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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル by 小川孔輔

wedge.ismedia.jp
↑の対談記事がなかなか面白かったので、話題にあがっている本書を読んでみたのだが、なるほどなあという感じ。マクドナルドの経営が悪化しているのは周知の事実だが、それはなぜなのか。個人的には単なるやり方のよくない効率主義を推し進めた結果、出てくるハンバーガーは高い上にマズイ、居心地はよくない、客層も店員も最悪で基礎中の基礎が全部ぐだぐだになった結果「同じ値段払うなら別の場所にいくわい」となっただけだと思っていた。というか、それは別に間違いじゃあないのだが「じゃあなんでそうなっちまったんだ」という話だ。

マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル

マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル

著者は2000年頃から既にマクドナルドのビジネスモデルはもはや時代の流れにあっていないと言い続けていたようで、本書はマクドナルドがそもそもどのようなビジネスモデルでスタートし、日本のマクドナルドを興した藤田田氏、その(すぐ後じゃないけど)後任にあたった原田氏を中心において問題はどこにあったのかを仔細検討していく。その辺はまあ、歴史的、経緯を追っていく内容なので興味があれば読んでおけばいいだろう。基本的に多くの人間がきになるのは「いったいぜんたい誰が悪かったのか」「何が悪かったのか」に集約されると思う。

本書では直近10年間の責任は日本マクドナルドのビジネスに関与した経営陣及び物言う株主たちにあるという。ただ、株主は金を引き上げればよいし、経営者はとっとと別の企業にとんずらすればいいわけで加害者側のダメージは大したことがない(ツライのはフランチャイズ店長と疲弊したクルーだ)。原田氏なんて2011年に『勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論 』などという今からみるとお笑い草な本を出しておきながらその後は負け続けあっという間にマクドナルドを去っているわけで。経営のような先行き不鮮明なフィールドで戦っているのに「勝ち続ける」なんてタイトルをつけちゃうのは危ういなあと思わせてくれる心温まる事例だ。「雇われ社長として短期的に成果が上がっているように見せかける方法」とかの方がいいのでは(そういう人けっこういそうだ)。

問題の一つはマクドナルドが徹底的にチープなイメージで消費者に刷り込まれてしまったことだ。競合に勝つために。バブルが弾け、円高にふれたおかげで食材の調達コストが安くなり、デフレ傾向が続くうちに消費者は安いものを求めるようになった。様々な要因が重なってマクドナルドは大安売りをはじめるわけだが、それによって今では信じられないことに元々あった「米国発のおいしいハンバーガー」というイメージは掻き消えた。そこからが原田時代となるわけだが、最初は業績を盛り返している。この時代には最初に僕が言ったような「まずくて居心地が悪くて従業員が最悪」といった基本をやり直そうと、ハンバーガーの質を上げ社員やクルーとの対話によってサービス品質をあげ、大量店舗改装などにより清潔度をあげようとしている。

それだけなら「おお」と思うところだが、ハンバーガーの値段は徐々に値上げし、収益性を高めるために2007年から2010年の間に従業員が4997人から3419人へ減り、2013年には2764人に。不採算店はガンガン閉店され、2009年から2010年の間に413店減っている。店舗は直営からフランチャイズへの移行がすすめられ24時間営業化、米国流の経営を取り入れと大改革がふるわれていくと「あれあれあれ」という事態が展開してくる。大量閉店+他所と比べても価格的にも味的にも優位のない状況によって客は離れ、24時間営業施策によってクルーは疲弊し結果的に店の清潔感もサービスも失われていく。まさに落ちるべくして落ちていっている感じ。

こうして時代にそって見返してみると終わりのはじまりは藤田田時代のデフレに合わせた低価格路線からそのまま抜け出せなくなってしまったことで、その後原田施策によって(もちろん原田氏一人の責任であるはずもなく、後に投入された副社長や米国本社の意向を取り入れざるを得ない状況など複合的な結果だが)基本的な部分がすべて壊滅的なダメージを受けて、他所の新興サービスに軒並み客を攫われて優位性がほとんどなくなってしまったと総括できるだろう。

一方日本だけが低迷しているのかといえばそうでもなく、本国である米国でも(顧客満足度指標によれば)新興、旧来問わずファストフード系では軒並み上回られている。2014年の指標に限っていってもマクドナルド71に対してサブウェイ、ドミノ・ピザ、スターバックス、バーガーキング、KFC、すべてマクドナルドを超えた指標を維持している。結局のところ世界中、国中どこへいっても同じものが手頃な価格で食べられることが持つ価値そのものが、食のサービスがより先鋭化しターゲットをより細かく満足させる方向へ向かっている今ではなくなっているということなのかもしれない。

起死回生の一発が出せるようなビジネスモデルでもないし、まあ現状適正な規模にまで落としこんで質を着実に回復させながら新しい収益構造を確立させたりイメージの転換をはかって10年20年単位での復活を目指すしかないんじゃないですかねってかんじだ。まず必要なのは本社に沿った戦略をある程度捨て日本独自のローカライズ施策を打ち出すことだろう。食の世界にしろエンターテイメントの世界にしろ同じように思うが、結局「みんなが同じようなものを一緒に楽しんでいた時代」って、ようは選択肢のない時代なんですよね。そうする他ないからみんな映画館にいって映画をみていた。そうするほかないからみんな少ないゲームで酷いバグゲーだろうが一生懸命遊んでいた。

でも既にそんな時代じゃないんだから、自分にぴったり寄り添ってくれるものを望んでいる。人間の好みは先鋭化していくと随分多様である。そうすると必然少数へ向けたコアなものを提供せざるをえないけど、供給側はそれでも成立する構造をとる必要があるよねっていう移行期にあるようには思う。おっきいとこは大変ですねえってかんじだ。