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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

読書会『さよならの儀式 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)』の開催報告書

 本日2014年7月12日に開催した読書会『さよならの儀式』ですが台風が過ぎ去ったクソ熱い中自分含め6名にお集まりいただき楽しく読んで帰ってきました。いや〜けなしたり褒めたり、楽しかった。基本褒める作品しかこのブログにはのせないので(けなすと面倒くさいことに巻き込まれたりするし)対面だと心置きなくけなせますね(それはそれでどうなんだ。)。さすがに16本の短編があり、6名にもろもろの時間をひいてかけられるのは2時間30分……という時点で「一つの短編にかけられる時間は9分弱」だったので「時間……足りないよなあ……」と思っていたのですがやっぱり足りなかった。最後の方はさっさと進め、あまり盛り上がらなさそうなものについては点数だけいってスキップするといった手段をとりなんとか最後まで。

 読書会の楽しさとは、基本「人のありがたいお話を拝聴する」よりも自分自身が発言しソレに対して誰か別の人の発言が返ってくるインタラクティブ性にあると思っているので、今回のように6名が1つの短編についてあーでもないこーでもないと言い合っていくのがとても楽しかった。ある人が10点満点の評価で10点をつけた作品にある人は1点しかつけていなかったり、その逆があったり、ほぼ全員が0点の酷評があったり。その理由をといただしていくだけで面白いものです。かなり細かいところを取り上げて延々と議論したり話しているうちに「ああそういえばこんなものも」と話が転がっていくのもまた楽しい。

 長編一冊で6人が3時間持たせようとすると話すことがなくなってきてしまうものですが、短編ならそれぞれいろいろ思うところも言うべきことも、評価の違いなどで個性が発揮されていくのですよ。今回は告知から実施まで10日ほどしかなかったこともあって、「読めない」とか「仕事が忙しい」とか「予定が入ってしまっている」という意見をみかけたので次回はもっと早めに告知するようにします。 なので今回参加を見送った人も是非次回は参加するんだぞ!

 ただ人数的には今回と同じ形式であるなら6名〜8名が限界かな。それ以上だと時間的にチームを分けないといけないですが、読書会でチームを分けるのはあまり好ましくありません(読書会の楽しみが二分割されてしまうし、何より「あっちのチームは盛り上がっているのにこっちは……」というチーム格差が発生するのが悲しすぎる)。まだまだ続けていくつもりなので形式についてもいろいろ試行錯誤していければと思っています。そういう意味で言えば6名も集まったのは今回が初めてだったので試行錯誤中ーといったところ。前回東京で募集した時には一人しか応募がなかったもので驚きました。前回は恥ずかしくてあまり宣伝しなかったせいもあるんですけど……。

誰得賞

 点数をつけているのですが今回の最も点数が高かった短編は1位が『神星伝/冲方丁』でした。ぱちぱちぱち。第八回誰得賞の受賞作となります。いえーい。僕が9点を入れて、あともう一人9点、あと8点と高得点を入れた人がいたので大きかったですね。今回はけっこうみんな点数の付け方が両極端だったので神星伝が一番になるのはけっこう以外だったな。個人的にはこの短編の冲方丁全部ぶっこみました的な和洋折衷、ロボから何から全部ぐちゃぐちゃにして冲方文体で強引にまとめあげました的な要素が大好きなのです。読んでてアガる。好評価以外では「アニメ化すればいい」「可もなく不可もなく」などなどが並びました。

 第二位が『食書/小田雅久仁』。本を食べる男がどんどん本の深みにハマっていく、その描写がまた面白く真に迫っている一品で、これは僕もお気に入りの短編。ただし本を食べることが面白い本ツマラナイ本、ジャンルにかかわらずただただ麻薬的な快感をもたらすものとして描かれていて、「いやつまらない本はそんなにおいしくないんじゃないの。だいたいどれ食べても麻薬的な快感をもたらすならそれ本じゃなくてただの麻薬じゃないの」というところが気になり、減点させて7点。やはり全体的に描写が好評価でしたね。あとはあまり本を読まないので個々で言っていることがあまりよくわからないといった人もいました。

マジで誰が得するんだよこれ賞

 さて、もっとも得点数が低かったのは『死人妻/式貴士』ですがほとんどの人が「これは評価不能」と評価を投げ出したので除外されました。評価不能の問題作というわけではなく、単純に話が終わっておらず途中のものが収録されているため何がなんだかわからんのです。編集の方には編集の方なりの思いがあったのでしょうが、これだけ入れられても仕方がありません。ということでちゃんと完結していたものの中でもっとも得点数が低かったのは『平賀源内無頼控/荒巻義雄』でした。

