基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ふむふむ―おしえて、お仕事!

小説家の三浦しをん先生が、「特殊技能を活かして仕事をしている女性」に的を絞ってインタビューしていく一冊。三浦しをん先生は小説家だけあって、人間への読解力が強い、と読んでいると感じますね。短時間で相手のツボをつかんで、魅力を最大限引き出している。人数が多いのでひとりあたりの分量はかなり少ないのですが、それでもすごく読み応えがあるのはしをんさんの、本質に切り込んでいく能力の高さのたまものでしょう

目次

ふむふむしたい まえがきにかえて
靴職人 中村民
ビール職人 真野由利香
染織家 清水繭子
活版技師 大石薫
女流義太夫三味線 鶴澤寛也
漫画アシスタント 萩原優子
フラワーデザイナー 田中真紀代
コーディネーター オカマイ
動物園飼育係 高橋誠子
大学研究員 中谷友紀
フィギュア企画開発 澤山みを
現場監督 亀田真加
ウエイトリフティング選手 松本萌波
お土産屋 小松安友子/コーカン智子
編集者 国田昌子
ふむふむしたら あとがきにかえて

目次を見ればわかりますが、まあ偏りがある(笑)
当然のごとく各項目それぞれ完結しておりますので、自分の気になる職業の方へのインタビューだけを読んでもいいかも。

面白いのは、やっぱり「今まで想像もしなかった職業」のお話が聞けること。たとえば靴職人の中村さんに、「(靴を作る)工程で一番気持ちいいときって、どの瞬間ですか?」としをん先生が尋ねるのですが、その解答とかへえ〜〜! って驚きました。

中村 一枚の大きな革を、たとえば牛革は半身で売られますから、牛半頭ぶんの革から、靴の各部分の形に型抜きしていきます。ここで無駄なく、きれいに型が取れたときが快感ですね。

そんな快感があるのか(笑)

しかし世の中には本当に多くの職業があるものである。職業に現場監督とだけ書かれた亀田真加さんも、「なんの現場監督じゃい」と思って読んだらなんと「トンネルを掘る現場」の監督だった。トンネル堀の現場監督かよ! トンネル掘りの現場で働く人は総計で50、60人ぐらいだったという(平均的にそうなのかは知らない)。地下鉄が通るようなトンネルを掘るというのにその人数は少ないように思えるが、機械化が進んでいてその人数でいけるらしい。

トンネルに話がそれてしまったけれど、仕事の多様性はやはり面白い。最初は人間がそれぞれの組織の中で役割なんて数種類ぐらいしかなかっただろうが、人が増えて技術が産まれてくるのとかなんやかやで今ではどんどん細かく細分化されている。文明の発展とはある意味仕事をただひたすら分業化することによって成り立ってきたのかもしれない。

高度に仕事が分業化されてしまった社会では自分の担当しているひどく細かいところ以外の仕事はすぐに未知の領域だ。もっとも身近な謎といったら言い過ぎかもしれないが、そのような「身近な神秘」みたいなものが、本書からは感じ取れる。

「仕事」そのものへの興味がわいてくる良い一冊でした。さらっと読めるしねん。

ふむふむ―おしえて、お仕事!

ふむふむ―おしえて、お仕事!