない。

脳を研究して人間は何をするんだろう? 脳を使って脳を研究するんだからそこにはなにがしかの矛盾がある。矛盾って、僕はとても楽しいものだと思う。何かしら問題を突き詰めて考えていくと必ずそこには矛盾が起こるのだ。

まとめられないのだけど、本書はとても面白かったです。ぜひおすすめしたい。

単純な脳、複雑な「私」

単純な脳、複雑な「私」