基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

経済大陸アフリカ (中公新書):平野克己

最近の中公新書は『国際秩序』も良かったが、この経済大国アフリカも良い出来でとても良い思いをさせてもらっている。今国際関係というか、国と国の間でのパワーゲームというか、資源の配分や戦略を見ていくのをCivilizationのようなゲーム展開をみているようで、マイブームです(現実の国際関係をそんな目でみるのはどうかと思うが。)

まあとにかくアフリカというのは今大激動を迎えているわけで、その変貌をざっくりとした数値の流れと大きな国際関係、資源関係上の流れを把握するのと同時にそこで実際に何が起こっているのかといった細部を描写してくれる、本書はかなり丁寧な一冊だ。二十年以上経済成長していなかったものが一転して継続的な高成長に至っているというがそこに至る動きなども面白い。

アフリカを理解していくためにはどうしてもグローバルな動きまで含めて把握することが必要になる。というのもアフリカが継続的な発展を遂げるに至った要因のほとんどが(当たり前の話だが)アフリカ以外の国にあって、辺境化されていて若干腫れ物に触るというか、あるいみ放置気味だったアフリカがいま急速に国際社会の中で大きな位置を占めつつある。

『アフリカ経済の急成長はアフリカを必要とする用になった世界経済の写像なのである。世界からアフリカを読み、アフリカから世界を読みとく──この視線がびれないように筆洗をたもっていきたいと思う。』と本書冒頭にもあるが、そもそもの事のはじまりは中国人の所得水準があがったことにより資源消費が今後増していくことが当然予測され(インドもいるし)、その為の資源をどこに見出すのかという問題が国際社会にはあった。

ようは何十億もの人間がこれから大量に消費しようとしているのに、そのそもそもの材料がねーべよといったところ。で、それは中国だって問題は共有していたわけであった。中国経済は製造業生産の比率が高く、また外資の輸出生産基地として発展してきたそもそもの状況があるので資源がやばいのは中国がほぼ先頭でぶつかっていく問題であったのだ。

そこで始まるのが中国のアフリカ攻勢で、これから必要になるであろう資源を国外で確保するためにアフリカへの投資を活発に行なってきた。本書ではこの中国からアフリカへの投資にまるまる一章割いているのだが、中国の投資・援助の仕方がこれまたまたおもしろい。

まず第一にそれは軍事、農業、教育、医療、環境対策、文化学術交流と包括的であり、かつ一方的な援助ではなく中国人を大量に送り込みそこで「ビジネスを行う場としての環境作り」を熱心に行なっているのだ。発電所を作り道路をつくり農業技術センターやマラリア対策センターを作り多数の中国企業が今や次々と進出している。

従来の援助ではそこまで深く関わりあいになることはなかったわけだが、その理由もまた興味深い。アフリカとひとくくりにされることが多いが、実際その中には無数の大小様々な国が溢れているのであって、国として、政治として向きあおうとすると国を超えての総合的な援助は難しくなってくる。それをビジネス、会社間の投資としての観点で捉えると容易く国境をこえることができ本書ではこのような関係を「ビジネス=援助ミックス」と呼んでいる。

これは一つの新しい発展の形なのだろう。とにかく援助というと一方的に与え、一方的に教えるかもしくは自立的な発展をいかに促すかといった両極端の意見があったわけだけどこのように視点をガッとずらして、そもそも必要なのであなた方に援助するし、返してもらう分を期待しての投資をしますとする形で援助ができるのなら一見理想的な形のようにも見える。

ただしこれにも問題があるといっていて、アフリカの悲劇ともいうべきものだ。中国は基本内政不干渉として、国の政治には口を出さない方針でやってきたようなのだがアフリカにはジンバブエハイパーインフレが記憶にあたらしいように勝手に意味不明なことをやるわ民族紛争とか意味不明なテロ活動とかよくわからん数々の変数イベントが発生していて地道に関係を構築していってもあっという間に無に帰す可能性がある。

とまあこれは本書のほんの一部なのだが、とにかく中国とアフリカの関係にはアフリカを語る上で主要な解決すべき問題がいくつも浮かび上がってくる。今後国際的にみて資源をどう確保していくのかという問題、新たな市場としてアフリカをどう捉えるのかという問題、民族紛争やイスラム武装勢力を目の前にしていかにしてリスク・コントロールを計るのかという問題、援助と投資をどのようにして行なっていくのかという問題。

とにかくアフリカがいま激動の状況にあることが伝わってくる良い新書だった。

経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)