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エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う

素人にもわかりやすくエネルギーとはなんなのかといったことを一から教えてもらえるので、興味があるけど知識はない……という人にオススメしたい一冊。

原発があんなことになってしまって、これから考えるべきことはよりどりみどりだがまずはエネルギー問題をなんとかしなければならないだろう。原発に頼った方法は日本ではもうとることができないのだから、別の方法でエネルギーを生み出し生活していかなければならない。

エネルギー問題は太陽光が〜だのこれから先の科学の発展でエネルギーうっはうは〜だの原発がないと電気料金は上がるだの、立場も思想も知識もぐちゃぐちゃな人たちからの提言で溢れており正直よくわからなかった。

本書ではまずわかりやすく現状と現状の問題点を整理してくれる。
そこまででも非常に面白かったがその後の、「これから日本はどこを目指していくべきか」という具体的な提案も非常に筋が通っているように読める。

まずは現状と現状の問題点のまとめから少し整理していこう。
原子力がダメだとしたら、代わりにどんなエネルギー源を重点的に使うのか」がこれから先の問題になっていくと思うが、どんなエネルギー源でも大量に使用するとそれぞれ違ったリスクが発生してくる。

原発はCO2をほとんど出さず安定的で低コストだが放射能汚染リスクが高い。これをゼロに近づけようとするかもしくはリスクが顕在化した場合には著しくコストが嵩む。またCO2をほとんど出さないとはいうがその製造過程で多くのCO2を出す。

再生可能エネルギー太陽光発電など)はCO2を殆ど出さないが現在の人口を支えるためのエネルギーを生産することはほとんど不可能であることが本書では説明される。現在太陽光発電などで喧伝されている最大出力は、本当に瞬間的な最大出力である。実際は曇ったりするとすぐ使えなくなるので日本ではカタログ性能上の11〜12%にしかならないという。ひでえ詐欺だな。

ちなみに石油は汎用さ量エネルギー密度などほとんどすべてに対して高評価だが環境への負荷が厳しい。しかし世間一般で言われている「石油はあと○○年でなくなる」というのは恐らく間違いらしい。少なめに見積もっても現状のまま推移すれば1〜2世紀は余裕で持つようだ。まあ、現状のまま推移ってことはありえないわけだけど。

どれも一長一短でリスクがそれぞれある状況で取るべき選択肢はひとつだ。それらを複合的に組み合わせてリスクの最小化を目指すしかない。原発が大規模に導入されたときにも「原発が大規模に導入されることによって他のエネルギー手段が途絶えることがまずい」と反論されていたことがあった。

まさにその問題に直面している今、同じミスを繰り返さないためにも「ひとつがだめになっても持ちこたえられるエネルギー補給手段」が必要なのである。

同時に目指していかなければいけないのは「エネルギーを出来るだけ使わない生活」である。今まで語られてきたのは「どれだけ節電してアウトプットを減らすか」がテーマだったが、「エネルギーをいかにして効率よく生み出すか」については語られなかったと著者はいう。

たとえば、火力発電所の平均発電効率は現在4割弱なのだ。つまり化石燃料が本来持っているエネルギーの6割は電気にならずにどっかに消えているのである。もちろん効率100%など不可能なのだが、そこで現れるのが「天然ガス」である。

こいつは素晴らしいことに発電効率が(つまり電気に変換できる割合が)非常に高く石炭火力発電所天然ガス発電所に切り替えることで発電効率は5割も上昇する。CO2排出量も石油より3割少なく石炭より5割少ない。しかも資源は豊富にある。

日本ではあまりメジャーではないが(ぼくもまったくしらなんだ)先進国諸国ではだいたいエネルギーシェアが25〜50%以上とスタンダードなエネルギー源になっているようである(日本では15%)

天然ガスは日本でとることはできないが、原発の問題で痛感したようにがあるように自国でエネルギーをすべてまかなうような考え方はすべきではない。地理的な分散化、さらにはエネルギー源の分散化によるリスクの低減が今後の鍵になっていくだろうという著者の主張には大きく頷いた。

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)