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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

一人星雲賞 【コミック編】

SF コミック

 一人星雲賞とは何か。いやそもそも星雲賞の説明からしたほうがいいだろう。

 星雲賞とは公式サイト2014年 第45回星雲賞から引用すると下記の通りのものである。

星雲賞は、日本のSF及び周辺ジャンルのアワードとしては最も長い歴史を誇るSF賞です。
星雲賞は、前年度に発表された作品の中から、SF大会参加者のファン投票により最優秀作品を選ぶものです。
第45回星雲賞は、4月27日から6月15日にかけて第53回日本SF大会参加者による投票がおこなわれ、7月19日に発表予定です。

 ようはSFの賞であり2013年度に発表されたSF作品やSFっぽい作品やぜんぜんSFっぽくないがなんでかよくわからないが候補になっているものの中から、日本SF大会の参加者による投票によって決定されるファン投票賞なのであると理解していればいいだろう。結果は今年の7月19日に発表される

 分野は多岐にわたり【日本長編部門】【日本短編部門】【海外長編部門】【海外短編部門】【メディア部門】【コミック部門】【アート部門】【ノンフィクション部門】【自由部門】とそれぞれ分かれている。それぞれの分野で先に紹介したページでは参考候補作一覧が載せられている。投票権を持った人間は基本的にこの参考候補作から対象の作品を選んで投票するわけだが、あくまでも参考候補作であるために一覧に載っていないものをえらんでもかまわない。

 僕はどうせSF大会にもいかないし、星雲賞にも、何一つ関係がない人間である。そんなまるで無関係な人間が勝手に星雲賞候補作を読んで受賞作を決めてやろうと思っているので「一人星雲賞」なのだ。fujiponさんの一人本屋対象を勝手にパクったのはいうまでもない。参考候補作にあがっているものをちゃんと一個一個読んで、出来る限りレビューを書いていき、選ぶのだからなかなか労力もかかっている。まあさすがに全部門はやらないが。

 短編部門は候補作がのっているSFマガジンを集めてくるのが面倒くさいからパスだし、メディア部門は映画やOVAならまだしもTVアニメシリーズが入っているとさすがに見ている時間がない。アート部門もよくわからない。が、ソレ以外の分野についてはだいたい既に読み終わっていることもあって、出来る限りやっていこうと思う。まずは【コミック編】である。

 さて、肝心要のコミック部門の参考候補作は何かといえば次の4つである。【星のポン子と豆腐屋れい子】【成恵の世界】【GANTZ】【あかねこの悪魔】GANTZが一番有名で巻数も多く37巻、その他の作品は知名度が落ちるか。もっともこういう賞の醍醐味というのは、受賞作に箔が付いたりする以外にも「候補作にあがった知らなかった作品が目に触れること」だったりする。

 今回で言えば候補作が発表する前段階で【成恵の世界】は既読、GANTZは20巻あたりまで既読、【星のポン子と豆腐屋れい子】と【あかねこの悪魔】は未読、存在すら知らない状態であった。こういう機会でもなければたぶん手には取らなかった作品なので、星雲賞には勝手に感謝したい。以下作品ごとにおける雑感及び選定。

星のポン子と豆腐屋れい子 (アフタヌーンKC) by トニーたけざき - 基本読書

 候補作の中では唯一の一巻完結物。ストーリー的には古き良きプロット、みたいな懐かしさをどこか思い出させる。幼い姉弟の元になんでも願いを叶えてくれるという胡散臭い宇宙人がやってきて……しっちゃかめっちゃかになっていってしまう、というもの。一巻完結物の漫画としては非常によくまとまっているお話で絵的にも大満足な一冊。静と動、爽やかさとエグさへの運動が激しく、それでいてとても表現的に丁寧に積み上げていくので楽しい一冊。

