基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ハンガー・ゲーム(小説だよ)

最近iPhoneのBOOKWALKERというアプリで電子書籍を適当に落としながら、適当に読んでいるんですけど『ハンガー・ゲーム』はなかなかおもしろかったので感想を書いておきます。僕は基本的に本には線を引きまくる人なので、今のところあまり電子書籍でガッツリと組み合って読みたい本を読もうとは思わないんですけど、暇つぶしに面白かろうがつまらなかろうがどっちでもいいみたいな楽な気持ちで読む時には、iPhone読書は最高です。

内容もまあ、そんな感じ。あらすじは下記。まあ要するにファンタジー版バトルロワイヤルですな。

首都キャピトルが12の地区を支配する国、パネム。毎年、12の地区からは少年少女が1人ずつ「贄」として選出され、最後の1人になるまで殺し合う「ハンガー・ゲーム」が行われる。反乱を抑えるための「見せしめ」だ。16歳のカットニスは、不運にも選ばれてしまった最愛の妹のために、出場を志願する。そして、命をかけた究極のサバイバル・ゲームが幕を開ける―。

バトルロワイヤルは誰もが知っているように、中学生が島に送り込まれて殺し合いをさせられるというなんとも無残な物語なのですが、未来ある若者が殺し合い、生き残りをかけて感動的なドラマを生み出すのはとてもおもしろかったです。バトルロワイヤル以外にも、人間がお互いに殺し合いをさせられる、あるいは生き死にをかけた状況に叩き落されるというのは色々な物語で繰り返し現れていて、やはり人はそういう暗い欲望も持っているものなのだなとおもいます。

面白さっていうのは色々な側面があると思いますけど、ひとつの面は間違いなく「予想外のことが起こること」なわけです。笑いの実験で、目隠しをした被験者に一個また一個と金属を持たせ、それを徐々に重たくしていくものがあります。そしてもう持てない、とそれぐらいの状況になった時に、軽いものをポン、ともたせると反射的に笑うそうです。予想外な出来事が笑いに繋がるんですね。

中学生ぐらいの若い子どもがお互いに殺しあうというのは普段は間違いなく「想像しない」たぐいの状況です。そんなものを想像しているようなやつがいたら、結構危ないですからね。でもだからこそ物語的には狙い目なのかもしれません。みんな意識的に想像することを避けてしまうようなところこそ、物語的には「予想外の宝庫」です。何を書いても誰も想像したことがない予想外の物語になる。

とはいってもすでに『バトルロワイヤル』があるように、この手の物語も繰り返し語られます。が、本作が新しいのはやはり「ファンタジーである」という点でしょうね。この手のデス・ゲームでファンタジーな世界を舞台にした作品が他にあるのか知らないのですが、僕は初めて読みました。で、読む前にあまり期待せずに読もうと思ったのは「若者の殺し合いをさせる」というのは僕達の現実と地続きであるからこそ、ぶっ壊す快感がうまれて面白いのではないかなと思ってたんですよね。

「殺し合いなんて起きるはずがない今此の現実」と地続きにあるからこそ「ありえない」。でもファンタジーだったら、あらすじに引用したように「最初からそういう世界でしたー」ということにしてしまえば、何でもありです。だからこそ「デス・ゲームの面白さがなくなってしまうのではないか」と思ったんですけど、ファンタジーだからこそ出来る「大衆とデス・ゲームとの関わり」を書いていて、そのディティールが面白かったです。

たとえばこのハンガー・ゲームは反乱を抑えるための力を誇示する見せしめ(そんなことしたら余計反乱を助長するような気がするんだけど、そういう社会・政治的なツッコミは本作にしてはいけない)として行われる。わけですが、当然地区の人たちは毎回戦々恐々として、選ばれたらまず死ぬわけで面白いはずがない。そこで地区ごとに体制への怒りというか、反乱までには至らない不満が描かれたりする。

バトルロワイヤルも現実とかなり近いとはいえ、極東の大東亜帝国として全体主義に陥った国家が主体としてやっているというほとんどファンタジーな設定なので、大衆が書かれてもよさそうだったんですけど、結局ほとんど書かれずに終わるんですよね。2で書かれるんだけど、微妙。まあバトルロワイヤルはいいや。

あと面白かったのがハンガー・ゲームはもう完全に見世物としてのゲームなので、実際にゲームが始まる前に「お勉強の時間」がある。罠の作り方を習えたり、薬の見分け方を教えてもらったり。自分でどのスキルを高めるかを選択していくんだけど、スキルの振り分けというゲーム的な面白さがある(ゲームなんだけどさ)。

あと選手には金持ちのスポンサーがついて、ゲーム中に燃える見せ場を作ったり、友情を見せたりといった物語的に面白いことをするとスポンサーから試合を有利に運ぶ物資が試合中にもらえたりする。だから「ハンガー・ゲームという物語の中でみんなが必死に物語を盛り上げようとする」メタ的な面白さがある。これもまた大衆的なゲームとしたところの面白さだよね。

というわけでいろいろ読みどころの多い物語なんだけど、この手のものには最重要とも言えるライバルの存在がすっごく微妙だったり割とあっさり気味に各場面が流されちゃったりして若干物足りなかったりもする。まだハンガー・ゲームへの反乱も書かれてないしね。でも三部作らしいので、その辺は続編に期待。気楽に読めておもしろいよん。

ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)

ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)