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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

透明性のある政府を──『未来政府』

未来政府

未来政府

  • 作者: ギャビンニューサム,リサディッキー,Gavin Newsom,Lisa Dickey,稲継裕昭,町田敦夫
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: 単行本
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カリフォルニア州の副知事が書いた未来の政府はテクノロジーを活用してこうなる! をまとめたノンフィクションだが、専門家ではないので、世間に流通している科学ノンフィクションの希望的側面をざっくりとまとめました感のある本である。

たとえば1.政府は完全な透明性を持たねばならない。2.そうして得たデータを活用して有用なアプリやツールを創るよう人々に奨励しなければならない。3.ゲーミフィケーションやSNSを用いて政治参加を促さなければ、というあたりが主要な意見。

ゲーミフィケーションだなんだ、データをオープンにすることがいかに効果を発揮するかといったあたりは「はいはい」という感じだけれども、実際に透明性を推し進めて良い結果が起こった事例の話などはまさに現在州や市営に関わっている人間ならではの情報だなと思う。たとえばテキサス州メイナー市では、非効率な市営を改めるためにも情報の透明性を推し進め、さらにはゲーム的な仕組みを導入してみせた。

たとえば市民からの投書があれば、ウェブサイトにそれをすべて公開し、スコアボードを設け「何が一番評価されているのか」を人目でわかるようにする。アイデアが解決策に変わるのと目にすると、市民は「政治に参加している」ことにたいして意識が変化し、継続的なフィードバックが生まれた──と良い話にまとまっている。

実際問題IT技術を活用することで大きく変化するところは多いだろう。政府の情報がオープンになって誰にでも活用できるようになれば便利なアプリを自前で作る人が出てくるだろうし、選挙にいちいち歩いて投票しに行くなんて馬鹿げている。それどころか、認証さえしっかりすれば個別の意思決定に際して市民の意思を都度都度確認できる、従来よりも直接的な民主制度さえも可能になるかもしれない。

とまあいろいろな希望的な側面が語られている。実際、ここでいわれていることはうまくいくところもあればうまくいかないところもあるだろう。透明性もあればあれだけいいというものでもない。SNSで現代の若者は30年前の若者よりもずっと自分の意見を発信しやすく、繋がりっぱなしでいられるようにもなったがそれは逆に息苦しいことでもある。本書はそのあたりのバランスがあまりとれているわけではない。

そういう意味では、デイヴ・エガーズ『ザ・サークル』は小説の形で、本書で描かれたような「未来政府」の在り方を表現し、その良い側面と悪い側面を同時に描き出している。未来政府もサラッとまとまっていて良い本だが、どちらかといえば『ザ・サークル』の方がオススメかな。

ザ・サークル

ザ・サークル