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ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方

ソーシャルファイナンスという言葉を初めて聞いたのですけど、数年前からあまり状況は変わってないみたいです。ググって最初に出てきてわかりやす! と思ったら、2008年の記事だった。本書の内容の要約みたいになっている。⇒日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか? | isologue

上を読めばもはや僕の方から説明することはないのですが、簡単にご説明します。ソーシャルファイナンスとは人と人との関係・つながりを活用した資金調達の仕組みのことです。本書ではP2Pファイナンス(SNS上で成立するような浅く広い人間関係を用いたファイナンス)やクラウドファンディング(大勢の人々からお金を集める手法のこと)を中心とした現在行われているやり方と未来を簡単に書いています。

前半部はマイクロファイナンスのやり方で、ソーシャルファイナンスという意味で言えばあまり絡んでこないのだけどよくまとまっていて面白いです。特に第一部は基礎的な金融の話をしてくれるので僕のような素人でもわかりやすい。

たとえばソーシャルファイナンスがなぜ革命なのかといったことも金融の基本的な知識がなければよくわかりません。なぜ革命なのかといえば、それが金融の資本コストを下げるからです。資本コストとは資金調達にかかるコストのことで、たとえば借りるならば金利がかかり、株式の場合は投資家から要求されるリターンが資金調達側にとっての資本コストになります。

資本コストは3つの対価で決まります。1つが「待つこと」2つめが「リスク」3つめが「情報取得」です。待つことは当然、お金を1000万とか貸せばその間使えないので今日の消費を未来に持ち越さなければいけません。その価値の差が対価になります。

リスクはシンプルに将来への不確実性で、返ってこない可能性があることからそれがそのまま対価になります。最後に、相手がよく知っている相手なら情報を得る必要もないかもしれませんが、見ず知らずの他人ならば相手が信頼出来るかどうか、ちゃんとお金を返してくれそうかどうかの情報を取得するためのコストがかかります。

待つこと、リスク、情報取得、この3つが合わさったものを資本コストと呼びます。当然これらは全部下がったほうが、貸す方も借りる方も嬉しいわけです。さて、ここで話が元に戻りますけど、ソーシャルファイナンスが革命なのはこの資本コストをそれぞれ3つの観点から下げることができる点なのです。

じゃあ具体的にどういうことがソーシャルファイナンスなのか。最初に書いたP2Pファイナンスやクラウドファンディグがそれで、前者はPeer to Peerつまり個人対個人の資金融通の仕組み。後者は大勢から集めることからクラウドファンディングという。だから二つはほとんど同じ意味だ。今やネット社会になり人の関係性は浅く広く多くが基本になったが、その傾向を利用してより多くの人からお金を集められるようになった。

つまり電子ベースの契約・決済システム、またはソーシャルネットワークにより等で情報取得のコストが下がる。さらにソーシャルの特徴として上げられているのが、「誰かと繋がっていること。誰かの役に立っていること。自分が応援したい人を支援すること」によって必要とする金銭リターンが少なくても(たとえ元本が保証されなくても)満足度が一定に保たれる可能性があることだ。

これを狙うことで当然待つことの対価も、リスクへの対価も下がることになる。「んなもんソーシャル時代からあったじゃん。寄付なんてその最たるものでしょ? 何を今更革命なんていってんの?」と読んでいた時に僕は思ったのだけど、インターネットにより「潜在的な貸し手」に広くアピールできるようになったのは大きいのかなと思い直した。ただ、何より重要なのはネットで簡単に決済できるプラットフォームを作ることだろう。

結局いくらP2Pファイナンスをやる土壌が整っていたとしても、わざわざやるだけのリターンがなければ誰もやらないのだ。銀行もあるしお金を借りる手段なんて他にいくらでもあるんだから。利点としてすぐに思いつくのは金利が低くなること・業務遂行の手間を限りなく少なくすることによってコストを下げること・うまいこと人が人の役に立ちたいという思いをシステムに組み込んで利用して資本コストを下げること。

などなど。それらをうまく組み込んだプラットフォームを作らなければいけないだろう。ただ今日本でやっているソーシャルファイナンス提供業者は日本の金融規制にはばまれてけっこう面倒臭いことを強いられているようだ。日本では個人が反復継続して誰かにお金を貸すことが禁じられているので、ウェブサイトを使って出会う人に継続的にお金を貸すことは違法になってしまう可能性があるのだ。

だからいったんプラットフォーム事業者は、反復継続的にお金を貸すことができる事業登録を行い、そこに個人から出資という形でお金を集めて借り手に届く。ただ出資もまた面倒で、匿名組合における出資の持分は有価証券に当たるため、出資を募るのにもまた登録が必要になる。そこで反復継続的にお金を貸すことができる会社とはまた別の関連会社を立ち上げ、経由させて本体にお金をわたし、そこから借り手にお金が届くことになる。

やけにめんどくさい……とも思うが、まあこのあたりは一度システムをつくってしまえば後は意識せずとも遂行できる部分だろう。これからはより理想的で人の共感、同意を得られる事業こそが、コストを人よりも少なくお金を集めることができるようになるだろう。そして円滑な資産の移動・再配分は挑戦を促し社会を活性化させる。まだまだ小さい火種だが、大きくなった時は見ものだ。なかなか大きくならないけど……(笑)

ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方 (生きる技術! 叢書)

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