基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

マーク チャンギージー『ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ』

視覚について興味深い研究結果がわかりやすく解説されていて凄い。たとえば「色覚はなぜ残ったのか」という疑問に対する仮説はこれまでいくつも出ていたようだが、本書で紹介されるのは「人間の肌の色の変化を見極めるため」ではないかという仮説だ。他には食べられる若葉を見つけるためという説もあるが、こちらは霊長類全体で見た時に食べるものが異なるのに色覚の違いがほとんどないのはなぜかという疑問がある。

自分の匂いが気にならないように僕たちは通常体温も匂いも色も「自分」を基準にして、そこから外れたものとを異常値として検知するようになっているが、そう考えると顔色の変化を見、意志の伝達を早めるのはありえそうな気がしてくる。「顔が青くなった」や「顔が赤くなった」なんていう表現も使うし、顔色によって人の状況を判断することは昔から行われてきた。

ひときわ面白かったのは文字の成り立ちについての章だ。今あるアルファベットや漢字といった文字は「目」の為に表記を進化させたのだという。

あなたが今読んでいる文字の形は目が情報を獲得しやすい形として成立している。どういうことかというと、文字は自然の形をとる。部族社会の風景だろうが、ナショナルジオグラフィックに載っている雑多な画像だろうが、商業団地の画像だろうが、そこには繰り返し現れる記号があり、文字は記号として配置し直すと傾向としてよく似ている。

そりゃ、川とかは川の形を模倣しているからええかもしれんけどAとかBとかはどないやねんとツッコミたくなるが、まさにそのAとかBとかも自然の中(せいかくには自然の構成物の一部。たとえば四角形の中にはLがいっぱいある。)に見られるのだ。もっと詳細な科学的な分析も当然ながらあるので読んでもらえればと思う。

言語学といえば発話体型やどんな文法があるかといったところに注意がいく。だからか、溢れかえっている書かれた文字の「視覚的な側面」についての研究は僕も初めて読んだし、その分新鮮で興味深い内容だ。あながたこの文章を読めるのも、視覚的に文字が受け入れやすい形をしているからこそ、もともと文字を読むためではなかった脳が意味をすんなりと理解できるようになっているおかげだといえるのだから。

一方でウザったい盛り上げ方(4つの凄い視覚能力! といって透視や霊読、テレパシーに未来予知になぞらえて視覚能力を解説していくのだが、そんなアホっぽいたとえは必要ない。)はマイナスポイントだし、余計な修飾・余計な説明が多すぎて全部読むといらいらさせられると思う。適当に気になる箇所をつまみ読みするのが一番いいのではないか。

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