基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

3・11の未来――日本・SF・創造力

執筆陣をみていただければわかると思うのだが、
これでもかというぐらい豪華。
序文の小松左京氏はこれが最後に発表された文章であるし
著名なSF作家も揃っている。
押井守までいる。
内容もがちがちの評論と、
SF作家、物語作成者ならではの視点が
ちょうどいい塩梅に入っていて楽しい。
テーマはSFであるので、SFの素晴らしさを歌い上げている。
SFに興味がないと厳しいと思うが、興味があるなら楽しめるはずだ。

少し気持が悪いなと思ってしまうのは、SF作家やSF好きばかりが集まっているためにSFが崇高な物として語られすぎている点だった。たとえば「SFの役割」といったものが多く語られる。震災に対してSFは何が出来るのか。SF関係者たちだからこそSFに大きな意味を持たせたいのはわかるが、「役割」に執着しすぎると本道を見失うんじゃなかろうか。もちろん、SFに役割がないと言っているわけじゃない。SFは結果的に多くの役割を生み出すだろうがそんなものは無理やりに考えだすようなもんじゃないだろうと思っただけだ(これもだいぶおかしい言い方だな……。うまく書けない。)。

それを含めても良い本だった。
SF Prologue Wave - 『3・11の未来 日本・SF・創造力』笠井潔 巽孝之監修 海老原豊 藤田直哉編

■はじめに
小松左京「序文――3.11以降の未来へ」
目次/趣旨文・編集一同

■第一部 SFから3.11への応答責任
笠井潔「3.11とゴジラ/大和/原子力
【鼎談】笠井潔巽孝之山田正紀「3.11とSF的想像力」
豊田有恒原発災害と宇宙戦艦ヤマト
スーザン・ネイピア「津波の時代のポニョ――宮崎駿監督に問う」

■第二部 科学のことば、SFのことば
瀬名秀明「SFの無責任さについて――『311とSF』論に思う」
【座談会】谷甲州森下一仁小谷真理・石和義之「小松左京の射程――『日本沈没 第二部』をめぐって」
八代嘉美「『血も涙もない』ことの優しさ」
長谷敏司「3.11後の科学とことばとSF」
田中秀臣「物語というメビウスの環」
仲正昌樹「SFは冷酷である」
海老原豊「一九七三年/二〇一一年のSF的想像力」

■第三部 SFが体験した3.11
新井素子東日本大震災について」
押井守「あえて、十字架を背負う」
野尻抱介原発事故、ネットの混沌とロバストな文明」
大原まり子「3.11以降の未来への手紙」
クリストファー・ボルトン「流れ込む、分裂する言葉――3.11以降の安部公房

■第四部 3.11以降の未来へ
桜坂洋「フロム・ゼロ・トゥ・201X」
新城カズマ「3.11の裡に(おいて)SFを読むということ」
鼎元亨「3.11後の来るべき日本」
藤田直哉「無意味という事」

■結語――またはゼロ年代の終わりに
巽孝之

■資料
ブックガイド40作