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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

BECOMING SPACEFARERS by JamesA.Vedda

洋書

If you want a wise answer, ask a reasonable question.-Hohann Wolfgang von Goethe, German writer and scientist

アメリカの宇宙産業についてみていく一冊で、これがまた実に面白い一冊。アメリカにおける宇宙探査のターニングポイントがどこだったのかという歴史の話と、その時に邁進していた宇宙戦略の問題点の話と、我々US宇宙事業部隊が次に目指すべきものはなんなのか、という未来を向いた3つのタームからなっている。著者はspace policy analystという謎の職種の人間でもう一冊同じようなテーマで本を出しているがそちらは未読。

大雑把に内容を要約してしまえば、「火星に人類を送り込む? なにダボなこといってんだ! もちろん火星も重要だよ。でもその前にやることがあるでしょ。まず月ー地球間の軌道上に人間の居住スペース、燃料補給を定常的に行える状況、デブリを排除するシステム、国際規約、といったindustrial parkを創り上げて、国の金だけでなく商業的な基点を作り上げてからだろうが。※ここでちょっと補足すれば、著者は人類の宇宙探査を主に3つのレベルに分類している。1つめは現在我々がいるところで、2段階目が宇宙に恒常的な工業地帯を創りあげること。3段階目にしてようやく他惑星への有人探査などが入ってくる。

鉄道も、車も、輸送船も、国だけでは動かなかった。私営企業が参入して、経済循環の構造とインフラの構築があった上ではじめて加速度的に発展していったんだから、まず目指すべきは政府機関と私営企業の正しい協調なんだよ。夢を見るような一足とびの、目標でなくて、現実に実現可能な正しい大目標の設定をして、そこに到達するために一つ一つのマイルストーンに優先順位をつけて、階段を一つ一つあがっていくように、確実に実行していかないと、金をじゃぶじゃぶどぶに捨てていくだけだよ」

というような話。めちゃくちゃフランクに書きなおしてはいるものの、概ねこんなかんじだと思う。実際火星へ行く前にやることがいくらでもあるだろうが! という話はけっこう重要で、すぐに火星に行きたがる人々や、政治家をみると、未だにアポロが月に行った時の思い出に囚われている人々がいかに多いかの証拠でもある。『依然として価値ある目的のための、総合的な事業計画が不足している』『短期的な仕事の創出をやめ、筋の通った目的に焦点を合わせなければならない』と彼は書いている。

本書が出版されたのは2012年のことだけど、2013年には私営企業のいくつもの宇宙事業への発展があっていますごくホットだ。それについてはちょっと前に記事に書いた。第六大陸は現実になるか? - 基本読書 ついこの間は民間のOrbital Sciences社が数百キロに及ぶ補給物資を打ち上げてアメリカ本土から宇宙ステーションに物資を供給できる能力があることを示したばかりだ。

もっともそうそううまくいくものでもない。民間と公共の部門がうまい具合に協調をとっていくためには規制が絶対不可欠だが、あまりに規制を強くし過ぎても萎縮させてしまうし、規制をなくせば過去の例を見れば明らかだが事故が多発し人が死に、環境は汚染される。ただでさえ宇宙には各国が撒き散らしたデブリが延々と消えることなく軌道上を回り続けているというのに、これ以上デブリだらけになったら地球から出られなくなる。

200ページ足らずのほんだけれども、宇宙政策と民間と公共の関わりあい方において、規制のあり方や今後技術的に達成可能なポイントをを積極的に提案していて、とても良い本だった。

BECOMING SPACEFARERS: RESCUING AMERICA'S SPACE PROGRAM

BECOMING SPACEFARERS: RESCUING AMERICA'S SPACE PROGRAM