基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

チャッピー・忘れられた巨人・流

SFマガジンの文章やらHONZの文章やらを書いていたらすっかり自分のブログが疎かになってしまっていた。毎度毎度1日にあげていたのに大遅刻である。ぼやぼやしているとあっという間に6月も終わってしまう──というわけで2015年5月の基本読書まとめになる。なんか5月はいろいろとやっていたこともあって、いまいち何を読んだか覚えていないのだがどんな月だったか……。まずひときわ目立つ事件といえば映画のチャッピーがもう素晴らしい作品であったことに尽きるし、5月はそれで記憶が一斉に塗り替えられてしまった。それはまあ後段で語ろう。

ハヤカワ文庫補完計画

まずハヤカワ文庫補完計画関連で記事を5つ上げているようだ。最初は同人誌的に記念製本しようと思っていたから、一冊あたり2000文字ぐらいに抑えようと思っていたのだが、さすがに往年の傑作・快作ばかりで書きだすととまらなくなってしまう。ディックの中では有名作の『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』やアシモフの『はだかの太陽』あたりは鉄板で、バクスターのタイムシップはたぶん30年後に読んでも依然として傑作だろうな、と思わせる圧巻の内容。実は個人的にディック作品の中では『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』の評価はあまり高くないんだよなあ。『はだかの太陽』は描写が古くさいところはとことん古くさいんだけど(テレビとか電話とか)ロボット社会の描き方と、同時にロボットと人間の好意的な関係の作品がこの世にない=ある意味ではそうした観念が受け入れられる土壌が社会にはまだない状況への怒りみたいなものまで感じられて素晴らしい出来。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

小説

ライトノベル系をのぞいた小説でピックアップするとしたらなんといってもカズオ・イシグロの最新作『忘れられた巨人』。どんどん記憶の消え、アーサー王がいれば円卓の騎士らもおり、竜までいるファンタジックな5〜6世紀のイギリスを描いた作品。忘れること、忘れられること、過去にあったことへの記憶がおぼろげになり、同時に変容していくことがファンタジックな世界観でこれまでのカズオ・イシグロ作品の総決算のようにしっくりと展開していく。どんどん記憶が消えていく社会は描写としては実に真面目に語られていくのだが、情景を頭に思い浮かべると笑ってしまうほど滑稽だ。道を通せんぼし怪しいやつを通さないようにしている見張りは自分が何のために見張っていたのかも忘れて、怪しいヤツラを通した後に「あ、やべなんで忘れてたんだ!」と慌てておいかけていくし、村の人々は子供がいなくなって大騒ぎしたあと、そのことをすっかり忘れてしまう。争いっていても、その原因を忘れてしまうんだからある意味では凄く平和な世界で、読み終えてみるとまるで夢でも見ていたようにふわふわした気分になってしまう。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
東山彰良の『流』は著者の父親の体験談と自分の体験談をミックスした自伝的な作品。1975年の台湾を舞台にして、ろくでなしの少年が女の子と恋をして、荒くれ者で多くの人間から恨みもかったが親しみも(少しは)持たれていた爺さんが殺されて以来復讐を誓いながら、そのことをたまに思い出したり忘れたりして人生を続けていく。台湾と日本の歴史、家族の歴史、その大きな二つの間で揺れ動く個人の歴史が編み込まれた傑作なのだが、「人生」としか表現できないこの作品をうまいこと説明できないのが無念だ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

ノンフィクション

『S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ』HONZ掲載のものだがぎりぎりまでこの本で書こうかどうか迷っていた。専門外であることもあって、物凄い面白かったけど内容の妥当性、現在に出される意味などさっぱりわからない。ブログだったらある程度は無責任にそういうのはわからんのでヨロシク! といえるのだがなかなか。ただこんなに刺激的で世界をいったん解体しまるごと組み立て直すような文章お目にかかれないので一度体験してみるといい、というのは変わらない。難しいのではと敬遠するかもしれないが、難しいところがぜんぜんないのもまた素晴らしいところではある。何しろ「エッセイ」なのだから。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
『Uncreative Writing』は洋書だが面白かったので。簡単に要約してしまえば、今の世の中コピペ時代なんだから、もうそれをある程度は受け入れて新しいWritingの形を考えようぜ、たとえば今までuncreativeだと思われていたやり方の中に意味を見出すような形で──という感じ。映像から脚本を書き起こす、既に書き上がっている傑作・名作をそのまんま書き写す、一見したところ何もつくりあげてこないそうしたuncreativeを経験していくうちに、誰しも自身のcreativeな側面が沸き起こってくる。実際に彼は授業でもそれをやっているので、一応説得力はある。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

ライトノベル

『明日の狩りの詞の』は石川博品による「狩猟」SF。ようは地球に住み着いた異星生物を現実の狩猟生物を狩るような筆致で書いたら面白いんじゃね? みたいなシンプルなコンセプトの作品で、SF的な要素はあまり強くはない。強くはないのだが、自分の思い通りになるわけではない自然=狩りを通していくことで、自分の思うようにはならない青春=人生の予行演習、疑似体験して悩みに一歩一歩答えを出していくさわやかな青春小説に繋がっている。SF要素がなくても成立しそうな作品ではあるが、まあそういう特殊な状況でも設定しないと高校生は狩猟しない(免許もとれなかったっけ?)からな。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

映画

さあさあさあさあおまちかねのチャッピーの時間だ。お前ら、チャッピーはもう見たか? 見てない? 別に見なくてもいいぞ。諸君らがみるか、みないか。そんなことはどうでもいい。でも僕は死ぬほど楽しかったしBDが出たら絶対に買う。記事は通常ありえないテンションで書いた。最高だ。最高の映画だ。話を簡単に説明してしまえば、生まれたばかりの赤ちゃんAIがギャングに教育され一流のギャング・スターに成長する話だ。だいたいAIが「チャッピー」って時点でとてつもなく頭が悪い。

そうだ。この作品は頭の悪い作品なのだ。そして、それでいい。人工知能、AI、頭のいいヤツラが頭のいい理屈を考え、SFでは大層なものとして描かれる。ブロムカンプはそれを地べたに引きずり落とした。いいかと。AIはバカでいい。SFはもっとアホくさくていいのだと。カジュアルに楽しめ、感情の転換を、インテリとギャングの相克を、頭のいいやつらがいくら理屈をこねくり回そうが太い右腕で一発顔面を殴ってやりゃあいうことを聞くんだ。だったらそいつの顔面を殴りつけろ!

ってブロムカンプがいってました。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

漫画

『お尻触りたがる人なんなの』は位置原光Zによるシュールエロギャグ漫画。前作『アナーキー・イン・ザ・JK』も大好きで、ただこの面白さはなんとも説明しづらい。ひとつ言えるのは男女の距離感の妙があること。出てくる女子高生らがみんな彼氏がいてセックスの話をあけすけにするとか、延々とバカな下ネタ話を展開しながら最後は何故かお互いに照れるラブラブなカップルの話に収束するとか、下ネタと恥じらいの間を急速転換する緩急がある。

お尻触りたがる人なんなの (書籍扱い楽園コミックス)

お尻触りたがる人なんなの (書籍扱い楽園コミックス)

おわりに

今回はわりとさくっとまとめてしまった。アニメも今は中盤の展開を迎えている処なので一段落。来月の月報ではアニメの総括もしましょうかね。シドニアの騎士とか、ジョジョとか、てさぐれとか。6月は正直いって超オススメな作品の目白押しなので今から楽しみ、それではまた。