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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

江波光則・殊能将之・文明再興

はじまりの挨拶

2015年6月に僕が読んできた本と書いてきた記事等の振り返り記事になります。毎回毎回思うのだが、一月を振り返ると言っても月のはじめに何を読んでいたのか・何を考えていたのかもうさっぱり思い出せない。書いた記事をみて「ああ、これを読んでいた時かぁ」とか「ああ、そういえばこんなものを読んでたなあ」と思い出す次第である。記事名はなんとなく四文字の漢字しばりにしてみた。

SFマガジン 2015年 08 月号 [雑誌]

SFマガジン 2015年 08 月号 [雑誌]

6月は何をしたのか? 別に何も。普段通りである。文章をしこたま書いて本業もそれなりにやっております。お知らせすることとしては、SFマガジン2015年の8月号が出ました。ハヤカワ文庫SF総解説では『最後の帝国艦隊』『秘密同盟アライアンス』『ヴォネガット、大いに語る』を。1ページレビューではレムの『短編ベスト10』、通常連載の海外SFブックガイドではここ二ヶ月の海外SFをまとめて書いています。レムの『短編ベスト10』はマジですげえから覚悟しておくように。

2015年4月号から書かせてもらっておりますが、何しろSFマガジンがどうとかでなく、雑誌に書くのが初めての経験なので編集長である塩澤氏には色々とご迷惑をかけております。まあ3回載せて、あと6月のはじめに打ち合わせをさせてもらったりして「ああ、なるほどなあ……」と腑に落ちるところもあったり。ちなみに7月12日はこのイベントに出ます⇨夏休みにはこれを読め!! ~HONZおすすめする2015上半期ベストノンフィクション~ | イベント | d-labo といっても既に募集は締め切られてますが。

読んだ本をざっと振り返る──オススメ篇

huyukiitoichi.hatenadiary.jp
6月に読んだ本をざっと振り返ると、フィクション、ノンフィクション含めて良い本を読んだ。ケン・リュウの『紙の動物園』は海外SFとしてはここ数年でも珠玉の出来。この前出たばかりのケン・リュウ長編も既に権利が早川で取得されていることが紙の動物園訳者氏のTwitterからわかり*1、恐らく近いうちにその姿を見せてくれるでしょう。流れに載っている時にぐっと出して欲しい! というか、早く日本語で読みたい! honz.jp
ノンフィクションで特にオススメを上げると、HONZで記事を書いた『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』がベスト。文明が一旦崩壊したあと、いかにして文明をリスタートさせるのかをテーマにして書かれた本。文明が崩壊といっても、種やらトラクターやら、結構利用できるものは残っている想定だったり、仔細にわたる手順が踏まれているわけではないが、そこはまあ一般向け科学読み物なのだからといったかんじか。ちなみにこれは先日、人気に乗じて文明再興物のSF語りをしたりしている。書いてて楽しかったな。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

読んだ本をざっと振り返る──それ以外篇

さて、それではその二冊以外はダメダメだったのか? といえば、それ以外も凄まじい粒揃い。たとえば江波光則さんという長年ライトノベル・ジャンルで活躍してきた作家が早川に進出した第一弾『我もまたアルカディアにあり』は、江波光則イズムを明確に押し出しながらもSFとして成立させている、なんていうのかな、SFに新しい流れを付け加えるような手触りの良い作品だ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
ノンフィクションも粒揃いであれもこれもあげたいのだが幾つか厳選すると、まず殊能将之さんがネットに書いていた文章をまとめた『殊能将之 読書日記 2000-2009』が素晴らしく良い。扱っているのは主に未訳のフランスミステリや英米SFの数々で、うわーここで紹介されているの面白そうと思っても読めない(翻訳されていない)のだが、ここにはまさに「読書日記」と題するのがふさわしい、本と共に呼吸し、本と共に風呂にはいるような読書漬けの日々が、純粋な読書の喜びが表現されている。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
日記系でもう一個あげると(僕が日記を好きだからぽんぽん上げたくなってしまう)江口寿史さんの『江口寿史の正直日記』の文庫もまた良い。何しろ締め切りは守らない……というより守れない、やる気が出なくて出なくてもうどうしようもない、原作の大先生には滅茶苦茶に怒られ、挙句の果てに見捨てられ、当然編集には呆れられ、という生活が丸々書かれている。あまりにダメ人間過ぎるが、嫁と娘がよくできた存在でこの荒れくれた日々に癒やしを与えてくれる。これを読めば誰しも「まだ自分のほうがマシやん」と思うはずだ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
紹介としてはあんまり書くことはないんだけど単純に面白かったのが『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか?』。とんでもな質問に科学的な回答を返す(時々返さない)本で、これが回答のレベルは勿論質問のレベルも高くて面白い。たとえばFacebookで死んだ人のほうが生きている人より多くなることがあるとすればいつ? とか。こういうのって質問のセンスが大事だ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp

