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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

無職転生・生物の誕生・ディザインズ

冬木月報

近況とか

風邪をひいた……。

風邪をひいていると布団に入っているので両腕を出してページをめくるということができないのだが、最近はスマホであれば片腕でページめくりまで操作できる。その結果として、一心不乱にウェブ小説を読み漁っていた。他のことがたいしてできないので進む。無職転生も読み終えてしまった。これについては個別に記事を上げるかもしれないけど、おもしろかったので本記事の下の方に簡単な総評を書いております。

SFが読みたい!  2016年版

SFが読みたい! 2016年版

近況報告(お仕事報告)としてはSFが読みたいの2016年版で僕は海外SFランキング20位までのガイドを書いております。どれもそれぞれに読み味の違う作品なので読んでみてね。また先月の25日に2016年4月号のSFマガジンでは海外SFのガイドに加えグレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』の1ページ書評を書いているのでこちらも是非。『クロックワーク・ロケット』は、誰もみたことがない世界が、確かな理屈に支えられて目の前に立ち上がってくる感動がある傑作なのだ。
クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

SFマガジン 2016年 04 月号 [雑誌]

2月のフィクションのふりかえり

ジョン・スコルジーによる『ロックイン-統合捜査-』は全世界に蔓延したヘイデン症候群により、一部の人間が生きながらにして身体を動かすことの出来ない状態に陥ってしまった架空の世界を描く刑事物SF。身体を動かすことの出来ない人が急増したので電脳空間や遠隔操作できるロボット──通称"スリープ"がこの世界では開発されているのが刑事「SF」の部分だ。主人公のヘイデン君はロックイン状態にありながらスリープを遠隔操作するロボット(人間)FBI捜査官である。

ロックイン-統合捜査- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ロックイン-統合捜査- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オンライン空間でメタファーとしての生を謳歌すればいいじゃないかと主張する人々もいれば、あくまでも人々にロボットを使っていても中身は人間なんだし偏見をもたないでくれよなと主張する人もいる。遠隔操作には必然的にハッキングの脅威がつきまとうが、作中でそれをどうクリアしているのか(もしくは、クリアしきれないのか)とメインの不可解な殺人事件を追っていくうちに社会的な問題がさまざまな形で浮かび上がってくる。PSYCHO-PASSとか攻殻機動隊好きにはオススメしたい。

2月のノンフィクションのふりかえり

なんといってもノンフィクションでオススメしたいのは『生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学』だ。新しい視点からの生命史を書くことをコンセプトとした本書は、この数十年で立ち上がってきた宇宙生物学や地球生物学の分野で興ってきた新説を取り入れながら、現代版生命史を成立させた。邦題だけだと「生物の誕生の秘訣」しか教えてくれないのかと思うが、それは本書の一部でしかない。

生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学

生物はなぜ誕生したのか: 生命の起源と進化の最新科学

  • 作者: ピーターウォード,ジョゼフカーシュヴィンク,Peter Ward,Joseph Kirschvink,梶山あゆみ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/01/14
  • メディア: 単行本
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まだ広く認められてはいない著者らの仮説も本書では挙げられており、それは大気の組成(たとえば酸素濃度とか)が生物の身体のサイズに関係している(身体が大きくても酸素濃度が濃ければ容易く酸素を行き渡らせることができるなどの理由で)といった従来より知られていた「大気の組成と生物の関係性」をさらに押し広げるものでなかなかの説得力がある。生命史としては本書をまずは最初に抑えておけばいいという一冊なので、むしろこの分野にあまり詳しくはない人にオススメしたいところだ。

コミック

ディザインズ(1) (アフタヌーンKC)

ディザインズ(1) (アフタヌーンKC)

五十嵐大介の最新刊『ディザインズ(1)』はヒトと動物の特性を混合させ、ハンターとして機能するように設計された異形の生物が存在するバイオSF能力物。異形たちの表現は一目みた瞬間にゾッとするほどに気持ち悪く、残酷で──ただし美しくもある。さすがの五十嵐大介作品だ。

