基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

注意力を取り戻し、社会に潜むコンテクストを深く理解するための「なにもしない」という方法──『何もしない』

何もしない作者:ジェニー オデル早川書房Amazonこの『何もしない』は、「何もしない」ための行動計画書というか、思索書というか、自己啓発書というか、そんな感じの本である。何もしないなんて簡単だろう、何もしないだけなんだから、と思うかもしれないが…

雑誌『家電批評』で「SFで読み解く未来のトリセツ」という新連載が始まりますという告知と今の仕事の整理

家電批評 2021年 11月号 [雑誌]晋遊舎Amazonこんにちは。冬木です。今月発売の月刊誌『家電批評』にて、「SFで読み解く未来のトリセツ」というタイトルの連載が始まるのでその告知になります。 そのまんまタイトル通り、SFを媒介にして未来の社会をいろいろ…

『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』

時間の王作者:宝樹早川書房Amazon次々と表現規制が行われており、今後中国の小説や漫画やゲームはいったいどうなってしまうのだろうかと戦々恐々と見守っている昨今だが、そんな最中でも中国SFは本邦で多数邦訳・刊行されている。劉慈欣の『三体』の二次創作…

ある日を境に誰も死ななくなった社会で、何が起こるのか?──『だれも死なない日』

SF

だれも死なない日作者:ジョゼ・サラマーゴ河出書房新社Amazonこの『だれも死なない日』は、ある都市の住人ほぼ全員がなぜか突如として失明してしまった状況を描き出す『白の闇』などで知られる、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴによって2005年に刊…

資本主義以外の選択肢を模索する、経済学者・政治家によるSF経済書──『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』

クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界作者:ヤニス・バルファキス講談社Amazonこの『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』は、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』などで知られる経済学…

テロと感染病の蔓延により、リアルに接触する機会が激減した未来を予言的に描き出したネビュラ賞受賞作──『新しい時代への歌』

新しい時代への歌 (竹書房文庫)作者:サラ・ピンスカー竹書房Amazonこの『新しい時代への歌』は、本邦では初紹介となる作家サラ・ピンスカーの長篇にして2020年度のネビュラ賞受賞作である。本作、日本でこうして邦訳作が刊行されるまえからすでにかなりの話…

「宇宙の終わり」について現在の物理学から考えられる5つのシナリオ──『宇宙の終わりに何が起こるのか』

宇宙の終わりに何が起こるのか作者:ケイティ・マック講談社Amazon始まりあるものにはすべて終わりがあるというが、宇宙にもまた終わりはあるのだろうか。宇宙にもビッグバンという起点があるから、ないということはないだろう。著者はノースカロライナ州立大…

世界各地に存在した、元素ハンターたちの挑戦を描く──『元素創造 93~118番元素をつくった科学者たち』

元素創造 93~118番元素をつくった科学者たち作者:キット・チャップマン白揚社Amazonこの『元素創造』は、元素周期表の末尾に並ぶ26元素がどのようにして作られ・発見されてきたのか、科学者らの挑戦をまとめた一冊である。現在元素は118種に名前がついていて…

世界初のペンギン生物学者の南極探検を描く『南極探検とペンギン』から、命につけられた値段を考察する『命に〈価格〉をつけられるのか』までいろいろ紹介

はじめに 本の雑誌に書いているノンフィクションガイド連載の原稿(2021年7月)を転載します。今回は宇宙の知的生命探査についての一冊からペンギン本、統計に批評にと多彩──だけどわりと地味めな本が揃った月である。今月号(2021年10月号)もよろしく! 10月号…

脳に性差はあるのか?──『ジェンダーと脳──性別を超える脳の多様性』

ジェンダーと脳――性別を超える脳の多様性作者:ダフナ・ジョエル,ルバ・ヴィハンスキ紀伊國屋書店Amazonこの『ジェンダーと脳』は、よく言われる「男女で脳に性差はあるのか?」というテーマに、神経科学者であるダフナ・ジョエルが向き合った一冊である。先…

夜寝るのを待ち遠しくさせてくれる、夢と睡眠についてのノンフィクション──『夢を見るとき脳は - 睡眠と夢の謎に迫る科学』

夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学作者:アントニオ・ザドラ,ロバート・スティックゴールド紀伊國屋書店Amazonこの『夢を見るとき脳は』は、夢を見ている時脳内で何が起こっているのかに注目した一冊である。夢を見たことがないという人は、ほとんど…

アフリカの文化が色濃く反映された、様々な種族の文化摩擦と対立、その調和を描き出すSF長篇──『ビンティ ー調和師の旅立ちー』

ビンティ ー調和師の旅立ちー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:ンネディ オコラフォー早川書房Amazonこの『ビンティ』は、米国オハイオ州生まれのアフリカ系アメリカ人作家ンネディ・オコラフォーによるスペースオペラ的SF長篇である。三作の中篇から構…