読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

SFマガジン 2015年 10 月号 伊藤計劃特集号

お仕事告知

SFマガジン 2015年 10 月号 [雑誌]

SFマガジン 2015年 10 月号 [雑誌]

2015年6〜7月海外SFのブックガイドを2ページ、『逆光の夏』を1ページ使ってそれぞれレビューしております(宣伝)。雑誌が出てもいちいち記事を起こしていなかったのですが、せっかくブログをせっせと更新しているのだからちゃんと書いておこうかと思いまして……。それだけではあれなので、ゆるく感想でも書こうかと風呂に入ってコーヒーを飲んでいたら思いましたので書きましょう。

今回3号(隔月刊になったので、6ヶ月間に渡り)ハヤカワ文庫SF総解説なるお祭り騒ぎが繰り広げられていたので、伊藤計劃特集、ばーん! とちゃんと特集が立ち上がってくると「そうだそうだ、こんなかんじだったぞ」と思い出してくる。メタルギアソリッド渾身の一作である『METAL GEAR SOLID V: The Phantom Pain』も9月に備え(この機会にPS4買っちまいましたよ)、伊藤計劃特集バーン! 伊藤計劃トリビュートバーン! 蘇る伊藤計劃バーン! 10月からは3ヶ月連続で映画が公開されてこれまたばーん! でこっちはこっちでお祭りのようになっいる。

↑早くやりたくて仕方がない。『伊藤計劃トリビュート』は既に読みましたので、明日あたり更新。危なげなく傑作中短編揃いで、「日本SFの今」を感じさせる作品集になっている。
伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 王城夕紀,柴田勝家,仁木稔,長谷敏司,伴名練,藤井太洋,伏見完,吉上亮,早川書房編集部
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: 文庫
  • この商品を含むブログを見る
中身に関しては、伊藤計劃作品とは無関係に書いていた長編作品の一部が入っていたり、想定していたより「伊藤計劃色(なんてものがあるとして)」は強めではないけれども、その分氏が生きていたらきっと喜んだであろうな(僕はまったく無関係の人間なので、無根拠な想像にすぎないが)と思わせる『伊藤計劃(氏が喜んだであろう)トリビュート』に仕上がっている……と明日記事を書くのでここでぐだぐだと書いてもしかたがないのだが。

雑誌の話である。まず最初に座談会が連続する。仁木稔・長谷敏司・藤井太洋の同世代作家座談会、柴田勝家・伏見完・吉上亮の20代作家座談会、現役学生座談会と、各世代における伊藤計劃にまつわる話が展開されていくので、明確に「世代」を意識しているんだなあと。現役学生座談会はともかくとして、現役作家という立場からくる世代ごとの捉え方の違いがなかなかおもしろい。

『つまり、事実として二〇〇九年は『ハーモニー』の年でした。じゃあそこで立ち止まらないために、翌年、その次の年、さらにその翌年……と書き続けていくことで、自分と読者がそこからきちんと、正しく遠ざかっていけたらいいなと思ってやってきました。』とは長谷さんの発言だが、「伊藤計劃以後」だとかなんだとかいうけれども、作家側の視点からすれば、「目をそこに留めておかせるわけにはいかない」ということなんだろう。「懐かしい」「やはり二〇〇九年が最高だった」では終われないのだと。

その後、現在に至るまでの6年間は毎年毎年前年よりも日本SFは面白くなっていっている、と個人的には思っている。それは6年前がつまらなかったのではなく、この6年の間に新しいプレイヤーが続々と参入し、多様性の面で間口と、質的な深さが極まっている感覚があるからだ。ハヤカワSFコンテストから新人が幾人も出てきて、ハヤカワSFコンテスト外からも吉上さんや藤井さんや宮内さんが出てきて、SFとはまったく関係ないところから王城夕紀さんや上田岳弘さんなど異常な才能がぽこぽこ出てきて。

「いま・ここ」の実力だけで作家は評価されるものではない。「これから先、この人達はいったいどんな作品をみせてくれるんだろう」と、どきどきわくわくさせてくれる作家が大勢いる。一人のジャンルファンとしてこんなに嬉しいことはない。

同時代作家陣が伊藤計劃を受け継ぎ、というよりかは「その先へ」を意識しているのに比べると20代作家陣は伊藤計劃ファンとしてスタートし、先輩とし仰ぎ見、そうした影響下の元それぞれ別ルートや先を探っているようにみえる。質問傾向の違いもあるだろうけれど*1(毎度司会と構成が異なる)。

各論とか、10作ガイドとか

他に各論として、ボンクラ青春SFとしての側面に焦点を当てた前島さんの論や、病が創作に与えた影響について焦点を当てた風野さんの論などパーツをばらばらに分解して論じていくのがそれぞれ面白かった。しかし、作品がやっぱり少ないので、論の広がりもあまりもたせられないのが残念だ。書き続けていれば、これを一人の人間が書いたのかとにわかには信じられないぐらい幅の広い作品を残していた「可能性」があったのに……とはいってもしかたがないところだけれども。

伊藤計劃読者に勧める10作ガイドというのもある。SF小説、ノンフィクション、コミック、アニメ、映画における「次の10作」。ゲームがないのはちと寂しいが、たぶん全部小島秀夫作品で埋まってしまうからだろう。僕もそれぞれ選んでみようかと思ったけど……清涼院流水『コズミック』とか(本気)。まあいいか。ノンフィクションでもSFでも、「元ネタ」的作品で埋め尽くすこともできそうだけれども、そこから外そうとするととたんに難しくなる気がする⇛10作選ぶ。

最後に、大森望さんが「”伊藤計劃以後”はいつ終わるのか──2020年代SFの始まりに向けて」という論考を載せていて、これが2010年以後の日本SFの状況についてのめっぽう詳細な見取り図になっている。実は僕はニコニコ動画で【VOICEROID+】結月ゆかりの現代SF入門 第一話『SFが読みたい! 2015年版』 ‐ ニコニコ動画:GINZA⇐というシリーズを開始させて、この第一期(全12話予定)の最後3話ぐらいでこのへんの話(全体的な潮流と、今後の見通し)をやろうと思っていたのだけど、ここに既に詳細なものがあるので、「これを参考文献にして丸パクリしよう」と一仕事終えたような気分になってしまった。

そんなわけで(どんなわけだかはおいといて)、2015年にもなってアニメにトリビュートに雑誌にと伊藤計劃づいているわけだけれども、「懐かしむ」のではなく、どれも「その先へ」と示すような前へ進んでいく意志の感じられるものばかりで個人的に非常に安心したり。翻訳短篇とかにも触れようと思っていたのだけどちょっと書き過ぎちまいました。

*1:もちろん、影響下にあるといっても「無数の影響のうちのひとつ」だがこの特集では特別焦点を当てられている、という意味である。