HA(ヒューマナイズド・アニマル)と呼ばれる彼らは、軍事的に利用され各地でその猛威をふるっているが、その戦闘シーンも各種動物の生態と能力に沿った演出が細かに配されており素晴らしい。人間は主に目で世界を把握しているけど、犬は人間と比べれば視力は弱くかわりに匂いに敏感だ。生物の種によっては視力は存在せず熱のみを頼りに移動していたりと「世界の捉え方は種によって異なる」が、本作のHAはそうした「異なる生物の世界の捉え方」を漫画的に再現しようとしてるんだよね。

悪化する地球環境、計画される宇宙移民とこの世界の背景も徐々に明かされつつあり、いやー今後の展開がたのしみな作品である。設定的には古臭いにもほどがあるのだが漫画としてはとてつもなくおもしろい。

無職転生 - 異世界行ったら本気だす -

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~  (1) (MFブックス)

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ (1) (MFブックス)

ウェブサイトの小説家になろうで連載されている(書籍化もされている)『無職転生 - 異世界行ったら本気だす - 』、風邪をひいている間に読み終えてしまった。サイトの文字数表記では恐ろしいことに2,835,125文字などと記載されている。283万文字。これ、かなりおもしろいとおもうのでオススメなのだが、ともあれご覧のとおりに長い上に異世界転生物、ライトノベルやゲームネタなどかなりざっくばらんに取り込んだ上で成り立った作品なので縦横無尽にはオススメできまい。

ざっくりとまとめてしまえば、王道としての異世界転生をやろうとした作品で、複数のゲームジャンル&物語ジャンルを横断的に内包した(その結果283万文字になった)かなりの意欲作である。おおまかに物語をこちらがわで勝手に分割してしまうと、1.転生し、世界に馴染んでいく篇。2.この広い世界を旅篇。3.魔法大学、学園篇。4.ダンジョン探索篇。5.???。6.???というようにどんどんジャンルを横断していく。

1はまあ導入部、世界が立ち上がっていく部分にしても、2は広い世界の冒険・探索篇であり、だんだんと設定が開示されていく。3はハリー・ポッター的な(これは嘘だがなんかうまい例えがおもいつかず)魔法学校の雰囲気を楽しむ学園物の雰囲気。4は迷宮探索ゲームをやっているような雰囲気を汲んでいる。5と6もまた明確に「○○ジャンル」と呼称できるものだが、それを明かすこと自体がネタバレになる類の物なのでここでは伏せておく。?の部分は未読の人間には是非驚いてもらいたいものだ。

ジャンルを横断するかのように展開する物語は、長い長い物語でありながらも雰囲気を一貫させながらまったく違った読み味を楽しませてくれる。とはいえ大まかなプロットはド直球。トラックに跳ねられた無職がそれまでの人生を大いに後悔し、転生した世界では主体的に人生に関わって、多くの仲間と嫁、真っ当な実力、生まれた時には想像もしなかった巨大な敵とたたかうことになる。

中でも一本筋が通っているのは「主人公の一生を描く」という部分だ。一人の人生を描こうと思えば、成長から苦悩、結婚から子育て、親の老化と看取り、時には介護とさまざまな問題が沸き起こってくる。本作は異世界転生物の王道でありながらも「どこまでを拾うのか」という部分で非常に広い射程をみせてくれた。読んでいていくつも粗が目についたが(できの悪い章もある)全体としては283万文字を飽きさせずに読み切らせる、パワーのある作品だ。

縦横無尽にはオススメしないが、総評としてはそんな感じ。
ncode.syosetu.com

これから読む本。

ロデリック:(または若き機械の教育) (ストレンジ・フィクション)

ロデリック:(または若き機械の教育) (ストレンジ・フィクション)

フィクションではヴァーリイの〈八世界〉全短編の2に、ティプトリー・ジュニアの『あまたの星、王冠のごとく』が出たりと話題作が目白押しで大変だけど(嬉しい悲鳴)スラデックの『ロデリック』がなかでもすごそう。はやく読みたい。ノンフィクションでは5日更新分のHONZ本が決まっていないが今のところは『人はなぜ格闘に魅せられるのか 大学教師がリングに上がって考える』がおもしろそう。
人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教師がリングに上がって考える

人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教師がリングに上がって考える

まだ2016年がはじまった気がしないけど、今年もエンジンかけていかないとな……(風邪治してから)。それでは今月もおもしろいものとたくさん出会えますように。