基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

自然界に存在する準結晶を求めた、科学者の大冒険──『「第二の不可能」を追え! ――理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』

「第二の不可能」を追え! ――理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ作者:ポール・J・スタインハート発売日: 2020/09/03メディア: 単行本2011年のノーベル化学賞を受賞したのは準結晶の発見をしたシェヒトマン博士だった。「準結晶」とは、説明…

不眠症に睡眠時無呼吸から睡眠時性的行動症まで、多様な睡眠障害の症例を解き明かす極上の一冊──『眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る』

眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る作者:ガイ・レシュジナー発売日: 2020/08/26メディア: 単行本この『眠りがもたらす奇怪な出来事』は、睡眠医学が専門で長年睡眠障害センターで勤務するガイ・レシュジナーによる、睡眠にまつわる様々な臨床例…

予知能力を持った一人の女性の人生を2043年まで描きあげた『クラウド・アトラス』著者による幻想文学──『ボーン・クロックス』

SF

ボーン・クロックス作者:デイヴィッド ミッチェル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『ボーン・クロックス』は、19世紀から第二次世界大戦前、1970年代に現代ロンドンと幅広い年代&場所&職業の人間を通して一枚の複雑な絵を描きあげた『クラウド・…

都市ならではの生物多様性──『都市で進化する生物たち』

都市で進化する生物たち: ❝ダーウィン❞が街にやってくる作者:スヒルトハウゼン,メノ発売日: 2020/08/18メディア: 単行本通常、都市は人間以外の生物にとって良い環境とは思われていないだろう。緑や自然を切り開き、種の多様性を減少させる、必要悪的な存在…

続きがでなくて悲しかった最近のSFたち

25日発売のSFマガジン2020年10月号、ハヤカワ文庫SF50周年号で、50周年を記念して渡邊利道さん、鳴庭真人さんと僕の3人で座談会をやっています。SFマガジン 2020年 10 月号発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌あまり明確なテーマはなくざっくばらんに最近のハ…

二人殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界で起こる連続殺人事件を描き出す特殊設定ミステリ──『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版本書は、メディアワークス文庫から『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビューした斜線堂有紀による、二人以上の人間を殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった…

あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』

宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネッ…

タイポグラフィがどのようにSF映画の物語に寄与しているのか?──『SF映画のタイポグラフィとデザイン』

SF映画のタイポグラフィとデザイン作者:デイヴ・アディ発売日: 2020/08/18メディア: 大型本この『SF映画のタイポグラフィとデザイン』は、まさにその名の通りにSF映画に存在するタイポグラフィとデザインに集中して取り組んだ一冊である。大型本で、所狭し…

進化と物理法則のつながりを深堀りする傑作『生命の歴史は繰り返すのか?』やスノーデンが半生を綴る『独白:消せない記録』などを紹介(本の雑誌2020年3月号掲載)

まえがき 本の雑誌2020年3月号に掲載された新刊めったくたガイドの僕が書いたノンフィクションガイドをここに転載します。連載3回目。毎月連載なんで「いやー紹介したい本がいっぱいあって困っちゃうなー」という時もあれば「そんなでもないな……」みたいな月…

基礎科学の重要性──『「役に立たない」科学が役に立つ』

SF

「役に立たない」科学が役に立つ作者:エイブラハム・フレクスナー,ロベルト・ダイクラーフ発売日: 2020/07/29メディア: 単行本この『「役に立たない」科学が役に立つ』はプリンストン高等研究所のエイブラハム・フレクスナー(1866-1959)、ロベルト・ダイクラ…

押井守の演出・映画論が(自分のも他人のも)堪能できる映画半世紀──『押井守の映画50年50本』

押井守の映画50年50本 (立東舎)作者:押井 守発売日: 2020/08/12メディア: 単行本この押井守の映画50年50本は、1968年から始まって一年に一本ずつ、「いまの押井守にとっての、その年の代表する」映画をピックアップして語ろう、という本である。押井守の映画…

なぜ、無意味な仕事ばかり増えているのか?──『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』

ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論作者:デヴィッド・グレーバー発売日: 2020/07/30メディア: 単行本この『ブルシット・ジョブ』は、文化人類学者であるデヴィッド・グレーバーによる「クソどうでもいい仕事」についての理論である。「クソどう…