基本読書

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非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門:シンプル・イズ・ベストとはこういう本のことだなあ

文章入門のたぐいは数あれど、本書ほど「ひとつの法則」のことしか言っていない文章入門はないだろう。多くの文章入門はやれ添削しろだの文章は短く区切れだのやたらと色んな規則を並べ立てまもらせることで名文がかけると信じこませようとするが、人間が一度に把握できる情報量はそんなに多くない。せいぜい4つだという認知科学上の発見もある。

本書で訴えるのはたったひとつである。それが何かといえば「自分の考えたことを文章にして、相手に伝えるにはどうしたらいいのか?」という問いに対する答としての、「そのためには、クイズ文という、『問題・結論・理由』という形式に従った文章を書けばいい。なぜなら、この形式は、読者と一つの問題意識を共有し、かつ、読者を一つの結論に導くためのものだからだ」。

よく意味がわからないかもしれませんがまあ当然です。わかるんだったらこの本を読む必要はない。たとえば典型的な例を僕が今即興でつくってみましょう。

もうすぐTwitterの呟き回数が1万回を突破する。嬉しい、という気持ちはまったくなく、暗澹たる気持ちになった。最近よく自分の未来の時間について考える。やりたいこと、できることはいっぱいあるはずなのに、余計なことに時間をとられているとそれだけで人生終わってしまう。

果たして過度なTwitter閲覧・書き込み(一日中ヒマさえあれば見てしまう・書き込んでしまう)は日常生活を贈る際に有害だろうか。

もちろん、Twitterを使うことで得られた人脈、楽しさ、つながりはかけがえのないものだ。しかし良い面もあるが、悪い面も大きいと僕は考える。

なぜならば、Twitterのようなシステムは人間の「情報を探索し続けようとする」本能を刺激し、必要以上にのめり込みやすくさせる仕組みを持っているからだ。気がつくとTwitterのタイムラインばかり覗いている。受信ボックスにメッセージがあるのをみたら、それを無視できない。こういったことはすべてドーパミンのなせる業だ。

ドーパミンは脳内のさまざまな場所でつくられており、思考や運動、睡眠、気分、注意、動機、探索、報酬など様々な部分に影響を与える。最近の研究によればドーパミンは何かを欲したりする動機・欲望などのレベルを全体的に上昇させる効果があることがわかってきた。抽象的な概念や、アイデアについても好奇心旺盛になり、情報探究心をあおる。

脳の画像解析による研究では、報酬を得たときよりも報酬を期待しているときのほうが脳の受ける刺激が大きい。また脳の活動もさかんになることがわかっている。また予測できない出来事がドーパミンの刺激になることもわかっている。メールやTwitterなどはまさにその典型だ。

そしてドーパミンシステムは、情報が少量ずつもたされるときに、もっとも強く活性化される。140文字のツイートが、継続的に少量ずつ、しかも予測不能な形でもたらされるときに人は自分の意志とは無関係にドーパミンループにハマりこみ、探索はとまらなくなり、貴重な時間は脳の終わりのない欲望を満足させるために費やされる

このような点を考えれば、Twitterの恐ろしい一面が伝わっただろうか。もちろん自制できればいい。ただ自制できない部分があり、多くの人がそれに無自覚であることが、僕にはたまらなく恐ろしく思えるのである。

①問題に当たる部分
クイズ文では最初に「〜か」という問題の部分が考える契機になります。クエスチョンマークがつくと、自然と脳が回転し、答を探し始めます。ふたりでいるときに「ああ、お腹が減った」とつぶやいても何も返されないかもしれませんけど、「何を食べようか」といえばほぼ間違いなく考えが働いて返答がもらえます。

上で僕が作った例文(思った以上にノリノリで書いてしまった)で言えば、『果たして過度なTwitter閲覧・書き込み(一日中ヒマさえあれば見てしまう・書き込んでしまう)は日常生活を贈る際に有害だろうか。』の部分が問題にあたる部分です。非常にわかりやすく〜か。で終わっています。

②結論に当たる部分
そしてそのすぐ後に着ている『もちろん、Twitterを使うことで得られた人脈、楽しさ、つながりはかけがえのないものだ。しかし良い面もあるが、悪い面も大きいと僕は考える。』ここ。クイズ文では、基本的に明快な一つの結論を示すことを推奨している。

ここでちょっと注意が必要なのは、本書が目指している文章は「相手に自分の考えを明確に誤解なく伝える」ものであって、「いや、これ主観だし」という「日記文」とは異なるということです。説得力のあるぶ文章とは、まったく読者に反論を思いつかせないものではなくいくつもの反論を思いつかせるものです。反論が出来るように書かれた文章が、クイズ文ともいえるでしょう。

日記文は基本的に「事実」の後に「自分の感想」がくっつくもので、たとえばうなぎを今日食べた。ちょーげろまずーみたいなの。完全に主観的な文章なので反論しようがありません。本書は別に日記分を馬鹿にしているわけではなく、そちらを目指すものではないのです。だから基本的に結論は明確に一つです。

③理由に当たる部分
結論の後全部理由です。最後だけおさらい的に結論をもう一度述べてます。ちなみにここの文章は『インタフェースデザインの心理学 』の中にあるひとつの章を土台に書きました。まあ、基本的には結論にいたった道筋、理由を明かします。理由は肝の部分で、ここがしょぼいと論全体が微妙になります。①理由が結論へ論理的につながらないもの②理由の範囲が不明確なもの③理由が感想または推測にとどまるもの④理由を整理せずに列挙するもの などが本書では「ダメな理由」としてあげられています。さて、僕のやつはうまくできているだろうか……

まあここまででだいたい概略というか触り的なところが伝わったのじゃないかと思います。本書を「クイズ文」的にみてみると、問題は「自分の考えたことを文章にして、相手に伝えるにはどうしたらいいのか?」で結論は「そのためには、クイズ文という、『問題・結論・理由』という形式に従った文章を書けばいい。なぜなら、この形式は、読者と一つの問題意識を共有し、かつ、読者を一つの結論に導くためのものだからだ」そして理由が本論、ということになるでしょう。

何より本書が興味深く面白く読めたのが、この書き方入門の良さを物語っているよなあと思うのでした。