基本読書

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ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

いつもだるいだるいとブログで書いている著者であることを知っているのでこの本も途中でだるくなって文が突然終わりを告げるのではないかと期待して読み始めたけどそんなことはなかった。なんか普通に構成もしっかりしていて、価値ある本にしようと感じられるちゃんとした本だった。これがいつもだるいだるい言っている人間がやることなのか。

副題にインターネット活用法と書いてあるがまあ別に大したことは書いてない。歩き方とあるからかどうか、なんかニートの保険とかの事務的な話もあって、そういうところは明らかにだるそう(それにそういうのって別に誰が書いても内容変わらんしね)でつまらない。なのでそういう「僕もニートになってだらだら生活したいからマニュアル本にしよう」という本ではない。そんな勘違いする人もいそうにないが。

ニートにはどうも二種類いるようだとこれを読んでいて思った。著者のphaさんのように、社会で働くよりも自分の好きな事をして毎日過ごそうという積極的かつ計画的ニート。または単純に不可抗力でニートを選ばざるを得なくなった消極的かつ不可抗力ニートだ。phaさんはこういう生き方しか出来なかったとはいうが、一度は就職しニートでも生きていけるという計画を立て立派に退職している以上、計画的ニートといっていいだろう。

で、本書は前者についてのニート本なのだ。ニートという言葉に固執するとよくわからなくなる。「働かずに生きてもいいんじゃないか?」という価値観の提示だ。僕自身はそんなことは当たり前だと思っているけどそれが当たり前じゃない人もいるんだろう。なんで働くのかといえば生きていく(自分の求める生活をおくる)ためで、別に働かなくても生きていけるんだったら働く必要がない。それに何より僕らが仕事をするのは最終的に働かなくてもいい社会を作るためだ。

仕事というのはしょせん生きていくための手段のひとつ、ツールでしかない。使いやすいツールもあれば使いにくいツールもある。費用対効果でツールを選ぶか、そもそも必要ないんだったらいらないんだ。だいたい現代だって多くの人が将来はニートである。でもそれは長年不自由を我慢して受け入れて、引換に将来の自由を得るという立派な計画的ニートだ。ようは人によって戦略が違うだけに過ぎないと僕は思う。

phaさんが送っている生活は「未来は何も考えないけどとりあえず今不自由を受け入れたくないからそれに見合った生活をおくる」ということで、まあ大抵の人は受け入れがたい選択だろう。未来を考えないというのはなかなか豪胆である。幸いにもちゃんと毎日同じ時間に起きてせっせと出勤して別に仕事も嫌じゃない僕は未来の事を考えず収入もほとんどない彼のような生活をおくりたいと思わないが、憧れる人もいるんだろうなあ。

僕が考える幸せにはphaさんが必要としている以上の金がかかる。そのお金を稼ぐためにも働くし、やってみたいこともいろいろあるのでその為にも働く。仕事はツールだから「自分の人生において何を目的とするのか」によって変えていかなければならない。でもそういう「仕事はしょせんその程度でしか無い」っていう価値観の提示が本書で示しているものだ。

「仕事をしていることは別に偉いことでも何でもない」という価値観の提示についてだらだら書いてきたけれど、元々そういう価値観を持っていた僕には関係がない。面白かったのはphaさんが日常をどう過ごしているのかというところで、なんかだらだらとしていて楽しそうだ。適当に図書館から借りてきた本を読んで、好きな時間に起きて、シェアハウスの仲間とだらだらゲームしたりしながら過ごしている。

だいたい僕も一人でいるのが好きで大学生活の4年間はほとんど誰ともかかわらずに毎日本を読んで文章を書いてのループで何も悩むことなく楽しく過ごしていたから共感することが多かった。しかもいまは似非プログラムをしてなんか作ったりして遊んでいるからやっていることはだいたい同じだ。たぶん一人で過ごすのがまったく苦ではない人間は積極的ニートになってもうまくやっていけるんだろう。

「働く」ということが人間にとって「当たり前だ」と思っている人に読んでもらいたいがそういう人はきっとこの本を読んでもあまりいい気持ちにならないだろうと思うのでとくにオススメはしません。

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法