 こちらには第8回マジで誰が得するんだよこれ賞が授与されます。僕はどこが面白いのかわからないうえにオチは投げっぱなしだしで0点をつけ他の参加者もだいたい0点でしたね。まるでベテランだから傑作選に入れましたといわんばかりのひどい短編。死人妻は完結していないからまだアレとしても、こっちはちゃんとひとつの短編として完結しているのにこれはひどすぎる。読めばわかる、このひどさ。ぶっちぎりの最下位でした。

冬木糸一の個別作品評価

 さて、ここから僕自身の個別評価を──と思ったのですが、16作品全部書いてたら普通に一万文字超えて誰も読まなくなるので簡略化します。評価を高くつけたのは筒井康隆『科学探偵帆村』と唯一の漫画作品田中雄一『箱庭の巨獣』と冲方丁『神星伝』の3つで、それぞれ9点。ただそのうち筒井康隆短編については、参加者のスゴ本ダインさんが筒井康隆の短篇集「笑うな」の中にこれと同様のオチのものがあり、ソッチのほうが短く切れ味が鋭いといっていたのを聞いてしまいがっくり。筒井康隆さんの日記でも「もう最近新しい短編を思いついても全部昔思いついたヤツとネタがかぶっている」と残念な心境を吐露していたのは読んで非常にがっかりしたのを覚えているので、驚きはありませんでしたが。ああ、やはり老いには勝てなかったのか……。

 箱庭の巨獣はデカくて凄く気持ち悪い巨獣同士が対峙しているイメージがすごく好きな漫画作品。「気持ち悪い」ものって漫画家も書きたくないと思うんですけど、それをあえて表現してくれているのが嬉しい。でも評価としては「気持ち悪い」とか「シドニアを見ちゃったからなあ……」と「進撃の巨人ブームにのっかったのでは……」といろいろ比較されてましたね。そりゃシドニアと比べたらダメだよ! この気持ち悪さは酉島伝法さんの作品を漫画化したら凄くあうだろうなと思いました。神星伝についてはさっきかいたので省略。

 他にピックアップしていくと石川博品さんの『地下迷宮の帰宅部』は凄く好み。もともと奇想からそれを現実にありえるところまで落としこんでいく描写の細やかさが面白い方なのですが今回はライトノベルではありがちな異世界に現代人が召喚されるもの。帰宅部のどうしようもない男が地下迷宮で勇者を待ち受けるのだがモンスター同士は持ち場で喧嘩するし、リーダーとしての役割を求められるし、戦いも……となんだか面倒くせえなあダンジョンの主も、という短編。そこまではまあたいしたものでもない。いつもどおりによくやっているね、そこそこおもしろいぞといった感じの作品ですがオチの無情感が素晴らしい。

 藤井太洋さんの『コラボレーション』は粗さと「知性」への安易さがあるもののエンジニアにはグッとくる短編でまんまとハメられてしまいました。逆に専門用語が多すぎて意味がわからないなどなど非エンジニアの人々からは評価が低かったですね。まあそれはわかる。円城塔作品は料理を書くというから楽しみにしていたのに最後は……料理を書いたのなんて最初だけじゃないか笑 自由意志の話もからまってくるのですけど、それと他の要素がうまく結合せずばらけてしまっているように思えて減点。でもいつもの構造を使い捨てていく強引なスタイルより描写が厚めだったような。個人的には結構好きです。

 さすがに傑作選だけあってほぼすべての短編がそれぞれ癖があり、書こうと思えばいくらでも書けるのですけどひとまずこれぐらいで。

交換会のセレクション

 この会では普通に短編の読書会をやったあとに各自がオススメの本を交換しあうというおすすめ本交換会をやっています。せっかくなので今回みんなが持ってきた本を最後にあげておきます。ちなみに僕は藤井太洋さんの『オービタル・クラウド』と円城塔訳の『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』の二冊を持って行きました。前者はとりあえず今のところ今年ベストの小説。後者はへんてこで味のあるスルメみたいな作品。どちらも今回の短篇集にゆかりのある著者のものをチョイス。
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オービタル・クラウド

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SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

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凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

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悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)

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三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

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マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫)

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『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)

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メディシン・クエスト―新薬発見のあくなき探求

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さよならの儀式 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

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