記事を書いてないがおもしろかったもの

『マッドマックス 怒りのデスロード』を観た。尊厳と自由を失った者共が、その回復の為に一旦は逃げ、その後反抗に転じるというただそれだけの単純な構造でありながらも込められた情報量は多く、どのシーンを切り取っても完璧に決まっている。何より荒れ果てた砂漠を延々と、原形が理解できないほど改造された車やバイクで走り続ける情景が美しい。

逃げるときは「うおおおおおおおおおおおおお逃げろおおおおおおおおおおお」とテンション250パーセントで展開し、その後一旦物語の流れが停滞し「え、どうしよ……」とテンションが60パーセントぐらいになったあと一瞬でポジに反転し「うおおおおおおおおお反抗だああああああああああああああ」と再度250パーセントのテンションになってそのまま駆け抜けていく。全編見せ場であり、逆に言えば気の抜きどころがない、テンションの落差による興奮はないともいえるのだがそれはそれ。

ゆうきまさみ 異端のまま王道を往く (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

ゆうきまさみ 異端のまま王道を往く (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

『ゆうきまさみ 異端のまま王道を往く (文藝別冊/KAWADE夢ムック)』、もさっき風呂で読みふけってしまったが大変良いものだ。ゆうきまさみさんの作品って常に肩の力が入っていなくて、するっとストレス亡く受け入れられるんだけど常にどこまでも自分の中に溜まっていくような軽い重さがある。この説明しがたい矛盾性の極みのような作風がしかし、「異端のまま王道を往く」のキャッチコピーにはよく現れているように思う。小川一水さんが文章を寄せていたり、森博嗣さんが寄せていたり(コレは知ってたけど)、荒川弘☓羽海野チカ☓ゆうきまさみの懇談が載っていたりとすげえ面子(だけど、納得でもある)、だがそれも当然の大作家だよなあ。

あと、アニメが色々終わりましたね

1クールが終わりましたね。最後まで観たのは今のところジョジョとFateだけかなあ。てさぐれスピンオフはまだ最後まで見ていない。途中で監督の交代などケチがついてしまったのが惜しい。作品もスケジュールの遅れが最終的な完成度に大きく影を落としており、お世辞にも褒められたもんじゃないです。

それでも、悔しいがてさぐれは面白い。石ダテ監督のピーキーな部分が隅々まで行き渡っている。それだけに様々なリソース不足や外部要因によって作品のクォリティが最大パフォーマンスを発揮されていないのが残念であります。

ジョジョもFateも最後まで終わってみればまあ素晴らしいアニメ化だったという他ない。いう他ないけれども表現方法の違いをどうアニメとして落としこむのか両者とも随分苦労しているように思える。漫画や小説だったら長台詞で問題がない(読者が脳内で時間を調整するから)箇所がアニメでは時間を読者に委ねることができないばかりに、原作の台詞を完全再現しようとする箇所が尽く違和感に繋がる。

どこをどう削るのか、アニメにする際の最適な表現とは何なのか、いろいろなパターンを見せてくれた二作品でもありました。そういう意味で言えば同じく漫画からのアニメ化であるシドニアの騎士は元々セリフ量が(特に戦闘中は)少ないこともあって違和感なくハマっていました。

これから読む本

さてさて7月に入ったところだが、もう続々と面白そうな本が手に入ってきていて楽しみで仕方がない。たとえば『太陽・惑星』を書いた上田岳弘の新刊『私の恋人』。あのグレッグ・イーガンの新作『ゼンデギ』。創元SF文庫の新刊『軌道学園歳フロンテラ』、吉上亮さんによるPSYCHO-PASSスピンオフシリーズであるGENESISの第二巻、年刊日本SF文庫傑作選である『折り紙衛星の伝説』。『折り紙衛星の伝説』はたぶん、いつか、そのうち、この数ヶ月以内に読書会をやりたいなと思っております。

ノンフィクションでは『その〈脳科学〉にご用心: 脳画像で心はわかるのか』と『記憶をあやつる』がそれぞれ楽しみだ。上下巻で5000円以上出して買った『武器ビジネス』は次のHONZ更新用にしようと思ってたのに翻訳があまりにも酷すぎて、読み通すことが不可能でした。これは相性が合う合わないではなく、単純に翻訳として成立してないです。読もうと思っている人は注意。

ま、今月はそんなところかな。それでは今月も良い読書を。