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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動


©Sony Computer Entertainment Inc.
 PSVITA初期のオリジナル傑作として評価もかたまり、もうやるべき人にはとっくに行き渡っているようなきもするけれども僕は最近クリアしたので感想を書く。というのもPSPが生産終了ということでろくに使わなかったPSPのことは頭からすっかり消えてしまいVITAを買ってきて最初のソフトがこれだったのだ。結論からいえばこれの為だけにでもVITAを買って満足している。まあこのあとロボティクス・ノーツとか買うけれども。

 ゲームの面白さとはいったいどこにあるんだろうか。格闘ゲームやアクションゲームのようにだんだんと自分がうまくなっていく過程が面白い。自分にクリアできるかできないか、ぎりぎりの壁を乗り越えていくのが面白い。アイテムなどを収集して、コレクションしていくのが面白い。ストーリーをおっていくのが面白い。自分自身がその世界の住人となって冒険するのが別の人生を体験しているようで面白い。自分自身ができないことを、ゲーム内キャラクタにやってもらえるのが面白い。別世界を、体験するのが面白い。

 ゲームにはいろんな面白さがある。中でもやはり「自分ではできない、自分ではできない何かをゲーム内で自由にできる」というのは大きな魅力のひとつだろう。勇者になる、あるいは無法者になって街中を破壊して回る。ヤクザになる。兵士になる。宇宙でエイリアンを闘う。全部自分ではできないことだ。GRAVITY DAZEの主人公であるキトゥンは重力を操ることができる。空を飛べるゲームはいくらでもある。しかし重力をあやつれるゲームがどれだけあるだろうか?(重力をあやつれるゲームなんてほかにないと言い切りたかったが知らないので濁した)

 舞台は現代世界とは似ていない不可思議な世界だ。巨大な円柱を取り囲んでつくられた空中都市「ヘキサヴィル」が舞台で、とにかく高低差のある複雑で入り組んでいるところを、なぜか重力を操作し「地面」を自由に決定することのできるキトゥンが、都市の様々な問題を解決し謎の解明に動き回っている。あとこの世界にはなんだかよくわからんが「ネヴィ」という怪物がいてこいつもがんばって倒す!

重力を操作できるという素晴らしさ

 重力方向を操作できるのがこんなに楽しいものだとは、やってみないとなかなかわかるものではない。都市のあらゆる場所が「地面」になる。空中を跳びまわって、建物から建物へ飛び移り、側面を歩き、走り、底面をかけずり回ることになる。「地面を設定できる」ということはつまり、360℃すべてが地面であるということであり、「移動」の概念も「建物」の概念も、根底から一変してしまう。

 「自分ではできないことが、ゲームならできる」のが面白いと書いたがこのどこにでも重力を設定できる能力はまさにそれだ。しかしなぜそれを多くのゲームはやらないのか? といえば、たぶん難しいからだろうと思う。ようは擬似的にすら体験したことのない感覚だから、感覚的に伝えるのが難しいのだ。しかし本作はそれを見事なゲームデザインと手触り感で達成して、感覚が現実に侵食してくるレベルになっている。数時間やったあと外にでるとあーあのビルの側面に飛んでいって歩きたいなーとか現実を侵食して思うようになっているだろう。

 僕らは結局のところ普段はどうしようもないほど重力に縛られているのであって、その枷を一時とはいえ解放してくれる、それ自体がひとつの偉大な快感だ。もちろんこの楽しさ、快感は創りこまれた街と、街を回る理由付けがあってこそだろう。街は全部で4つあり、そのどれもが違った構造と雰囲気を持っている。シナリオをクリアしていくごとに電車で違う街に移動できるようになるのだが、電車の上に立って新しい街が見えてくるときのどきどき感と、新しい街に辿り着いた瞬間とりあえず一番高い建物まで飛んでいって街全体を見下ろしてさあどこへいこうかなと考えるときはこのゲームをプレイしていて最高の瞬間の一つだ。

