基本読書

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外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) by 千野栄一

英語に限らず外国語の上達には「コツ」がある、それは何かというテーマで進められていく一冊。読んでみればはぁなるほどと思う内容ばかりで、合間に挿入される多言語マスタークラスのスーパーマンたちの逸話、名言も面白い。初出は1986年。言語は年月を経てもそうそう大きく変わるわけではないので上達法にも大きな変更はないのだろう。長く読み継がれているだけは在るというか、奇手に走らない正当な「コツ」がほとんどだ。

・外国語学習においては「目的」を意識すること。言語学習には時間が必要だ。使わなければ忘れてしまうしたゆまに継続こそが記憶をつくる。ウェイターが仕事で使いたいのならばいくつかのフレーズを覚える以上のことは時間の無駄であるし、自分の専門分野の本が読みたいのであれば話したり書いたりすることに時間を割くのは無駄だ。自分に必要なこと明確にしそこに向けて努力を最適化することが必要になる。

・言語の習得に必要な物は時間とお金、覚えなければいけないことは語彙と文法、習得のための三つの道具はよい教科書と、よい先生と、よい辞書である。お金は「お金をかけなければ必死にならない」ということらしいが僕はこれはどうも同意できないな。目的によるだろうし。語彙と文法は全くその通りというか、どちらかだけでも無意味だしどちらもなければまったく何もわからない。教科書先生辞書はそのまんまだろう。

・単語について。どの言語にも「頻出単語」というのがある。最頻出単語である千語を覚えれば、平均60〜70%の語がわかるようになるといわれている。テキストの90%を理解したければだいたい三千語覚えればいい。頻度数で五千番から六千番を覚えても全体の理解範囲では数%上がるだけだ。だからまずは最頻出単語である「千語」をがんばって覚えよう。使いもしないマイナな単語を覚えたところでどうしようもない。三千後覚えてあとは辞書をひくなりすればいい。

・学習書について。初歩の学習書は薄くなければならない。人間は限界の見えないものに恐怖を感じるというが、短いものをコンスタントに積み上げて達成を味わっていくのがいいのだろう。そして細かい例外的なことと基本的なことはちゃんと区別されているものを選ぶこと。重要度に応じて流れができているものよりも簡単なものから難しい物へと流れていくものを選ぶこと、などなどがあるようだ。

・レアリアについて。これは「ある時期の生活や文芸作品などに特徴的な細かい事実や具体的なデータ」のこと。まあようはその土地での風習、文化といったもののことだろう。言語が伝達を主目的とする以上そこには伝えるべき何かがあるわけであってたんに文法や単語を知っているだけではなく、そもそも伝えようとしている「内容」の方を理解していなければ問題が出てくる場面が多々ある。ブルガリアでは頭を上下にふるのは「いいえ」の意味だがこれを日本文化の感覚で理解すると「はい」になってしまう。

コツで特に気になったものを簡単にまとめてみたが、まあ語学に王道はあってもあくまでも重要なのは「時間」と本書でいえば「お金」なのだろう。この1年ぐらいで洋書を30冊程度読んで確かになんだかわかるようになってはいるようだけど、まだまだできるようになった気がしない。日本語に戻ってくる度に「うわあ、なんでこんなにスラスラ読めるんだろう。不思議だなあ」と思う。この感覚は相当できるようになった人でも持っているようだから、語学の学習がいかに終わりがないものかわかる。

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)