 ほんわかした雰囲気の立ち上がりでグッとグロさとエグさをプロットだけでなく絵で表現していく能力が圧巻だが、さすがにこの候補作相手だと一巻完結はちょっと厳しいか。

世界はたくさんのみんなでできているんだよ『成恵の世界』 by 丸川トモヒロ - 基本読書

 1999年から連載が始まり、2013年2月号でついに連載が完了した。全13巻である。素晴らしい青春SF活劇コメディであり、13年の時の流れを経て、なお古びれることのない傑作漫画だった。もしあなたが最近の漫画は長すぎて終わらねえ、まとまった良作はないのかと眺めているのならばこれを読まない手はない。
 青春日常ラブコメ物の、ほんわかした雰囲気を保ちつつもハードなSF設定を両立をさせている技の冴えは、他に並ぶものがない。日常のドタバタにSF設定を取り入れているだけかと思いきや、のちのち長大な時間軸上のプロットに伏線回収されていくさまなど胸が踊る。成恵と主人公の、どちらもどちらの精神的支柱であり、共に支えあいながら、補完しあいながらも物事を前に進めていくさまに涙する、色んな意味で濃縮された傑作だった。今回はこの【成恵の世界】と【GANTZ】のどちらを賞に選んだほうがいいか、ずいぶんと悩んだものだ(別に僕の決定で星雲賞が決まるわけではないが)

あかねこの悪魔 by 竹本泉 - 基本読書

 ゆるゆる。ほのぼの。読書好きが図書館に入り浸っているうちに、本の世界に入り込んで紙魚退治をするはめになってしまうという本浸りのシリーズ。とても心地よい。六巻で完結。巨大な悪がいるわけでもなく、苛烈な恋愛闘争が繰り広げられるわけでもない。図書館でだらだらと過ごすところとか、出てくる人達がみな本好きで一分の隙もなく本を読んでいるところとか、いろんな図書館が出てくるところとか、ドラマ的な部分ではなく心情や環境にたいしての魅力が大きい。もちろん架空のお話の中に入り込んでいくのは「あはは、こんな話ないだろ」みたいなものから「ちょっとよんでみたいかも」というものまで様々で、たのしい。

 まあ、内容はSFというよりかはファンタジーであり、コミック編の方向性を広げていて面白いけれども、今回は惜しくも選ばなかった。一度本好き女の子主人公ものでまとめてみたいな〜〜。

GANTZ by 奥浩哉 - 基本読書

 あまりにも順当な、と思われそうだが【GANTZ】をやはり一人星雲賞コミック編の受賞作としよう。エロにグロ。とても勝てそうにない強大な敵にかっちょいい武器、武道。デカい敵もいれば小さくて多い敵もいる。だがだれもかれもみな強く、圧倒的な力を持っていて、主人公たちはあまりに非力だ。でも知恵やチームワーク、覚悟を決めてその強敵に挑みかかっていく。

 漫画という表現手段をめいいっぱい活用して描かれた圧倒的な敵、破壊の爪あと、人間の快感原則に沿いきる為に無茶苦茶になってしまった展開も、ソレを裏打ちする絵としての表現がなければ説得力がない。巻を増すごとにデカくなっていく物語スケール、敵の強さ。結末に向かうに連れて否定的な意見が増えていったが、GANTZは最後までエンターテイメントに忠実であった。

全体的な雑感。次の【日本長編部門編】へ続く。

 なんだか面白味のない結果になってしまったがGANTZは面白い。成恵の世界も面白い。あかねこも豆腐屋もそれぞれみな違った部分が面白い。こうしてやってみると全く異なる作風の全く異なる巻数の表現者たちが描いたものをまとめて「コミック」と称して無理矢理一作品を決めるのはえらく難しいことに気がつく。

 たぶん実際の星雲賞は投票だから、一番知名度の高いGANTZに集中するだろう。もしこれを読んだ人の中でどれも読んだことがないのであれば、成恵の世界を読んでもらいたいなあ……。GANTZは人生の内漫画喫茶で一晩とまることにでもなった時に一気に読めばいいよ。 次はたぶん【日本長編部門編】をやります。