 街の至る所にはキトゥンが自身のパワーアップに使えるプレシャスジェムというものがおいてあり、これが建物の側面や底面、都市構造物の最下層などにまんべんなく散らばっているため街中を探検するモチベーションになる。また街はたんに探検する場所ではなく、敵の怪物であるネヴィと闘う戦場にも変貌するが、これも建物の影に入ったり側面から攻撃をかわして突撃したりと建物を縦横無尽にかけめぐって敵と闘うのもたのしい。

 高低差のある街中で、ストーリーを進めたり会話をしにいったりと街の至る所に飛んで行く必要があるのだが、三次元的にどこにでもいけるように創りこまれた街なので何百メートルも落下して目的地付近で突然重力方向を変えて突撃していったり、あるいはいったん上空高くまで舞い上がって目的地付近まで弾丸突撃したりと、とにかく移動するルートだけでもいくらでもあるのでゲームでは敬遠されるはずの「お使いイベント」みたいなものでもめちゃくちゃ楽しいんだよね。

 あとバトルでメインになるのは空中で飛んでから相手に重力操作してものすごい速度で加速しキックをかますというライダーキックなのだが、あの現実的に不可能であるはずのライダーキックがちゃんと再現されているのでたいへんよかったとおもう。まあ、バトルはぶっちゃけライダーキックの連発で片がつくことがほとんどなので面白みはあんまりないんだけど。

デザインについて

 街の景観が素晴らしいのは既に書いた。一番最初にあげた写真をみてもらえればわかるとおる色彩から含めて秀逸な仕上がりだ。おもしろいのは、バンドデシネ的なデザインが随所にこらされているところ。そもそも建築からして日本ではなく現代の欧州。製作者のインタビューでは次のように語られている。※GRAVITY DAZE | プレイステーション® オフィシャルサイト より引用

【外山】 最初は漠然とメビウス(※3)をモチーフにしようと。古いんだか未来都市なんだか、っていうのが混ざっているような。メビウスの作品のアンカル(※4)に有名なカットがあるんですけど、あの感じが開発チームの共通のイメージでした。スタッフも元々好きで、腕がいいのが何人かいたので…。

 途中のストーリーもアメコミ風というか、バンドデシネ風というか(その2つが明確にどう特徴付けて区別されるのかわからん)で進んでいくし、これらはほとんどは海外ユーザの取り込みの為だろうが、日本的な部分との融和が面白いんだよね。キャラデザも日本のアニメ的な「かわいい」だけのイメージからはかなりズレたところが狙われているのも興味深い。

シナリオについて

 謎のほとんどが明かされない。シナリオは短く、謎のほとんどが明かされないためまるで意味不明で、キャラクタの会話も少なく、キャラの魅力はまるでない。「これは束の間の平和であった……」みたいな意味深なナレーションでお話自体も終わってしまうので完全に続編ありきの企画ではある。ただまあ、飛び回って遊ぶのが楽しいのでシナリオ上の不備はあんまり気にならない。あとプレイ時間は15時間ぐらいだったと思うが、密度が高く僕自身は長いゲームに辟易していたので満足度はそれで減っていない。

多少の難点

 シナリオ以外に難点があるとすれば、二、三回酔って吐きかけたことだ。ホント、死ぬかと思ったからね。うう、吐く……吐くがこのボスを倒さないといけないしゲームをもっとやりたい……が、吐きそうだうげえ……とゲームの敵とは別次元の敵と戦わされる羽目になった。酔い止めを飲んでやろうかとも思ったが、無茶な操作と急激な視点移動の連続が問題の根源であったのでそれを改善させたらなんとかなったので対処不可能な問題ではない……と思う。

 難易度は高くない。難易度調整もないし、ガスガスHPが減っていくので油断しているとあっけなく死ぬが、少し考えて作戦を立てれば大抵はうまくいくようになっている。リトライのポイントが細かく設定されていてちょっとずつ地道に進めていけばよかったりと(HPが全回復しているから)安心設計もある。

まとめ

 コンパクトにまとまった素晴らしい快感ゲー。シナリオはともかくとしてゲーム本来の面白さが存分に詰まっている傑作だ、と僕などがいまさらいったところでどうなるもんでmないだろうが……。プレイ時間なんて10時間ぐらいでいいからこれぐらい新しい快感を提供してくれるゲームが出てきてくれれば嬉しいのだけれども、無茶なお願いというものだろうか。